【フッ素は体に悪い?】「危険」と言われる理由と、子どもにも安心な使い方【歯医者が解説】

歯科医院で、子ども用の歯みがき粉を持った保護者に歯科衛生士が説明している手元のイラスト。「危険」って本当?フッ素は体に悪い?の文字

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「フッ素って、体に悪いんじゃないの?」ネットやSNSで「危険」「毒」という言葉を見て、不安になった方もいるかもしれません。

とくにお子さんの歯みがき粉は、毎日使うものです。「少し飲み込んでいるけれど、大丈夫?」と気になりますよね。

この記事では、フッ素(正しくは「フッ化物」といいます)が「危険」と言われる理由を、一つずつ取り上げます。

研究や国の資料でどこまで分かっているかを、ふだんの言葉でお話しします。年齢に合った使い方と、飲み込んだときの対応もまとめました。

この記事のポイント

  • 害が出るかどうかは「量」で決まります。年齢に合った量の歯みがき粉なら、少し飲み込んでも心配はいりません。
  • 海外で話題の「IQが下がる」という報告は、フッ素の多い水を毎日飲む地域の話です。日本の水道水や、吐き出して使う歯みがき粉とは条件が違います。
  • 歯が作られる時期に取りすぎが続くと、歯に白い模様(歯のフッ素症)が出ることがあります。年齢ごとの量を守って使いましょう。

「フッ素は毒で危険」は本当? 害が出るかは「量」で決まります

「歯みがき粉に、毒が入っているの?」と驚いた方もいるかもしれません。

結論からお話しすると、フッ素は、一度にたくさん飲み込めば中毒を起こします。これは本当です。

でも、塩やお薬と同じで、害が出るかどうかは「どれだけの量か」で決まります。

中毒の目安は「体重1kgあたり5mg」

すぐに病院での処置が必要になる目安は、体重1kgあたりフッ素5mgとされています[1]。

体重10kgの子どもで考えてみましょう。ふつうの濃さの歯みがき粉なら、約50gを一度に飲み込むと、この目安に届きます[2]。

小さめのチューブを、まるごと食べてしまうくらいの量です。

この目安に届かなくても、たくさん飲み込めば、吐き気やおなかの痛みなど、一時的な胃腸の症状が出ることはあります[2]。

ふだん口に残る量は、目安よりずっと少ない

では、毎日の歯みがきやフッ素洗口(フッ素入りの液でブクブクうがいをすること)で、口に残る量はどのくらいでしょうか。

国のマニュアルでは、次のように示されています[3]。

使い方1回に口に残るフッ素の量(目安)
フッ素入りの歯みがき粉約0.08mg
フッ素洗口(毎日するやり方)約0.25〜0.36mg
フッ素洗口(週1回のやり方)約0.9〜1.5mg
歯科医院でのフッ素塗布(年2〜3回)平均約1.83mg

さきほどの中毒の目安とくらべると、どれも目安の数十分の一から数百分の一です。

国のマニュアルでは、洗口と歯みがき粉、歯科医院の塗布を組み合わせても、取りすぎにはならず、安全性に問題はないとされています[3]。

決められた量を守って使えば、毎日のフッ素を怖がる必要はありません。

子どもがフッ素入りの歯みがき粉を飲み込んだら?

「うちの子、歯みがき粉をなめちゃうんです」というご相談は、よくあります。

年齢に合ったふだんの量なら、飲み込んでも心配はいりません。日本の4つの学会がまとめた量の目安は、飲み込むことも考えて決められています[4]。

また、乳幼児向けの歯みがき粉は、チューブを丸ごと飲み込んでも問題ない量で作るのが基本とされています[4]。

たくさん飲み込んだかもしれないとき

チューブをいたずらして、中身が大きく減っていた。そんなときは、次の順に動きましょう。

  1. 口の中を確かめる…残っている歯みがき粉は、ふき取ります。
  2. 減った量を確かめる…チューブの残りを見て、どれくらい減ったかを確かめます。
  3. すぐに相談する…中毒110番か、小児科・救急の医療機関に電話します。

中毒110番(日本中毒情報センター)は、一般の方なら相談料は無料で、24時間いつでも相談できます[5]。

  • 大阪中毒110番…072-727-2499
  • つくば中毒110番…029-852-9999

電話では、子どもの年齢と体重、商品名、飲んだ量と時刻を伝えます[5]。チューブを手元に置いて電話しましょう。

吐いている、おなかを痛がる、ぐったりしているときは、迷わず医療機関を受診してください。

フッ素はカルシウムと結びつくと、体に吸収されにくくなります。そのため病院では、カルシウムを含む液を飲ませるなどの処置が行われます[2]。

大人用の歯みがき粉は、とくに手の届かない所に

大人用の歯みがき粉は、子ども用より濃く、チューブも大きいものが多いです。

4つの学会の目安にも、歯みがき粉は子どもの手が届かない所に保管するよう書かれています[4]。洗面台の低い棚に、置きっぱなしにしないようにしましょう。

子どもが歯みがき粉を飲み込んだときの対応の図。ふだんの量なら心配いらない。たくさん減っていたら残りの量を確かめ、中毒110番か医療機関へ相談する

フッ素の副作用「歯のフッ素症」とは?

「副作用はないの?」という疑問も、もっともです。

正直にお伝えすると、あります。いちばん身近なのが歯のフッ素症で、歯に白いすじや、くもったような模様が出る状態です。

歯のフッ素症は、歯があごの骨の中で作られている時期に、長い間フッ素を取りすぎたときに起こります[6]。一度飲み込んだくらいでは起こりません。

気をつけたいのは、歯が作られている小さいうち

4歳ごろには、永久歯の前歯と、最初に生える大きな奥歯の、頭の部分がほぼできあがっています[6]。

そのため国の資料では、この時期から始めるフッ素洗口で、歯のフッ素症が出ることはないとされています[6]。

気をつけたいのは、それより小さい時期です。2歳までは米粒程度、3〜5歳はグリーンピース程度という量の目安を守りましょう[4]。

日本では、目立つフッ素症はまれです

日本では、水道水にフッ素を加えていません[4]。

自然にフッ素が多く含まれる水の地域で育った子どもを調べた日本の研究でも、増えたのは軽いタイプのフッ素症だけでした[7]。

軽いフッ素症は、白いすじがうっすら見える程度のものです。見た目の特徴は、歯の白い斑点についての記事でくわしく紹介しています。

「フッ素でIQが下がる」は本当? 海外の報告と日本の違い

「フッ素で子どものIQが下がる、というニュースを見た」という方もいるでしょう。

話題になっている研究の多くは、フッ素がとても多い水を、毎日飲んでいる地域の話です。歯みがき粉の安全性を、直接調べたものではありません。

海外の報告で分かったこと

アメリカの国の研究機関が、たくさんの研究を調べて報告をまとめました。

飲み水のフッ素が1.5mg/Lを超えるような多い量では、子どものIQが低い傾向がある、という内容です[8]。

一方で、アメリカの水道水に加えている程度の低い濃度で影響があるかは、判断できるだけのデータがない、としています[8]。

もとになった研究をまとめた論文でも、対象の多くは中国やインドなどの研究でした。調べ方に弱点がある研究も、たくさん含まれていました[9]。

それより低い濃度の水については、データが少なく、影響があるかどうかはまだはっきり分かっていません[9]。

「影響がない」と言い切れる段階でもなく、研究が続いています。

日本の水道水や歯みがき粉とは、条件が違います

日本の水道水は、フッ素が0.8mg/L以下と基準で決められています[10]。水道水にフッ素を加えることもしていません[4]。

また、歯みがき粉やフッ素洗口は、飲み物ではありません。歯に使ったあと、吐き出すものです。

口に残る量は、最初の見出しの表のとおり、ごくわずかです[3]。

アメリカで「水道水のフッ素」をやめた州があるのは?

アメリカでは2025年に、ユタ州が、水道水にフッ素を加えることを法律で禁止しました[11]。

ただ、同じ法律で、薬剤師がフッ素を処方できるようにもしています[11]。やめたのは「全員が飲む水に加えること」で、フッ素そのものを禁止したわけではありません。

日本はもともと水道水にフッ素を加えていません。そのため、歯みがき粉やフッ素洗口など、歯に直接使う方法でむし歯を防いでいます[4]。

骨・がん・甲状腺への害は? 主張の根拠を確かめました

「骨がもろくなる」「がんになる」という話を見かけることもあります。

これらは、フッ素がとても多い水を長く飲み続けた場合の話か、関係が確かめられていない話です。一つずつ見ていきましょう。

骨のがん(骨肉腫)

骨肉腫(こつにくしゅ。骨にできるがん)の患者さんの骨を調べた研究があります。

骨にたまったフッ素の量は、骨肉腫以外の腫瘍の患者さんと、差がありませんでした[12]。

水道水のフッ素の濃さと、子どもの骨肉腫との関係を調べたアメリカの調査でも、関係は見られませんでした[13]。

骨折と、骨のフッ素症

たくさんの研究をまとめた報告では、飲み水のフッ素が1.5mg/Lを超えるあたりから、骨折が増える傾向がありました[14]。

また、閉経後の女性では、もっと低い濃度から骨折が増える傾向も見られました[14]。ここは、まだ研究が続いている点です。

骨のフッ素症(骨が硬くもろくなる状態)は、とても濃いフッ素の水を、20年以上飲み続けたときに起こるとされています[6]。

甲状腺

甲状腺(のどにある、ホルモンを作る器官)への影響を調べた研究のまとめでは、低い濃度ではホルモンの値に変化は見られませんでした[15]。

飲み水のフッ素が2.5mg/Lくらいを超えると、値が上がりはじめる傾向がありました[15]。

どの話も、毎日飲む水に含まれるフッ素の量が問題になっています。吐き出して使う歯みがき粉で口に残る量は、それよりずっと少ないものです。

フッ素なしの歯磨き粉を選ぶ前に。年齢に合った安全な使い方

「心配だから、フッ素なしの歯みがき粉にしようかな」と考える方もいます。

フッ素なしでも、ブラシで汚れを落とすことはできます。ただ、フッ素によるむし歯予防の力は得られません。

フッ素なしの歯みがき粉は?

フッ素には、歯の表面を酸に強くして、溶けかけたところの修復(再石灰化)を助けるはたらきがあります。

子どもでくらべた試験をまとめた報告では、フッ素入りを使うと、フッ素なしより、新しくできるむし歯が約24%少なくなっていました[16]。

フッ素のかわりに、ハイドロキシアパタイト(歯の成分に近いミネラル)入りの歯みがき粉もあります。

子どもでくらべた試験では、むし歯のでき方がフッ素入りと同じくらいでした[17]。ただ、このような試験はまだ少ないのが現状です。

日本の学会の目安は、大人も子どもも、フッ素入りの歯みがき粉です[4]。選び方は、虫歯予防の歯磨き粉の記事も参考にしてください。

年齢ごとの量と濃さ

日本の4つの学会は、年齢ごとの目安を次のようにまとめています[4]。ppmは、フッ素の濃さを表す単位です。

年齢1回の量フッ素の濃さ
歯が生えてから2歳米粒程度(1〜2mm)900〜1,000ppm
3〜5歳グリーンピース程度(5mm)900〜1,000ppm
6歳〜大人・高齢の方歯ブラシ全体(1.5〜2cm)1,400〜1,500ppm
年齢に合ったフッ素入り歯みがき粉の量の図。歯が生えてから2歳は米粒程度、3〜5歳はグリーンピース程度、6歳から大人は歯ブラシ全体。うがいは少量の水で1回だけ
  • 1日2回、寝る前にも…寝る前を含めて、1日2回みがきます。
  • うがいは少なめに…歯みがき粉を軽く吐き出し、うがいは少量の水で1回だけにします。
  • 2歳までは拭き取ってもよい…うがいができないうちは、ティッシュなどで軽く拭き取ってもかまいません。
  • 量は大人が出す…子どもが自分で適量をつけられないうちは、保護者が出しましょう。

なお、歯が生えはじめたばかりの生後5〜6か月ごろは、使う量がごくわずかです。この時期は、むし歯予防の効果はあまり期待できません。

この時期は、ガーゼなどを使って、お口のケアに慣れることを大切にしましょう[4]。

フッ素洗口と、歯科医院でのフッ素塗布

フッ素洗口は、ブクブクうがいができるようになる4歳ごろからがおすすめです[3]。くわしくはフッ素洗口の記事で紹介しています。

当院の定期検診では、家庭用より濃いフッ素を歯に塗っています。量は歯科医院で決めて塗るので、口に残る量は最初の見出しの表のとおりです。

塗布の効果や流れは、フッ素塗布の記事をご覧ください。

よくある質問

よくある質問

Q. 園のフッ素洗口と、家のフッ素入り歯みがき粉、歯医者のフッ素塗布を全部すると、取りすぎになりませんか?
A. なりません。国のマニュアルでも、組み合わせても取りすぎにはならず、むしろ予防の効果が高まると考えられています[3]。

Q. 水道水のフッ素は、気にしたほうがいいですか?
A. 日本の水道水は、フッ素の量に基準があります[10]。水道水にフッ素を加えることもしていないので、ふだんどおり飲んで大丈夫です[4]。

Q. 大人も、フッ素入りの歯みがき粉を使ったほうがいいですか?
A. はい。学会の目安では、大人や高齢の方にも、濃さ1,500ppmの歯みがき粉が勧められています[4]。歯ぐきが下がって出てきた歯の根については、歯の根の虫歯の記事もご覧ください。

Q. 歯のフッ素症の白い模様は、消えますか?
A. 自然には消えません。気になるときは、見た目を整える方法もありますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

フッ素が「危険」と言われる理由を、一つずつ見てきました。

  • フッ素の害は「量」で決まります。年齢に合った量の歯みがき粉なら、少し飲み込んでも心配いりません。
  • たくさん飲み込んだかもしれないときは、チューブの残りを確かめて、中毒110番か医療機関に相談しましょう。
  • 「IQが下がる」「骨が弱くなる」などの報告は、フッ素の多い水を毎日飲む地域の話です。低い濃度での影響は、まだはっきり分かっていない点もあります。
  • 歯のフッ素症を防ぐために、小さいうちは量の目安を守りましょう。

フッ素は、子どものむし歯予防の柱のひとつです。甘いもののとり方や、保護者ご自身のお口の環境を整えることと組み合わせると、より安心です。

「うちの子の使い方で合っている?」と気になったら、検診のときに遠慮なく聞いてください。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. Whitford GM. Fluoride in dental products: safety considerations. J Dent Res. 1987;66(5):1056-1060. PubMed
  2. Whitford GM. Acute toxicity of ingested fluoride. Monogr Oral Sci. 2011;22:66-80. PubMed
  3. 厚生労働行政推進調査事業「歯科口腔保健の推進に資するう蝕予防のための手法に関する研究」班 編『フッ化物洗口マニュアル(2022年版)』 資料を開く
  4. 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会『4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法』(2023年1月) 資料を開く
  5. 日本中毒情報センター『中毒110番・電話サービス(一般専用)』 ページを開く
  6. 厚生労働省医政局長・健康局長『「フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方」について』(令和4年12月28日) 資料を開く
  7. Tsutsui A ほか. The prevalence of dental caries and fluorosis in Japanese communities with up to 1.4 ppm of naturally occurring fluoride. J Public Health Dent. 2000;60(3):147-153. PubMed
  8. National Toxicology Program『Fluoride Exposure: Neurodevelopment and Cognition』(NTP Monograph, 2024年) ページを開く
  9. Taylor KW ほか. Fluoride Exposure and Children’s IQ Scores: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Pediatr. 2025;179(3):282-292. PubMed
  10. 環境省『水質基準項目と基準値(52項目)』 ページを開く
  11. Utah State Legislature『H.B. 81 Fluoride Amendments』(2025 General Session) ページを開く
  12. Kim FM ほか. An assessment of bone fluoride and osteosarcoma. J Dent Res. 2011;90(10):1171-1176. PubMed
  13. Archer NP ほか. Fluoride exposure in public drinking water and childhood and adolescent osteosarcoma in Texas. Cancer Causes Control. 2016;27(7):863-868. PubMed
  14. Mazzoli R ほか. The association of fluoride exposure with bone density and fracture risk: a dose-response meta-analysis. Environ Health. 2025;24(1):73. PubMed
  15. Iamandii I ほか. Does fluoride exposure affect thyroid function? A systematic review and dose-response meta-analysis. Environ Res. 2024;242:117759. PubMed
  16. Marinho VC ほか. Fluoride toothpastes for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2003;(1):CD002278. PubMed
  17. Paszynska E ほか. Impact of a toothpaste with microcrystalline hydroxyapatite on the occurrence of early childhood caries: a 1-year randomized clinical trial. Sci Rep. 2021;11(1):2650. PubMed

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