【おしゃぶりで出っ歯に?】歯並びへの影響と「いつまで」の目安・やめ方【歯医者が解説】

おしゃぶりと乳歯の模型。おしゃぶりはいつまで使ってよいか、歯並びへの影響を解説

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「おしゃぶりを使うと、出っ歯になるって本当?」「寝かしつけに欠かせないけれど、いつまで使っていいの?」

そんな心配をされる保護者の方は、とても多いです。

先にお伝えすると、おしゃぶりを使ったからといって、すぐに歯並びが乱れるわけではありません。大切なのは「いつまで」「1日にどのくらい」使うかです。

この記事では、歯並びへの影響、やめる時期の目安、やめたあとに戻るのか、やめ方のコツを、順番にお話しします。

この記事のポイント

  • おしゃぶりを長く使うと、「前歯が閉じない」「奥歯が横にずれる」といった変化が出やすくなります。
  • 目安は「1歳を過ぎたら出しっぱなしにしない」「遅くとも2歳半までに卒業」。小児科と小児歯科の先生方が、合同でまとめた考え方です。
  • 早めにやめれば、前歯のすき間は自然に閉じていくことが多いです。気になるときは、歯科でかみ合わせを見てもらいましょう。

おしゃぶりで出っ歯になる?歯並びに起こりやすい変化

「おしゃぶり=出っ歯」というイメージを、お持ちの方は多いと思います。

じつは、おしゃぶりで目立ちやすいのは、出っ歯よりも「前歯が閉じない」「奥歯が横にずれる」の2つです。

たくさんの研究をまとめた報告でも、おしゃぶりとこの2つの変化の結びつきが示されています[1]。

前歯が閉じない(開咬)

奥歯でかんでも、上と下の前歯のあいだに、すき間が残る状態です。開咬(かいこう)と呼びます。

おしゃぶりの吸い口が、いつも前歯のあいだにはさまっているために起こります。

宮城県で約3,800組の親子を調べた研究でも、同じ傾向が見られました[2]。

3歳半で前歯が閉じない子には、2歳のときにおしゃぶりや指しゃぶりをしていた子が多かったのです[2]。

奥歯が横にずれる(交叉咬合)

上の奥歯が、下の奥歯より内側に入ってかみ合う状態です。交叉咬合(こうさこうごう)と呼びます。

おしゃぶりを長く使うと、上あごの幅がせまくなることがあります。それが、奥歯の横ずれにつながると考えられています[3]。

前歯とちがって、ご家庭では気づきにくい変化です。

出っ歯は、指しゃぶりのほうが目立つ

上の前歯が前に出る「出っ歯」(上顎前突。じょうがくぜんとつ)は、おしゃぶりでも起こります[4]。

ただ、研究をまとめた報告では、出っ歯は指しゃぶりのほうで多く見られました[5]。

反対に、奥歯の横ずれは、おしゃぶりのほうで多い傾向でした[5]。

指しゃぶりについては、指しゃぶりと歯並びの記事でくわしくお話ししています。

どの変化も、使えば必ず起こるわけではありません。使う期間と時間によって、出やすさが変わります。

おしゃぶりはいつまで?目安は「1歳」と「2歳半」

「まだ小さいし、もう少し先でいいかな」と迷いますよね。

国内では、小児科と小児歯科の先生方が合同で、次の目安をまとめています[4]。

  • 1歳を過ぎたら…ホルダーを外して、いつもくわえている状態をやめる
  • 遅くとも2歳半までに…おしゃぶりを卒業する
  • 4歳を過ぎても手放せないとき…かかりつけの小児科に相談する
おしゃぶりはいつまで?1歳を過ぎたらホルダーを外す、遅くとも2歳半までに卒業、4歳を過ぎても続くときは小児科に相談

2歳半は、乳歯の奥歯が生えそろうころです。この時期を過ぎても使っていると、かみ合わせの変化が残りやすくなります[4]。

覚えておきたいのは、「1歳を過ぎたら出しっぱなしにしない」「遅くとも2歳半までに卒業」の2つです。

海外の目安は「3歳まで」。でも早いほど安心です

米国の小児歯科学会は、3歳までにやめることをすすめています[3]。

一方で、もっと早い時期を区切りにする研究もあります。

フィンランドで、約450人の子どもを7歳まで追いかけた調査です[6]。

おしゃぶりを1年以上使った子では、奥歯の横ずれが7%に見られました。11か月以下の子では、1%でした[6]。

1歳のお誕生日を、「使う時間を減らしはじめる合図」にすると安心です。

使うのは「寝るとき」だけに

期間だけでなく、1日に使う時間の長さも関係します[1]。

昼も夜も使っている子は、夜だけの子より、前歯のすき間が多く見られました[1]。

日中は外して、使うのは寝るときだけ。これが、歯並びへの影響をおさえやすい使い方です。

赤ちゃんのうちは、あせらなくて大丈夫

「それなら、早くやめるほど良いの?」と思われるかもしれません。

長崎で、3歳のお子さん約550人を調べた研究があります[7]。

1歳2か月より前におしゃぶりをやめた子は、指しゃぶりが続きやすい傾向でした[7]。

赤ちゃんのうちに、無理に取り上げる必要はありません。1歳を過ぎたころから、少しずつ減らしていきましょう。

やめたら歯並びは戻る?

「もう前歯にすき間がある気がする。手遅れかな…」と、不安になる方もいらっしゃいます。

前歯のすき間は、おしゃぶりをやめると、自然に閉じていくことが多いです。ただ、奥歯の横ずれは残ることもあります。

前歯のすき間は、戻りやすい

国内の考え方では、2歳ごろまでにやめれば、成長とともに良くなるとされています[4]。

米国の小児歯科学会も、3歳までにやめれば前歯のすき間は良くなる、としています[3]。

4歳を過ぎてから吸う癖をやめた子を集めた報告でも、前歯のすき間は自然に良くなることが多く見られました[8]。

ただ、もとになった研究が少なく、まだはっきりとは言い切れません[8]。

また、舌を前歯のあいだに出す癖や、お口がぽかんと開く癖が残ると、すき間が閉じにくいことがあります。

お口が開きがちなお子さんは、口呼吸の記事も参考にしてください。

奥歯の横ずれは、残ることがある

スウェーデンで、3歳の子どもたちを7歳まで追いかけた調査があります[9]。

前歯のすき間がある子は、7歳までに大きく減っていました[9]。

奥歯の横ずれは、自然に治った子がいる一方で、新しく出てくる子もいました。全体の割合は、ほとんど変わっていません[9]。

米国の調査でも、おしゃぶりをやめたあとまで、奥歯の横ずれが残っている子がいました[10]。

「前歯はそのうち戻るから」と長く使い続けるのは、おすすめできません。

戻るかどうかは、お口の中を見ないと分かりません。気になるときは、一度見せてくださいね。

「歯並びにやさしいおしゃぶり」なら安心?

お店には、「歯並びにやさしい」と書かれた、吸い口のうすいおしゃぶりも並んでいます。

「これなら長く使っても平気かな」と期待しますよね。

形を選ぶことには、少し意味がありそうです。でも、大切なのは形よりも「いつまで・どのくらい使うか」です。

分かっていること

研究をまとめた報告では、吸い口の首が細いタイプは、ふつうの形より前歯のすき間が少なめでした[1]。

ただ、奥歯の横ずれは減らせていませんでした[1]。

ドイツには、前歯にすき間ができた1歳後半の子どもたちを、1年間追いかけた研究があります[11]。

首の細いタイプに替えた子は、ふつうの形を使い続けた子より、すき間が小さくなりました[11]。

いちばんすき間が小さかったのは、おしゃぶりをやめた子です[11]。

まだ分かっていないこと

別の報告は、「歯並びの乱れを防げると言えるだけの根拠は、まだ足りない」とまとめています[12]。

「鼻呼吸や、舌・あごの発達をうながす」という宣伝も、学問的には確かめられていないとされています[4]。

「この形なら長く使っても大丈夫」とは考えず、やめる時期の目安は同じ、と覚えておきましょう。

おしゃぶりの良い面と、気をつけたいこと(デメリット)

「デメリットばかり聞くけれど、ないと寝てくれなくて…」。そんな声も、よくうかがいます。

おしゃぶりには、良い面もあります。使うこと自体を、悪いことだと思わなくて大丈夫です。

なお、ここからのお話の多くは、小児科の領域です。使うかどうか迷うときは、小児科にも相談してください。

良い面

  • 気持ちが落ち着く…泣きやみやすく、寝つきやすくなります[4]。
  • 保護者の負担が軽くなる…子育てのストレスが減る、とされています[4]。

米国の小児科学会は、赤ちゃんの突然死を減らす工夫のひとつに、眠るときのおしゃぶりを挙げています[13]。

乳幼児突然死症候群(元気だった赤ちゃんが、眠っているあいだに突然亡くなる病気)のことです。

一方、日本のこども家庭庁が挙げる3つのポイントに、おしゃぶりは入っていません[14]。

あおむけに寝かせる、無理のない範囲で母乳で育てる、たばこをやめる、の3つです[14]。

耳・ことば・母乳のこと

中耳炎は、おしゃぶりを使う子に多いことが知られています[3]。

フィンランドでは、「おしゃぶりは寝つくときだけに」と保護者に伝える取り組みが行われました。伝えた地域では、中耳炎が3割ほど少なくなっています[15]。

ことばの発達への影響は、まだはっきり分かっていません[3]。ただ、くわえたままだと、声を出す機会は減ってしまいます[4]。

母乳育児については、生後4か月までの母乳育児の割合に差はなかった、という報告があります[16]。

使いはじめる時期は、産院や小児科に相談すると安心です。

甘いものは付けない。落としたら水で洗う

おしゃぶりに、ハチミツや砂糖、ジュースを付けるのはやめましょう。

ハチミツは、1歳未満の赤ちゃんには与えてはいけない食品です。乳児ボツリヌス症という病気になることがあります[17]。

砂糖やジュースは、むし歯のもとになります。

落としたおしゃぶりは、水で洗ってから渡しましょう。大人がなめて、きれいにする必要はありません。

とはいえ、お口の菌は、ふだんのふれあいの中でも自然にうつります。気にしすぎなくて大丈夫です[18]。

それよりも、保護者ご自身のお口を整えておくことが大切です。

子どものむし歯予防の柱は、甘いもののとり方、保護者ご自身のお口、年齢に合ったフッ素の3つです。

くわしくは、乳歯の虫歯の記事をご覧ください。

おしゃぶりのやめ方と、歯科に相談する目安

「取り上げたら大泣きして、結局こちらが折れてしまう」。よくうかがうお話です。

いきなり取り上げるより、段階をふんで減らすほうが、親子ともに楽です。叱るより、できた日をほめるのがコツです。

やめ方の3ステップ

  1. 出しっぱなしをやめる…1歳を過ぎたらホルダーを外し、目につかない場所にしまいます。
  2. 寝るときだけにする…日中は外して過ごし、寝ついたらそっと外します。
  3. 卒業の日を決める…お誕生日などを目標にして、できた日はたくさんほめます。
おしゃぶりのやめ方3ステップ。出しっぱなしをやめる、寝るときだけにする、卒業の日を決める

やめ方を比べた研究をまとめた報告でも、おしゃぶりを調べたものは、まだありませんでした[19]。

指しゃぶりでは、声かけやごほうびなどの働きかけをした子のほうが、やめられることが多くなっていました[19]。

ただ、研究の数は少なく、まだはっきりとは言い切れません[19]。

米国の小児歯科学会は、叱るより、できた日を認めてほめるやり方をすすめています[3]。

おしゃぶりの代わりに、抱っこや絵本、手をつなぐなど、別の安心を用意してあげましょう。

はじめの数日は、ぐずることもあります。国内の調査でも、3歳になると、おしゃぶりを使う子はぐっと減ります[4]。

あせらず、お子さんのペースで進めましょう。

歯科に相談したいサイン

次のようなときは、一度かみ合わせを見せてください。

  • 奥歯でかんでも、前歯のあいだにすき間がある
  • 上と下の前歯の真ん中が、左右にずれている
  • 2歳半を過ぎても、おしゃぶりを手放せない
  • お口がぽかんと開いている、舌が前歯のあいだから見える

当院の小児矯正は、6歳ごろから15歳ごろまでが対象です。おしゃぶりを使う年齢は、それより前にあたります。

そのため、まずはかみ合わせを確認し、成長に合わせて経過を見ていきます。6歳を待たずに、ご相談いただけます。

小児矯正を始める年齢や費用は、小児矯正の記事にまとめています。

4歳を過ぎてもやめられないときは、気持ちの面も考えて、かかりつけの小児科にも相談しましょう[4]。

よくある質問

よくある質問

Q. 新生児から使っても、歯並びに影響しませんか?
A. 1歳ごろまでの使用は、歯並びの面では心配しすぎなくて大丈夫です。母乳育児との兼ね合いや使いはじめる時期は、産院や小児科に相談してください。

Q. おしゃぶりと指しゃぶり、どちらが歯並びに良くないですか?
A. どちらが悪い、とは言い切れません。出っ歯は指しゃぶり、奥歯の横ずれはおしゃぶりで多い傾向があります。おしゃぶりは、卒業の日を決めやすいのが良い点です。

Q. 2歳半を過ぎてしまいました。もう遅いですか?
A. 遅すぎることはありません。4歳を過ぎてやめても、前歯のすき間が良くなった報告があります。まずは寝るときだけにして、一度かみ合わせを見せてください。

Q. 寝ているあいだ、ずっとくわえています。外したほうがいいですか?
A. 寝ついたら、そっと外してあげましょう。使う時間が短いほど、歯並びへの影響は出にくい傾向があります。起きてしまうときは、無理をしなくて大丈夫です。

Q. 乳歯の歯並びの変化は、永久歯にも残りますか?
A. 早めにやめて前歯のすき間が閉じれば、残らないことも多いです。ただ、奥歯の横ずれは残ることもあります。永久歯への生え変わりが始まる6歳ごろまでに、一度ご相談ください。

まとめ

  • おしゃぶりを長く使うと、前歯が閉じない・奥歯が横にずれる、といった変化が出やすくなります。
  • 1歳を過ぎたら出しっぱなしにせず、遅くとも2歳半までに卒業。使うのは寝るときだけにしましょう。
  • やめれば、前歯のすき間は自然に閉じることが多いです。奥歯の横ずれは、残ることもあります。
  • 「歯並びにやさしい」形でも、やめる時期の目安は同じです。
  • やめるときは叱らずに、できた日をほめてあげましょう。

おしゃぶりは、子育てを助けてくれる道具です。これまで使ってきたことを、気に病む必要はありません。

「うちの子のかみ合わせ、大丈夫かな」と思ったら、どうぞ気軽に見せてください。

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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お子さんの歯並びやお口の癖で気になる点があれば、いつでもご相談ください。

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. Schmid KM ほか. The effect of pacifier sucking on orofacial structures: a systematic literature review. Prog Orthod. 2018;19(1):8. PubMed
  2. Ishiko R ほか. Elucidation of Factors Affecting Anterior Occlusion in Primary Dentition Based on the Japan Environment and Children’s Study. Children (Basel). 2025;12(2):254. PubMed
  3. American Academy of Pediatric Dentistry(米国小児歯科学会)「Policy on Pacifiers」The Reference Manual of Pediatric Dentistry. 2025:86-89.(2024年改訂) 資料を開く
  4. 小児科と小児歯科の保健検討委員会「おしゃぶりについての考え方」平成17年1月12日(日本小児歯科学会の掲載資料の8〜9ページ) 資料を開く
  5. Doğramacı EJ ほか. Establishing the association between nonnutritive sucking behavior and malocclusions: A systematic review and meta-analysis. J Am Dent Assoc. 2016;147(12):926-934.e6. PubMed
  6. Arpalahti I ほか. The effect of early childhood non-nutritive sucking behavior including pacifiers on malocclusion: a randomized controlled trial. Eur J Orthod. 2024;46(5):cjae024. PubMed
  7. Fukumoto E ほか. Cessation age of breast-feeding and pacifier use is associated with persistent finger-sucking. Pediatr Dent. 2013;35(7):506-509. PubMed
  8. Adriano LZ ほか. Anterior open bite self-correction after cessation of non-nutritive sucking habits: a systematic review. Eur J Orthod. 2023;45(3):235-243. PubMed
  9. Dimberg L ほか. Malocclusions in children at 3 and 7 years of age: a longitudinal study. Eur J Orthod. 2013;35(1):131-137. PubMed
  10. Warren JJ ほか. Duration of nutritive and nonnutritive sucking behaviors and their effects on the dental arches in the primary dentition. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2002;121(4):347-356. PubMed
  11. Wagner Y ほか. Effect of a thin-neck pacifier on primary dentition: a randomized controlled trial. Orthod Craniofac Res. 2016;19(3):127-136. PubMed
  12. Medeiros R ほか. Malocclusion prevention through the usage of an orthodontic pacifier compared to a conventional pacifier: a systematic review. Eur Arch Paediatr Dent. 2018;19(5):287-295. PubMed
  13. Moon RY ほか. Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. Pediatrics. 2022;150(1):e2022057990. PubMed
  14. こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~」 ページを開く
  15. Niemelä M ほか. Pacifier as a risk factor for acute otitis media: A randomized, controlled trial of parental counseling. Pediatrics. 2000;106(3):483-488. PubMed
  16. Jaafar SH ほか. Effect of restricted pacifier use in breastfeeding term infants for increasing duration of breastfeeding. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(8):CD007202. PubMed
  17. 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」 ページを開く
  18. 日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」2023年8月31日 資料を開く
  19. Borrie FR ほか. Interventions for the cessation of non-nutritive sucking habits in children. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(3):CD008694. PubMed

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