2026年10月13日
【研磨剤は歯を削る?】歯磨き粉の研磨剤の役割と「研磨剤なし」を選ぶ目安【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「研磨剤入りの歯磨き粉は、歯が削れるって聞いたけれど本当?」「研磨剤なしに替えたほうがいいのかな」。そんな疑問をお持ちではありませんか。
この記事では、研磨剤の役割と、歯への影響について分かっていることをお伝えします。「研磨剤なし」を選ぶ目安も、あわせてご紹介します。
この記事のポイント
- 研磨剤は、着色汚れを落とすための成分です。規格の範囲の歯みがき剤を軽い力で使うなら、歯の表面はほとんど減らないとされています。
- 気をつけたいのは、歯ぐきが下がって見えてきた歯の根です。強い力や、酸っぱいものの直後の歯磨きが重なると減りやすくなります。
- 歯の根が見えている方・しみる方は、低研磨か研磨剤なしが目安です。落ちない着色は、こすらず歯科でのクリーニングへ。
歯磨き粉の研磨剤とは?役割は「着色を落とすこと」
「研磨剤って、そもそも何のために入っているの?」と思いますよね。
研磨剤の役目は、歯の表面についた汚れをこすり落とすことです。なかでも、コーヒーやお茶、タバコのヤニによる着色(ステイン)を落とすのが得意です[1]。
成分表示では「清掃剤」と書かれています
歯みがき剤の箱やチューブの成分欄を見ると、「清掃剤」と書かれた成分があります。これが、いわゆる研磨剤です[1]。
代表的な成分は、次の4つです[1]。
- 無水ケイ酸(シリカとも呼ばれます)
- 炭酸カルシウム
- リン酸水素カルシウム
- 水酸化アルミニウム
名前だけ見るとむずかしそうですが、どれも歯みがき剤によく使われている、細かい粉の成分です。
歯垢を落とす主役は、歯ブラシの毛先です
意外かもしれませんが、歯垢(しこう。歯の表面につく細菌のかたまり)を落とす主役は、歯ブラシの毛先です。
たくさんの研究をまとめた報告があります。歯みがき剤を使っても使わなくても、落ちた歯垢はどちらもおよそ半分でした[2]。
つまり、研磨剤なしの歯みがき剤でも、歯垢は落とせます。差が出やすいのは、着色のほうです。
なお、歯みがき剤にはフッ素を歯に届けるという大切な役目もあります。研磨剤のあり・なしにかかわらず、フッ素入りを選びましょう。くわしくは虫歯予防の歯磨き粉の記事をご覧ください。
研磨剤で歯は削れる?歯の表面と根元でちがいます
「毎日使っていたら、歯がすり減ってしまうのでは」と心配になりますよね。
結論から言うと、歯の表面と根元とで、答えが変わります。
歯の表面(エナメル質)は、ほとんど減りません
歯の表面は、エナメル質という層でおおわれています。体の中でいちばん硬い組織です[3]。
歯みがき剤の研磨の強さには、国際的な規格で上限が決められています[4]。日本歯磨工業会は、国内で市販されている歯みがき剤はこの規格を満たしていると説明しています[1]。
アメリカ歯科医師会は、上限以下の歯みがき剤について次のように説明しています。正しい磨き方なら、一生使い続けてもエナメル質はほとんど減らない、というものです[3]。
「研磨剤入り=歯がどんどん削れる」というわけではありません。まずは安心してください。
歯の根元(象牙質)は、やわらかくて減りやすい
気をつけたいのは、歯ぐきが下がって見えてきた歯の根です。
歯ぐきが下がると、エナメル質の内側にある象牙質(ぞうげしつ)が表に出てきます[3]。象牙質はエナメル質よりやわらかく、こすれに強くありません。
抜いた歯の根元を機械で何万回も磨いた実験では、研磨の強い歯みがき剤ほど、根元の減りが大きくなりました[5]。
とはいえ、上限以下の歯みがき剤を正しく使うぶんには、象牙質の減りもわずかだとされています[3]。心配しすぎなくて大丈夫です。
研磨剤に気を配りたいのは、歯の根が見えている方です。歯ぐきが下がる原因は、歯肉退縮の記事でくわしくお話ししています。
研磨の強さの「数字」だけでは決まりません
研磨の強さは「RDA」という数字で表されます。基準になる研磨剤を100として比べた値です[3]。
規格の上限は250です[3][4]。ただ、この数字は製品づくりや品質管理のためのものです。
上限以下の製品どうしを、数字で安全性の順番に並べることはできないとされています[3]。
日本の歯みがき剤は、パッケージにこの数字が書かれていないものがほとんどです。数字を探すより、「だれが、どう使うか」のほうが大切です。
歯が減りやすくなるのは、こんなとき

「同じ歯みがき剤なのに、減る人と減らない人がいるのはなぜ?」。その答えは、使い方にあります。
歯が減るかどうかには、研磨剤の強さだけでなく、磨く力とタイミングが大きく関わります。
強い力でゴシゴシ磨いているとき
「しっかり磨かないと落ちない気がする」と、つい力が入る方は多いです。
牛の歯の象牙質を、機械で磨いた実験があります。軽い力のときは、研磨が強い歯みがき剤でも弱い歯みがき剤でも、減り方に差が出ませんでした[6]。
ところが力を2倍にすると、どの歯みがき剤でも減りが増えました。研磨が強いものほど、増え方が大きくなっています[6]。
歯ブラシはえんぴつのように軽く持ち、毛先が広がらないくらいの軽い力で小さく動かしましょう。力加減のコツは、歯ブラシ圧の記事にまとめています。
酸っぱいものの直後に磨いているとき
酸っぱいものを口にした直後も、歯が減りやすいタイミングです。
酸にふれた歯の表面は、一時的にやわらかくなります。そのあとに歯ブラシでこすると、エナメル質も象牙質も、減りが大きくなることが分かっています[7]。
炭酸飲料、レモンやグレープフルーツ、お酢のドリンクなどのあとは、すぐに磨かず、まず水で口をすすぎましょう。
歯磨きは、しばらく時間をおいてからで大丈夫です。くわしくは酸蝕症の記事をご覧ください。
「研磨剤なし・低研磨」の歯磨き粉を選ぶとよい人

「じゃあ、私は研磨剤なしにしたほうがいいの?」と迷いますよね。
目安は、歯の根(象牙質)が見えているかどうかです。次のような方は、低研磨か研磨剤なしの歯みがき剤を選ぶと安心です。
- 歯ぐきが下がってきた…歯が長く見える、歯の根が見えている
- 歯がしみる…冷たいものや歯ブラシの毛先でキーンとする
- 歯の根元がへこんでいる…えぐれたような段差がある
- つい力が入る…歯ブラシの毛先がすぐに広がる
- 酸っぱいものをよくとる…炭酸飲料、果物、お酢のドリンクなど
先ほどの歯の根元の実験でも、研磨の弱い歯みがき剤では、歯ブラシの毛のかたさによる差が出ませんでした[5]。
ただし、しみる・へこんでいるといった症状には、虫歯や歯周病がかくれていることもあります。歯みがき剤を替えるだけで済ませず、一度歯科で診てもらいましょう。
当てはまらない方は、無理に研磨剤なしにする必要はありません。しみる方の歯みがき剤選びは、知覚過敏用の歯磨き粉の記事も参考にしてください。
研磨剤なしの弱点は「着色」です
研磨剤なしにも、弱点があります。着色がつきやすくなることです。
歯ブラシだけ、または研磨剤を含まない歯みがき剤で磨き続けると、歯が黄ばんでくることがあるとされています。飲食物の色素やタバコのヤニが原因です[1]。
コーヒーやお茶をよく飲む方は、ふだんは低研磨のものを使いましょう。着色が気になってきたら、歯科でクリーニングを受ける、という組み合わせがおすすめです。
成分表示の見方|無水ケイ酸と書いてあったら?
お店で迷ったら、次の3つを見てみましょう。
- 「清掃剤」の欄…無水ケイ酸や炭酸カルシウムなどが書かれていれば、研磨剤入りです[1]。
- 「研磨剤無配合」「低研磨」の表示…パッケージの表や裏に書かれていることがあります。
- 液体タイプ…液体ハミガキには、ふつう研磨剤が入っていません[1]。
なお、規格が決めているのは上限だけです。「低研磨」の線引きまでは決まっていません[4]。
海外の市販品26種類を調べた研究では、製品によって研磨の強さに大きな幅がありました。その多くは、シリカ(無水ケイ酸の仲間)を使った製品です[8]。
「無水ケイ酸と書いてあるから強い」とは言えません。成分の名前だけで判断せず、迷ったら歯科で相談してください。
ホワイトニング歯磨き粉の効果は?炭入りはどうなの?
「白くなるなら使ってみたい」と思う方は多いです。効果と気をつけたい点を、分けてお伝えします。
ホワイトニング歯磨き粉が得意なのは、表面の着色です
ホワイトニング用の歯みがき剤に期待できるのは、歯の表面についた着色を減らすことです。
たくさんの研究をまとめた報告でも、ふつうの歯みがき剤より表面の着色が減ったという結果が多く出ています[9]。
一方で、「白くする」とうたう製品は、象牙質への研磨が強めのものが多かったという報告があります[8]。
しかも、研磨が強いほど着色がよく落ちる、とは限りませんでした[8]。歯の根が見えている方は、毎日使うのは控えめにすると安心です。
選び方は、ホワイトニング歯磨き粉の記事でご紹介しています。
炭(チャコール)入りの歯磨き粉は、まだ分からないことが多い
黒いペーストの「炭入り」も人気です。ただ、効果と安全性を裏づけるデータは、まだ足りないとされています[10]。
実験室での研究をまとめた報告では、白くする効果はほかの方法より低めでした。研磨は強め、という結果も多く見られます[11]。
もとになった研究の質にはばらつきがあり、まだはっきりとは言い切れません。歯の根が見えている方やしみる方は、毎日のメインにするのは控えておくと安心です。
落ちない着色は、こすらず歯科でのクリーニングへ
「歯みがき粉でこすっても、茶色い着色が落ちない」。そんなときは、力を強めるより歯科にまかせましょう。
いちど付いた歯石やステインは、ご自身できれいに取りのぞくのがむずかしい汚れです。強くこすり続けると、歯の根元や歯ぐきに負担がかかります。
当院のステイン除去とクリーニング
当院の予防歯科では、汚れの場所に合わせた専用の器具で、歯石とステインを取りのぞきます。そのあと表面をみがいて、汚れが付きにくい状態に整えます。
歯ブラシや補助の道具の選び方も、担当の歯科衛生士がお口に合わせてご説明します。歯みがき剤で迷っている方も、気軽に聞いてください。
クリーニングの流れは、歯のクリーニングの記事でご紹介しています。
歯そのものの色を明るくしたいとき
歯みがき剤やクリーニングで落とせるのは、表面の着色です。歯そのものの色を明るくしたいときは、歯科のホワイトニングという方法があります。
くわしくは当院のホワイトニングのページをご覧ください。落ちない着色は、力でこすらず歯科へ。これが、歯を守る近道です。
よくある質問

Q. 研磨剤入りの歯磨き粉を、毎日使っても大丈夫ですか?
A. 規格の範囲の製品を正しい磨き方で使うぶんには、歯の表面はほとんど減らないとされています[3]。歯の根が見えている方やしみる方は、低研磨か研磨剤なしを選ぶと安心です。
Q. 電動歯ブラシには、研磨剤なしのほうがよいですか?
A. 研磨の強い歯みがき剤を使い、同じ力で比べた実験では、電動のほうが象牙質の減りが多めでした[12]。歯の根が見えている方は、低研磨か研磨剤なしを選びましょう。押しつけず、軽く当てるのがコツです。
Q. 歯ブラシは「かため」と「やわらかめ」、どちらが歯が減りにくいですか?
A. 研究によって結果が分かれていて、まだはっきりしていません[5][13]。毛のかたさよりも、軽い力で磨くことを意識してみてください。
Q. 歯の根元がへこんでいます。歯磨き粉のせいでしょうか?
A. 歯みがき剤だけで決まるわけではなく、磨く力なども関わります[6]。見た目だけでは原因が分からないので、一度歯科で診てもらいましょう。
まとめ
- 研磨剤(清掃剤)は、着色を落とすための成分です。歯垢を落とす主役は歯ブラシの毛先です。
- 規格の範囲の歯みがき剤を軽い力で使うなら、歯の表面はほとんど減らないとされています。
- 減りやすいのは歯の根元です。強い力と、酸っぱいものの直後の歯磨きに気をつけましょう。
- 歯の根が見えている方・しみる方は、低研磨か研磨剤なしが目安です。
- 落ちない着色は、こすらず歯科でのクリーニングで落としましょう。
「自分の歯にはどの歯みがき剤が合うんだろう」と迷ったら、いつもお使いのものをお持ちください。お口の状態を見ながら、一緒に考えましょう。
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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- 日本歯磨工業会「みがこうネット 歯みがきQ&A」 ページを開く
- Valkenburg C ほか. Does dentifrice use help to remove plaque? A systematic review. J Clin Periodontol. 2016;43(12):1050-1058. PubMed
- American Dental Association「Toothpastes(Oral Health Topics)」 ページを開く
- International Organization for Standardization「ISO 11609:2017 Dentistry — Dentifrices — Requirements, test methods and marking」 ページを開く
- Turssi CP ほか. Interplay between toothbrush stiffness and dentifrice abrasivity on the development of non-carious cervical lesions. Clin Oral Investig. 2019;23(9):3551-3556. PubMed
- Hamza B ほか. Effect of brushing force on the abrasive dentin wear using slurries with different abrasivity values. Int J Dent Hyg. 2023;21(1):172-177. PubMed
- Addy M ほか. Can tooth brushing damage your health? Effects on oral and dental tissues. Int Dent J. 2003;53 Suppl 3:177-186. PubMed
- Schemehorn BR ほか. Abrasion, polishing, and stain removal characteristics of various commercial dentifrices in vitro. J Clin Dent. 2011;22(1):11-18. PubMed
- Soeteman GD ほか. Whitening dentifrice and tooth surface discoloration—a systematic review and meta-analysis. Int J Dent Hyg. 2018;16(1):24-35. PubMed
- Brooks JK ほか. Charcoal and charcoal-based dentifrices: A literature review. J Am Dent Assoc. 2017;148(9):661-670. PubMed
- Tomás DBM ほか. Effectiveness and abrasiveness of activated charcoal as a whitening agent: A systematic review of in vitro studies. Ann Anat. 2023;245:151998. PubMed
- Bizhang M ほか. Toothbrush abrasivity in a long-term simulation on human dentin depends on brushing mode and bristle arrangement. PLoS One. 2017;12(2):e0172060. PubMed
- Bizhang M ほか. Influence of Bristle Stiffness of Manual Toothbrushes on Eroded and Sound Human Dentin—An In Vitro Study. PLoS One. 2016;11(4):e0153250. PubMed


