【夜に歯が痛む】その医学的な理由と朝まで乗り切る正しい対処法【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「昼間は平気だったのに、布団に入ったとたんズキズキしてきた」「夜中に痛みで目が覚めて、朝まで眠れなかった」——歯の痛みが夜に強くなるのは、決して気のせいではありません。歯科医院が閉まっている時間帯にかぎって痛みが増すため、不安も大きくなります。今回は、浅草・本所吾妻橋エリアで「なるべく削らない予防歯科」に力を入れている当院が、夜に歯が痛くなる医学的な理由、朝まで少しでも楽に過ごすための対処法、そしてやってはいけない対処を、研究データを交えてやさしく解説します。
なぜ夜になると歯が痛くなるのか
歯の内部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経と血管の集まりがあります。歯髄は硬い歯の中に閉じ込められているため、炎症で腫れようとしても逃げ場がありません。この「逃げ場のなさ」が、夜の痛みを理解する鍵になります。
理由① 横になると歯の中の血流が増える
体の姿勢が変わると、歯の神経に流れる血液の量も変わります。健康な人の歯で血流を測った研究では、仰向けに寝た状態から立ち上がると、歯髄の血流がはっきり減ったことが報告されています[1]。裏を返せば、横になると歯の神経への血流は増える方向に働くということです。炎症で腫れている歯では、その分だけ内部の圧力が高まり、ズキズキとした拍動性の痛みが出やすくなると考えられています。
理由② 体が温まると痛みが強まる
入浴や布団の中で体温が上がると血管が広がり、これも歯の内部の圧力を高めます。また、神経の炎症が進んだ状態(不可逆性歯髄炎)では、温かい刺激で痛みが誘発され、刺激を取り除いたあとも数分間痛みが続くのが特徴とされています[2]。「お風呂に入ったら痛みだした」という経験には、こうした背景があります。
理由③ 痛みの感じやすさには時間帯の波がある
体には約24時間のリズムがあり、痛みの感じ方もその影響を受けます。健康な前歯に冷たい刺激を与えて痛みを感じ始める強さ(痛覚閾値)を1日を通して測った研究では、痛みの感じやすさに時間帯による自然な変動があることが報告されています。痛みをいちばん感じにくいのは昼過ぎ、いちばん感じやすいのは明け方でした[3]。加えて、体内で炎症を抑える働きをするホルモン(コルチゾール)の量は目覚めるころに多く、寝入るころに最も少なくなります[4]。夜は、炎症を抑える味方が手薄になる時間帯ともいえます。
理由④ 気をそらすものがない
日中は仕事や家事で気がまぎれていた痛みも、静かな寝室では意識が痛みに集中してしまいます。眠れないこと自体が不安を強め、さらに痛みを感じやすくする——という悪循環も起こります。夜の痛みが「大げさに感じる」のには、こうした理由もあるのです。
夜に強く痛むとき、考えられる原因

ひとくちに歯の痛みといっても、原因はさまざまです。代表的なものを挙げます。
- 歯髄炎(神経の炎症)……虫歯が神経に近づく、または達した状態。何もしなくてもズキズキ痛む場合は、進行したサインです。
- 根尖性歯周炎(歯の根の先の炎症)……神経が死んだあと、根の先に膿がたまる状態。噛むと響く、歯が浮いた感じがするのが特徴です。
- 智歯周囲炎(親知らずのまわりの炎症)……疲れや免疫の低下で急に腫れることがあります。
- 歯の破折(ヒビ・割れ)……噛んだときに鋭く痛む、しみるといった症状が出ます。
- 副鼻腔炎(蓄膿症)による痛み……上の奥歯が数本まとめて痛む、鼻が詰まっている、下を向くと痛むといった場合、歯以外が原因のこともあります。
専門的には、神経の炎症は「元に戻せる段階(可逆性)」と「元に戻せない段階(不可逆性)」に分けられます。前者は冷たいものや甘いものがしみるが、刺激をやめれば1〜2秒で痛みが止まる状態で、虫歯を取り除いて詰めれば神経を残せる可能性があります。後者は何もしなくても痛む、刺激をやめても痛みが続く状態で、根管治療(神経の治療)が必要になることが多くなります[2]。「夜、何もしていないのにズキズキ痛む」は、後者に進んでいるサインと考えてよいでしょう。
やってはいけない5つの対処
- お風呂で長湯する・温めて血行をよくする……血流が増えて痛みが強まります。痛みが強い日は、湯船につからずシャワーで短めに済ませましょう。
- お酒を飲んで紛らわす……アルコールも血行を促進し、痛みを悪化させます。鎮痛薬との併用も避けるべきです。
- 痛む歯を舌や指でさわる、つつく……刺激で炎症が強まり、細菌を持ち込むおそれもあります。
- 痛む歯や歯ぐきに、痛み止めの錠剤を直接当てる……口の粘膜がやけどのようにただれることがあります。アスピリンの錠剤で起きた例が報告されています[5]。飲み薬は必ず飲んでください。
- 痛みが引いたからと放置する……神経が死ぬと、痛みは一度おさまることがあります[2]。治ったのではなく、次の段階に進んだだけということが少なくありません。
朝まで乗り切るための対処法
- 頬の外側から冷やす……保冷剤をタオルで包んで頬に当てます。氷を直接口の中に入れたり、冷やしすぎたりするのは避けてください。
- 枕を高くして、上体を少し起こして休む……クッションなどを使って上半身を少し起こすと、頭の血液が戻りやすくなり、歯の内部の圧力が上がりにくくなると考えられます。
- 市販の鎮痛薬を、用法・用量を守って使う……我慢し続けるより、早めに適切に使うほうが休息をとれます。
- やさしく歯みがき・うがいをして口の中を清潔に保つ……食べかすが刺激になっている場合があります。強くこすらず、ぬるま湯で。
- 熱いもの・冷たいもの・甘いもの・硬いものを避ける……痛む側で噛まないようにしましょう。
鎮痛薬については、親知らずの抜歯後の痛みを対象に、たくさんの研究をまとめた報告があります(7件の研究、参加者2,241名)。イブプロフェン400mgはアセトアミノフェン1000mgより痛みを抑える効果が高かったとされています。2つの成分を1錠に合わせた薬も良い結果でしたが、調べた研究はまだ少数です[6]。ただしこれは抜歯後の痛みを調べた研究であり、すべての歯痛に当てはまるとは限りません。持病のある方、妊娠中・授乳中の方、お子さん、ほかのお薬を飲んでいる方は、必ず薬剤師や医師にご相談のうえで選んでください。また、痛み止めはあくまで時間をつなぐためのもので、原因そのものは治りません。
こんなときは、朝を待たずに救急相談を
多くの歯の痛みは、翌日の受診で対応できます。ただし、次のような症状があるときは、我慢せず救急相談窓口にご相談ください。東京都内であれば東京消防庁救急相談センター(#7119)が24時間年中無休で対応しており、医師・看護師などの医療チームが「今すぐ受診すべきか」を一緒に判断してくれます(携帯電話などから#7119、23区は03-3212-2323、多摩地区は042-521-2323)。
- 顔や首まで大きく腫れてきた
- 口が開けにくい、飲み込みにくい、息がしにくい
- 熱がある、寒気がする
- 市販の鎮痛薬がまったく効かない、痛みで意識が朦朧とする
お口の中の細菌による炎症は、まれに首や胸のほうへ広がることがあります[2]。腫れがどんどん大きくなる、呼吸や飲み込みがつらい場合は、時間帯にかかわらず相談してください。
痛みが落ち着いても、必ず受診を
ひと晩がまんして朝になったら痛みが消えていた——これはよくあることですが、安心はできません。神経が完全に死んでしまうと、痛みの信号そのものが出なくなるからです。その間にも根の先で炎症が続き、やがて膿がたまって、再び強い痛みや腫れとして表面化します。
当院は、基本1人1時間の予約枠を確保し、丁寧なカウンセリングと説明を大切にしています。痛みへの配慮として表面麻酔と電動麻酔器の併用、極細の針、笑気麻酔、症例によってはエルビウム・ヤグレーザーによる音や振動の少ない治療にも対応しています。診療時間は9:00〜13:00/14:30〜18:00(木曜・日曜・祝日は休診)、ご予約はお電話(03-3622-2619)または当院ホームページの初診WEB予約から承っています。夜に痛みが出た方は、翌診療日のできるだけ早い時間にご連絡ください。
よくある質問

Q. 痛む場所を冷やすのは正しいですか?
A. 頬の外側からタオル越しに冷やすのは、痛みをやわらげる助けになります。ただし冷やしすぎは組織を傷めるため、10分程度を目安に、間隔をあけて行ってください。氷を口の中に直接入れる方法は、しみて悪化することがあるためおすすめしません。
Q. 痛み止めを飲んでから受診すると、診断の妨げになりませんか?
A. 問題ありません。無理に我慢する必要はありませんので、用法・用量を守って服用してください。受診の際に「いつ、何を、何錠飲んだか」をお伝えいただければ十分です。
Q. どの歯が痛いのか自分では分かりません。
A. 神経の炎症では痛む歯を特定しにくいことが知られており、めずらしいことではありません。上の歯と下の歯を間違えて感じることもあります[2]。レントゲンや冷温刺激の検査、打診などで原因の歯を絞り込みますのでご安心ください。
Q. 夜に痛くなるのは虫歯だけが原因ですか?
A. いいえ。親知らずのまわりの炎症、歯の根の先の炎症、歯のヒビ、副鼻腔炎など、原因はさまざまです。強い食いしばりで歯や周囲の組織が疲れ、夜間に痛むこともあります。原因によって治療がまったく違うため、自己判断は禁物です。
Q. 神経を取らずに治せますか?
A. 早い段階であれば、虫歯を取り除いて詰めるだけで神経を残せることがあります。当院は「なるべく削らない・なるべく神経を残す」ことを方針としていますが、何もしなくてもズキズキ痛む状態まで進んでいる場合は、根管治療が必要になることが多くなります。早く受診するほど、残せる可能性は高くなります。
まとめ
夜に歯が痛くなるのは、横になることで歯の神経への血流が増え、体が温まって血管が広がり、さらに気をそらすものがない——という条件が重なるためです。決して気のせいでも、大げさでもありません。
その晩を乗り切るには、頬の外から冷やす、頭を高くして休む、市販の鎮痛薬を用法どおりに使う、といった方法が助けになります。反対に、温める・お酒を飲む・患部をさわる・痛み止めを歯に直接当てるのは逆効果です。そして何より、痛みが引いても必ず受診すること。痛みが消えたのは治ったからではなく、神経が死んだサインかもしれないからです。
虫歯は、痛くなる前に見つければ削る量も通院回数も少なくて済みます。「痛くなってから通う」から「痛くなる前に確認する」へ。当院は、その切り替えのお手伝いをしています。
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夜のつらい痛みを一度でも経験された方は、その歯を含めてお口全体の状態を確認しておきませんか。どうぞお気軽にお問い合わせください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- Ajcharanukul O ほか. The postural autonomic regulation of pulpal blood flow. J Dent Res. 2013;92(2):156-160. PubMed
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「歯髄炎」 資料を開く
- Pöllmann L ほか. Rhythmic changes in pain sensitivity in teeth. Int J Chronobiol. 1978;5(3):459-464. PubMed
- Bhake RC ほか. Continuous Free Cortisol Profiles-Circadian Rhythms in Healthy Men. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104(12):5935-5947. PubMed
- Dellinger TM ほか. Aspirin burn of the oral cavity. Ann Pharmacother. 1998;32(10):1107. PubMed
- Bailey E ほか. Ibuprofen and/or paracetamol (acetaminophen) for pain relief after surgical removal of lower wisdom teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(12):CD004624. PubMed




