2026年10月21日
【受け口は治る?】受け口(反対咬合)の原因と治し方、子どもと大人で違う治療の選択肢【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「子どもの下の前歯が、上の前歯より前に出ている」「大人になった今からでも、受け口は治せるの?」。そんなご相談をよくいただきます。
受け口は、見た目だけでなく、かむことや話すことにも関わるかみ合わせです。早く気づくほど、選べる治し方が増えます。
この記事では、受け口の種類と原因、子どもと大人で違う治し方、健康保険が使える場合について、順番にお話しします。
この記事のポイント
- 受け口には「歯の傾き」「かみ方の癖」「あごの骨格」の3つのタイプがあり、タイプによって治し方が変わります。
- 2歳ごろの受け口は自然に治ることも多いです。3歳を過ぎても続くときは、一度ご相談ください。
- 大人は、矯正だけで治す場合と、あごの手術を組み合わせる場合があります。あごの手術が必要なときは、届け出た医療機関で健康保険が使えます。
受け口(反対咬合)とは?3つのタイプ
「受け口って、あごが出ていることですよね?」と思われる方は多いです。実は、受け口にはいくつかのタイプがあります。
受け口は、口を閉じてかんだとき、下の前歯が上の前歯より前に出ているかみ合わせです。歯科では「反対咬合(はんたいこうごう)」や「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼びます。
受け口は、日本人に多いかみ合わせです[1]。原因によって大きく3つのタイプに分かれ、タイプで治し方が変わります。

歯の傾きによる受け口
あごの骨の大きさや位置には大きな問題がなく、前歯の向きだけがずれているタイプです。上の前歯が内側に傾いていたり、下の前歯が外側に傾いていたりします。
歯の向きを整える矯正で、比較的治しやすいタイプです。
かみ方の癖による受け口
前歯どうしが先にぶつかるのを避けて、下あごを前にずらしてかんでいるタイプです。「機能性の反対咬合」とも呼びます。
歯科医師が下あごをそっと後ろへ導くと、前歯の先どうしが当たる位置まで戻せるのが特徴です。ずらす原因を取り除くと、かみ合わせが良くなることがあります。
あごの骨格による受け口
下あごが大きく育っている、上あごの成長が足りない、またはその両方によるタイプです。横から見ると、顔の真ん中が少しへこんで見えることがあります[1]。
一般に「しゃくれ」と呼ばれる見た目は、このタイプに多いです。歯を動かすだけでは、治しきれないことがあります。
タイプの見分けは歯科で
実際には、いくつかのタイプが重なっていることも多いです。見た目だけで、ご家族が見分けるのはむずかしいでしょう。
歯科では、下あごの動き方を確かめ、横顔のレントゲン写真や歯型の模型を使って見分けます。「どのタイプかな」と悩むより、一度見せていただくのが近道です。
受け口の原因は?遺伝と、舌・呼吸・癖
「親が受け口だと、子どもも受け口になりますか?」というご質問は、とても多いです。
遺伝が関わることがあります
受け口には、遺伝が関わることがあります。あごの骨の大きさや形は、親から受け継ぎやすいためです。
日本小児歯科学会も、お父さんやお母さんが受け口なら、お子さんもそうなる可能性が大きいので注意が必要、としています[2]。
舌の位置や、毎日の癖も関わります
もう一つは、口の使い方や毎日の癖です。次のようなことが関わると考えられています。
- 舌の位置…舌を上あごに持ち上げるのが苦手なことが、受け口と関係する場合もあるとわかってきました[2]。
- 口呼吸…口がぽかんと開いたままだと、舌が下がりやすくなるといわれています。
- 下あごを前に出す癖…奥歯が生えそろう前の小さな子では、あごを前に出す癖が見られることがあります[2]。
ただ、癖がどのくらい受け口に影響するのかは、まだはっきり分かっていません。遺伝と癖の両方が重なっていることも多いです。
当院の小児矯正でも、歯並びを「遺伝的な要因(あごの骨格)」と「機能的な要因(口呼吸などの癖)」の両方から考えます。どちらの比重が大きいかで、使う装置が変わるからです。
癖と歯並びの関係は、口呼吸の記事や指しゃぶりの記事、おしゃぶりの記事でもくわしくお話ししています。
子どもの受け口は自然に治る?様子を見てよい目安
「まだ小さいから、様子を見ていいのかな」と迷う保護者の方は多いです。
結論から言うと、乳歯が生えそろう3歳ぐらいまでは様子を見て、それでも治らなければ一度ご相談ください。日本小児歯科学会も、この目安を示しています[2]。
2歳の受け口は、自然に治ることも多い
東京都の子どもを2歳から3歳まで追いかけた調査があります。2歳で受け口だった子の約4割が、3歳には自然に治っていました[3]。
とくに、逆になっている前歯が1本だけの子は、約9割が自然に治っていました[3]。あわてて装置を考えなくてよい時期です。
3歳を過ぎた受け口は、治りにくくなります
一方で、逆になっている歯が多い受け口は、3歳になっても残りやすい傾向がありました。逆の歯の本数が、かえって増えた子もいました[3]。
永久歯に生えかわるころに、自然に治ることもあります。ただ、遺伝的な要因があると、自然には治りにくいとされています[4]。
4〜5歳ごろになると、あごの大きさの問題か、歯の傾きが原因かを、くわしく調べられるようになります[4]。「様子見」が長くなりすぎないよう、気になったら早めに見せてください。
子どもの受け口の治し方と、始めるタイミング
「何歳から、どんな装置で治すの?」と気になりますよね。
子どもの受け口は、あごが育つ力を利用して治せるのが大きな利点です。タイプに合わせて、装置を選びます。
子どもに使うおもな装置
- 牽引装置(けんいんそうち)…おでことあごに当てる枠と、上の歯の装置をゴムでつなぎ、上あごを前へ引き出します[5]。
- 拡大床(かくだいしょう)…上あごの歯並びを、内側から少しずつ広げる取り外し式の装置です。
- マウスピース型の装置(プレオルソ)…かみ方の癖や、舌・唇の使い方を整えるときに使います。
どの装置が合うかは、模型やレントゲンの検査をしてからご提案します。いくつかを組み合わせることもあります。
どの装置も、決められた時間きちんと使うことが大切です。お子さんの協力が欠かせないので、ご家族でよく話し合ってみてください。
装置の効果と、後戻りの心配
たくさんの研究をまとめた報告では、装置で治療した子は、治療しなかった子より前歯のかみ合わせとあごの位置が良くなっていました[5]。
ただ、良い話ばかりではありません。治療で治っても、背が伸びる時期に下あごが大きく育ち、受け口に戻ることがあります。
牽引装置を長く追いかけた研究では、治療の効果は年月とともに小さくなっていました。治療を終えて数年たつと、治療しなかった子との差は、はっきりしなくなっていました[5]。
それでも、装置を使った子は、将来あごの手術が必要と判断されることが少なくなっていました。
手術が必要とされたのは、装置を使った子で約3人に1人でした[6]。使わなかった子では、約3人に2人でした[6]。
小児矯正だけで終わらず、あとで大人の矯正や手術が必要になる場合もあります。治療が終わったあとも、成長が落ち着くまで定期的に見せていただくと安心です。
始めるタイミング
当院では、6歳〜15歳ごろを小児矯正の目安にしています。ただし、歯の生え方やお子さんの協力、受け口のタイプによって、合う時期は変わります。
受け口に気づいたら、年齢にかかわらず一度ご相談ください。今すぐ始めるべきか、待ってよいかも含めてお伝えします。
小児矯正の費用や流れは、小児矯正の費用と始める年齢の記事にまとめています。
大人の受け口の治し方|矯正だけで治す場合と、手術を組み合わせる場合
「もう大人だから、今さら治せないのでは」とあきらめている方もいらっしゃいます。
大人になってからでも、受け口を治す方法はあります。ただ、あごの成長を利用できないので、子どもとは治し方が変わります。
軽いものは矯正で治し、ずれが大きい場合は、あごの骨の手術を組み合わせます[7]。
矯正だけで治す
歯の傾きが中心の軽めの受け口なら、歯を動かす矯正だけで治せることがあります。上の前歯をやや前へ、下の前歯をやや後ろへ傾けて、かみ合わせを整えます。
当院では、ワイヤー矯正とマウスピース型の矯正(インビザライン)のどちらにも対応しています。マウスピース型は目立ちにくい一方で、ワイヤーより向く範囲がせまくなります。
なお、前歯だけを動かす部分矯正では、受け口のようなかみ合わせは治せません。歯並び全体を整える矯正が必要です。
矯正だけの場合、あごの骨のずれはそのまま残ります。横顔の変化は、小さめになることが多いです。
マウスピース型の矯正については、マウスピース矯正の期間・費用の記事もご覧ください。
手術を組み合わせる「外科的矯正治療」
あごの骨のずれが大きいと、歯を動かすだけでは治しきれません。その場合は、矯正とあごの骨の手術を組み合わせる「外科的矯正治療」を考えます[7]。

治療は、手術の前の矯正、あごの手術、手術のあとの矯正の順に進みます[7]。仕上げに、後戻りを防ぐ装置を使います。
手術は多くの場合、口の中から行うので、顔に傷が残らないことが多いです[1]。手術の時期は、骨の成長が止まる18歳前後がよいとされています[7]。
知っておきたい注意点もあります。下あごの手術のあと、下くちびるやあご先にしびれが出ることがあります。
たくさんの研究をまとめた報告では、手術から1年たっても、1〜2割ほどの人にしびれが残っていました[8]。
当院では、精密検査で「矯正だけで治せそうか」「手術を考えたほうがよいか」を確かめます。手術が必要な場合は、対応できる医療機関をご案内します。
手術を組み合わせるなら、健康保険の対象に
ふつう、矯正は自費の治療です。手術をせず、矯正だけで治す場合も自費になります。
ただし、あごの手術が必要な「顎変形症(がくへんけいしょう)」の場合、手術の前後に行う矯正は健康保険の対象です。[9]
保険で矯正を受けられるのは、国の基準を満たして届け出た医療機関だけです[9]。
地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」で、「顎診」と書かれた医療機関を探せます[9]。分からないときは、当院でもご案内します。
受け口を治さないとどうなる?相談の目安
「見た目は気にならないから、このままでいい」と考える方もいます。治療するかどうかは、ご本人やご家族が決めることです。
ただ、かみ合わせへの影響は、知っておくと安心です。
かみにくさ
受け口だと、前歯で麺やレタスをかみ切りにくくなります。奥歯だけでかむことが増えます。
あごの骨格による受け口で、手術を受ける前の人を調べた研究があります。食べ物をかみ砕く能力は、かみ合わせが正常な人の半分ほどでした[10]。
発音
手術を考えるほどの受け口の人では、半数以上に発音のゆがみが見られた、という研究があります[11]。
「た」「か」「さ」「しゃ」などの音に、ゆがみが出やすい傾向がありました[11]。
歯ぐきや歯への負担
前歯が1本だけ逆になっていると、その歯に強い力がかかります。下の前歯の歯ぐきが下がり、しみたり、歯がぐらぐらしたりすることがあります[12]。
前歯の先どうしが当たり続けて、すり減ることもあります。
顎関節(あごの関節)
「受け口だと顎関節症になるの?」と心配される方もいます。たくさんの研究をまとめた報告では、かみ合わせと顎関節症のはっきりした関係は見つかりませんでした[13]。
あごの痛みや音が気になるときは、受け口とは別に診察で確かめましょう。くわしくは顎関節症の記事をご覧ください。
こんなときはご相談ください
- 3歳を過ぎても…受け口が続いている
- 逆の前歯が何本も…上下が逆になっている前歯が、何本もある
- 歯ぐきの変化…下の前歯の歯ぐきが下がってきた
- ご家族…ご両親やきょうだいに、受け口の方がいる
- 食べる・話す…前歯でかみ切りにくい、発音が気になる
- 大人の方…かみにくさや横顔が気になっている
なお、あごを手で押し込む、自己流のトレーニングをする、といった方法で受け口が治ることは確かめられていません。
気になったら、まずは検査で受け口のタイプを知ることから始めましょう。
よくある質問

Q. 受け口は、マウスピースで治せますか?
A. 子どもで、かみ方の癖が中心の受け口なら、マウスピース型の装置を使うことがあります。大人で歯の傾きが中心の軽い受け口なら、インビザラインで治せることもあります。あごの骨のずれが大きいときは、むずかしくなります。
Q. 当院での費用はどのくらいですか?
A. 小児矯正は110,000〜165,000円(税込)で、使う装置によって変わります。大人の歯並び全体の矯正は880,000円(税込)で、ワイヤーでもインビザラインでも同じです。手術を組み合わせて保険を使う場合の費用は、対応する医療機関でご確認ください。
Q. あごを手で押したり、トレーニングしたりすれば治りますか?
A. 自己流の方法で受け口が治ることは、確かめられていません。舌や唇の使い方を整える練習は、検査のうえで装置と一緒に行うことがあります。まずはタイプを確かめましょう。
Q. 子どものころに治しても、また受け口に戻りますか?
A. 背が伸びる時期に下あごが大きく育ち、戻ることがあります。そのため、治療のあとも成長が落ち着くまで見守ります。戻った場合は、大人の矯正や手術を考えることになります。
まとめ
- 受け口には「歯の傾き」「かみ方の癖」「あごの骨格」の3つのタイプがあり、タイプで治し方が変わります
- 2歳ごろの受け口は自然に治ることも多いですが、3歳を過ぎても続くときはご相談ください
- 子どもは、あごの成長を利用して装置で治します。成長期に戻ることもあるので、治ったあとも見守ります
- 大人は、矯正だけで治す場合と、あごの手術を組み合わせる場合があります
- あごの手術が必要な顎変形症の矯正は、届け出た医療機関で健康保険の対象になります
「受け口かな?」と思ったときが、相談のタイミングです。お子さんでも大人の方でも、お気軽にご相談ください。
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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- 日本口腔外科学会「顎変形症などの骨格性の不正咬合」(口腔外科相談室) ページを開く
- 日本小児歯科学会「産まれてから2歳頃まで」(こどもたちの口と歯の質問箱) ページを開く
- 大竹邦明 ほか. 乳歯列完成前後の総合咀嚼器官の発育変化 第1報 前方交叉咬合いわゆる反対咬合について. 小児歯科学雑誌. 1979;17(3):389-395. J-STAGE
- 日本小児歯科学会「3歳ごろから就学前まで」(こどもたちの口と歯の質問箱) ページを開く
- Owens D ほか. Orthodontic treatment for prominent lower front teeth (Class III malocclusion) in children. Cochrane Database Syst Rev. 2024;4:CD003451. PubMed
- Mandall N ほか. Early class III protraction facemask treatment reduces the need for orthognathic surgery: a multi-centre, two-arm parallel randomized, controlled trial. J Orthod. 2016;43(3):164-175. PubMed
- 日本口腔外科学会「上下の噛み合わせが悪い」(口腔外科相談室) ページを開く
- Colella G ほか. Neurosensory disturbance of the inferior alveolar nerve after bilateral sagittal split osteotomy: a systematic review. J Oral Maxillofac Surg. 2007;65(9):1707-1715. PubMed
- 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」 ページを開く
- Kobayashi T ほか. Changes in masticatory function after orthognathic treatment in patients with mandibular prognathism. Br J Oral Maxillofac Surg. 2001;39(4):260-265. PubMed
- Lathrop-Marshall H ほか. Orthognathic speech pathology: impacts of Class III malocclusion on speech. Eur J Orthod. 2022;44(3):340-351. PubMed
- 日本小児歯科学会「小学生低学年」(こどもたちの口と歯の質問箱) ページを開く
- Manfredini D ほか. Temporomandibular disorders and dental occlusion. A systematic review of association studies: end of an era? J Oral Rehabil. 2017;44(11):908-923. PubMed


