根管治療
root canal treatment
大切な歯を、抜かずに残すために。
根の中まで確かめながら治療します。
「何もしなくてもズキズキ痛む」「歯ぐきが腫れてきた」「前に治療した歯が、また痛む」。
こうした症状は、歯の神経や根の中にまで、細菌が入りこんでいるサインかもしれません。
根管治療は、根の中から細菌や傷んだ神経を取り除き、きれいにしてから密閉する、歯を抜かずに残すための治療です。

根管治療とは
歯の中には「歯髄(しずい)」という、神経と血管が通ったやわらかい組織があります。歯髄は、歯の根の中を通る細い管「根管(こんかん)」の中を、根の先まで伸びています。
虫歯が深く進んで歯髄まで細菌が届くと、歯髄に炎症が起きて強く痛んだり、やがて歯髄が死んでしまったりします。そのままにしておくと、細菌は根の先から顎の骨の中へ広がり、膿の袋(根尖病変〈こんせんびょうへん〉)をつくることもあります。
根管治療は、根管の中から感染した歯髄や細菌を取り除き、洗浄・消毒してから、すき間なく薬を詰めて密閉する治療です。

根管治療には、3つの種類があります
神経が生きている歯
抜髄(ばつずい)
虫歯が神経まで進み、炎症を起こした歯髄を取り除く治療です。
神経が死んでいる歯
感染根管治療
歯髄が死んでしまい、根管の中が細菌に感染している歯の治療です。
前に根管治療をした歯
再根管治療(やり直しの治療)
以前に根管治療をした歯に、ふたたび細菌が感染したときの治療です。前の治療で詰めた薬や土台を取り除いてから治療するため、時間がかかることがあります。
最初の治療を、丁寧に。
根管治療は、やり直しになるほど治りにくくなることが知られています。日本のある歯科医院で、保険診療の根管治療426本の経過を調べた報告では、レントゲンで根の先が元どおりになった歯を「治った」と数えると、その割合は次のとおりでした。
だからこそ当院では、1回目の根管治療をできるだけ丁寧に行うことを大切にしています。

こんな症状はありませんか
- 何もしなくても、ズキズキと痛む
- 温かいもの・熱いものがしみる、痛む
- 噛むと痛い、歯が浮いたような感じがする
- 歯ぐきが腫れている、歯ぐきにおできのようなもの(膿の出口)ができた
- 歯の色が、黒っぽく変わってきた
- 以前に神経の治療をした歯が、痛む・腫れる
これらは、歯髄や根の中に細菌が入りこんでいるサインかもしれません。
痛みがいったんおさまっても、歯髄が死んで痛みを感じなくなっただけで、根の中では細菌が増え続けていることがあります。また、痛みがなくても、レントゲンで根の先に病変が見つかることもあります。
気になる症状があるときは、自己判断で様子を見ずに、早めにご相談ください。

当院の根管治療の5つの特徴
歯の根の中はとても細く、形も複雑です。当院では、歯の状態に合わせて、次の5つを必要に応じて使い分けながら治療します。
01
根の中を確かめる
マイクロスコープを2台備え、根の中を拡大して確かめます

根管の入り口はとても小さく、中は曲がったり枝分かれしたりしています。肉眼では、根の奥まで見通すことはできません。
当院では、歯科用の顕微鏡「マイクロスコープ」を2台備えています。明るい光で照らし、大きく拡大して見ることで、
- 見つけにくい根管の入り口
- 取り残した汚れや、以前の治療で詰めた薬
- 歯の根のひび
などを、目で確かめながら処置します。
たとえば上の奥歯(第一大臼歯)は、半数以上(56.8%)に、入り口が小さく見落とされやすい「4本目の根管」があります(Cleghorn ほか 2006)。アメリカの歯内療法の専門医の調査では、4本目の根管が見つかった割合は、次のように大きく違いました。
根管を1本でも見落とすと、そこに残った細菌が再発の原因になります。
保険診療の根管治療でも、必要に応じてマイクロスコープを使っています。
02
根の中を確かめる
治療の前に、CTで根の形や病変を立体的に確かめます

ふだんのレントゲンは平面の写真です。根が重なって写るため、根の数や曲がり方、根の先の病変の広がりが分かりにくいことがあります。
歯科用CTなら、歯や骨を立体的に見ることができます。治療の前に、
- 根の数や形、曲がり具合
- 根の先の病変の大きさや広がり
- 根のひびや、以前の治療の状態
などを確かめておくことで、見落としを減らし、無理のない治療計画を立てられます。
CTは、ふだんのレントゲンより被ばくが多くなるため、レントゲンだけでは分からないことがあるときに、一人ひとり必要かを考えて撮るものとされています(ヨーロッパ歯内療法学会 2019)。
当院でも、必要なケースを見きわめて撮影します。
03
細菌から守る
ラバーダムで、唾液や細菌が根の中に入るのを防ぎます

根管治療は、根の中の細菌を減らす治療です。ところが唾液にはたくさんの細菌が含まれていて、治療中に唾液が根の中に入ると、せっかく消毒した根管がまた汚れてしまいます。
ラバーダムは、治療する歯だけをゴムのシートから出し、まわりを覆う道具です。
- 唾液や細菌が、根の中に入るのを防ぐ
- 消毒の薬が、お口の中に流れるのを防ぐ
- 細い器具を誤って飲みこむ事故を防ぐ
といった役割があります。
台湾の全国のデータで約52万本の歯を調べた研究では、ラバーダムを使って根管治療をした歯のほうが、その後に歯が残っている割合が高かったと報告されています(Lin ほか 2014)。
当院では、必要に応じてラバーダムを使っています。
04
根の中をきれいにする
ニッケルチタンファイルで、根の形に沿って効率よく清掃します

根管の中をきれいにするときは、「ファイル」という細いやすりのような器具を使います。
ニッケルチタン(Ni-Ti)ファイルは、とてもしなやかな金属でできていて、曲がった根管にも沿って動きます。そのため、もともとの根管の形をくずしにくく、細い根管の奥まで清掃しやすくなります。
また、電動のモーターで回して使うため、短い時間で根管を整えられます。ドイツの開業医8人による臨床研究でも、ニッケルチタンファイルは、手で動かすステンレスのファイルより、曲がった根管の形をくずしにくく、短い時間で根管を整えられました(Schäfer ほか 2004)。お口を開けている時間の負担を減らすことにもつながります。
当院では、必要に応じてニッケルチタンファイルを使っています。
05
根の中をきれいにする
Er:YAGレーザーで薬液を動かし、根管の細かいところまで洗浄します

根管の中は、ファイルで清掃しても、細い枝分かれやくぼみまでは器具が届きません。そこで、薬液で根管の中を洗い流し、消毒します。
Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザーは、水によく吸収される性質をもつレーザーです。根管を満たした薬液の中でレーザーを当てると、小さな泡がふくらんではつぶれ、薬液が勢いよく動きます。この動きで、器具の届きにくい細かいところまで、薬液を行きわたらせやすくなります。
抜いた歯を使った実験では、注射器で薬液を流すだけの方法より、根管の中の消毒の効果が高いという結果が報告されています(Meire ほか 2024)。
当院では、根の形や汚れの状態を見ながら、洗浄を助ける方法のひとつとして、必要に応じて使っています。

治療の流れ
検査・ご説明
症状をうかがい、レントゲンや、必要に応じてCTで根の状態を確かめます。治療の内容や回数の目安を、抜歯などほかの方法も含めてご説明し、ご納得いただいてから治療を始めます。
麻酔・ラバーダム
麻酔がしっかり効いたことを確かめます。必要に応じて、ラバーダムを付けます。
根管の清掃
ファイルという細い器具で、根管の中の感染した組織や汚れを取り除きます。必要に応じて、マイクロスコープで見ながら、ニッケルチタンファイルを使います。
洗浄・消毒
薬液で根管の中を洗います。必要に応じて、Er:YAGレーザーで薬液を動かし、細かいところまで洗浄します。消毒の薬を入れて仮のふたをし、根の状態や症状に合わせて、清掃と消毒を何回かくり返します。
根管充填(こんかんじゅうてん)
根管がきれいになり、症状が落ち着いたら、根の先まですき間なく薬を詰めて密閉します。
土台・被せ物
歯を補強する土台を立て、被せ物で歯を守ります。
治療が終わったあとも、定期検診でレントゲンを撮り、根の先の状態を確かめていきます。

回数と費用
通院の回数
3回前後
1回あたりの時間
約1時間
当院の根管治療は、通常3回前後、1回あたり約1時間が目安です。
回数が増えることがあるのは
- 奥歯など、根管の数が多い・形が複雑な場合
- 炎症や膿が広がっていて、消毒に時間がかかる場合
- 以前の治療の薬や土台を取り除く、やり直しの治療の場合
- 根の先に大きな病変がある場合
費用について
当院の根管治療は、保険診療で行っています。マイクロスコープ・CT・ラバーダム・ニッケルチタンファイル・Er:YAGレーザーも、必要に応じて保険診療の中で使います。
費用は、歯の種類や、行う検査・処置によって変わります。治療の前にご説明します。
歯の状態によっては、MTAセメントなど自由診療の材料を使うことがあります。その場合は、内容と費用を治療の前にご説明し、ご納得いただいてから使います。
根管治療のあとの被せ物は、保険診療のものと自由診療のものからお選びいただけます。

根管治療の注意点
治療のあと数日は、痛むことがあります
治療のあと数日は、噛んだときの痛みや違和感が出ることがあります。多くは少しずつ落ち着きますが、強い痛みや腫れが出たときはご連絡ください。
途中で通院をやめないでください
治療の途中で通院をやめると、仮のふたのすき間から細菌が入り、悪化することがあります。最後まで通院してください。
根管治療で治らないこともあります
根の形がとても複雑な場合や、根にひびが入っている場合は、根管治療をしても治らないことがあります。そのときは、根の先を外科的に取りのぞく「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」や、抜歯も含めてご相談します。当院では、歯根端切除術もマイクロスコープを使って行っています。
器具が折れることがあります
まれに、治療中に細い器具が根の中で折れることがあります(Iqbal ほか 2006)。その場合も、状況をご説明したうえで対応をご相談します。
神経を取った歯は、割れやすくなります
根管治療をした歯は、虫歯や治療で歯の量が減っているため、割れやすくなります(Reeh ほか 1989)。全国の歯科医院で抜いた歯8,003本を調べた調査では、抜歯の原因の17.8%が「歯の破折」で、神経のない歯では、神経のある歯にくらべて破折で抜く割合がはっきり大きくなっていました(8020推進財団 2018)。被せ物でしっかり守り、食いしばりが強い方はマウスピースで歯を守ることをおすすめします。

よくある質問
根管治療は痛いですか?
治療中は麻酔を効かせて行うため、強い痛みを感じることは少ないです。当院では、表面麻酔と電動の麻酔注射器、細い針を使い、麻酔の注射の痛みもおさえるようにしています。歯の治療がこわい方には、リラックスした状態で治療を受けられる笑気吸入鎮静法もご用意しています。
神経を残すことはできませんか?
虫歯が神経の近くまで進んでいても、早い段階であれば、神経を残せることがあります。当院では、残せる可能性があるときは、まず神経を残す方法を考えます。何もしなくてもズキズキ痛む状態まで進んでいると、残すのは難しくなります。早めの受診ほど、選べる方法が増えます。
ほかの歯科医院で根の治療をした歯が痛みます。診てもらえますか?
はい、診察いたします。以前に根管治療をした歯のやり直し(再根管治療)にも対応しています。まずは検査で原因を確かめ、治療の方法をご相談します。
治療の途中で、気をつけることはありますか?
仮のふたをしている間は、治療中の歯でかたい物を噛まないようにしてください。仮のふたが取れた・欠けたときや、痛みや腫れが強くなったときは、次の予約を待たずにご連絡ください。
根管治療をしても、歯を残せないことはありますか?
根に深いひびが入っている場合や、歯ぐきより上に歯がほとんど残っていない場合などは、残すのが難しいことがあります。必要に応じてCTやマイクロスコープも使って状態を確かめたうえで、歯を残せる見込みと、抜歯した場合の治療方法の両方をご説明し、ご相談しながら決めていきます。
根管治療は、歯を抜かずに残すための大切な治療です。
気になる症状がある方、以前に治療した歯が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- 岡恒雄ほか. 当院における保険診療での根管治療後の治癒状況について. 日本ヘルスケア歯科学会誌. 2017;18(1):14-24.
- Cleghorn BM, Christie WH, Dong CC. Root and root canal morphology of the human permanent maxillary first molar: a literature review. J Endod. 2006;32(9):813-821.(PMID 16934622)
- Buhrley LJ, Barrows MJ, BeGole EA, Wenckus CS. Effect of magnification on locating the MB2 canal in maxillary molars. J Endod. 2002;28(4):324-327.(PMID 12043874)
- Patel S, Brown J, Semper M, Abella F, Mannocci F. European Society of Endodontology position statement: Use of cone beam computed tomography in Endodontics. Int Endod J. 2019;52(12):1675-1678.(PMID 31301231)
- Lin PY, Huang SH, Chang HJ, Chi LY. The effect of rubber dam usage on the survival rate of teeth receiving initial root canal treatment: a nationwide population-based study. J Endod. 2014;40(11):1733-1737.(PMID 25175849)
- Schäfer E, Schulz-Bongert U, Tulus G. Comparison of hand stainless steel and nickel titanium rotary instrumentation: a clinical study. J Endod. 2004;30(6):432-435.(PMID 15167474)
- Meire M, De Moor RJG. Principle and antimicrobial efficacy of laser-activated irrigation: A narrative review. Int Endod J. 2024;57(7):841-860.(PMID 38340037)
- Iqbal MK, Kohli MR, Kim JS. A retrospective clinical study of incidence of root canal instrument separation in an endodontics graduate program: a PennEndo database study. J Endod. 2006;32(11):1048-1052.(PMID 17055904)
- Reeh ES, Messer HH, Douglas WH. Reduction in tooth stiffness as a result of endodontic and restorative procedures. J Endod. 1989;15(11):512-516.(PMID 2639947)
- 8020推進財団. 第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書. 2018年11月.



