根面う蝕(歯の根の虫歯)とは?原因と予防法、高濃度フッ素5000ppmのエビデンスを解説

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「磨きにくい歯の根元が虫歯になりやすい」と感じたことはありませんか。これは「根面う蝕(こんめんうしょく)」と呼ばれる、歯ぐきが下がって露出した歯根に起こる特有の虫歯です。実は、高齢化が進む日本では患者数の増加が課題となっています。
今回は根面う蝕の原因と予防法に加え、当院で取り扱っている「5000ppm」高濃度フッ素歯磨き粉について、どのくらい効果が期待できるのか、海外や日本国内でどう位置づけられているのかを分かりやすく解説します。
根面う蝕とは?歯ぐきが下がると虫歯になりやすい理由

根面う蝕とは、歯ぎしりや歯周病などで歯ぐきが下がり、本来は歯ぐきに覆われている「歯根(根面)」が露出した部分にできる虫歯です。歯の頭の部分を覆うエナメル質は硬く酸に強い組織ですが、根元を覆う象牙質はエナメル質より柔らかく酸に弱いため、通常の虫歯よりも進行が速く、治療した後も再発しやすいという特徴があります。
8020運動の推進により多くの歯を残せる高齢の方が増えた一方で、その分だけ根元が露出する機会も増えており、今後さらに注目される虫歯のタイプだと考えられています[1]。
根面う蝕になりやすい方の特徴
- 歯周病や加齢によって歯ぐきが下がっている方
- 歯ぎしりなどで根元が削れている方
- ドライマウス(口腔乾燥)で唾液の自浄作用が低下している方
- 矯正装置を装着していて、細部の歯磨きが行き届きにくい方
- 過去に虫歯や歯周病を繰り返している方
根元が虫歯になりやすいのには理由があります。歯の頭を覆うエナメル質はとても硬く、かなり強い酸にさらされないと溶け出しません。ところが根元を覆う象牙質は、エナメル質よりやわらかく、もっと弱い酸でも溶け始めてしまう性質があります。
つまり、エナメル質なら平気なくらいの軽い酸性状態でも、根元はすでにダメージを受け始めてしまうのです[1]。加えて象牙質は歯を支えるタンパク質の成分も多く含んでいるため、酸によるダメージに加えて細菌の働きでその成分も壊れやすく、進行が速くなりやすいといわれています。
フッ素濃度と虫歯予防効果の関係

フッ素歯磨き粉の効果は、世界中のたくさんの研究をまとめた信頼性の高い報告で確かめられています[2]。
それによると、子どもや10代では、フッ素の濃度が高いほど虫歯を防ぐ効果も高まる傾向がありました[2]。ただし、濃いほど効果が高まったのは1,500ppm前後までで、それより濃い製品では大きな差は見られませんでした[2]。また、この調査で扱われた濃度は最大でも2,400〜2,800ppm程度までで、5,000ppmについてのデータはこの調査には含まれていません。
「5000ppm」高濃度フッ素歯磨き粉のエビデンス
5,000ppmの高濃度フッ素歯磨き粉は、次のような研究から、根元の虫歯の進行を止める効果が期待できます。
- 成人130名に協力してもらった比較研究では、5,000ppmと1,350ppmの歯磨き粉を6ヶ月間使ってもらって比べました。その結果、5,000ppmを使ったグループの方が、根元の虫歯の硬さ(健康な状態に近づいたかどうかの目安)がはっきりと改善しました[3]。
- 根元の虫歯についての研究をまとめた報告では、5,000ppmと通常濃度(1,100〜1,450ppm)の歯磨き粉を比べています。5,000ppmの方が、進行中の根元の虫歯が止まる(硬くなる)ことが多いという結果でした[4]。
- 高齢者を2年間見守った研究でも、5,000ppmのグループでは、根元の虫歯の約6割が「進行中→1年後に止まる→2年後も止まったまま」でした。1,450ppmのグループでは、この経過をたどったのは2割弱でした[5]。
日本国内で5000ppmの歯磨き粉は買える?

5,000ppmのフッ素配合歯磨き粉は、日本国内では医薬部外品として市販されていません。市販の歯磨き粉のフッ素濃度は、2017年3月に厚生労働省が認めた1,500ppmが上限です[6]。それでも、日本歯科保存学会の「根面う蝕の診療ガイドライン-非切削でのマネジメント-」(2022年)は、5,000ppmの歯磨剤の使用を勧めています。理由は「通常濃度の歯磨き粉に比べて、進行している根元の虫歯を落ち着かせる効果がある」ためです[1]。
ただし「強くお勧めする」というほどの強い書き方ではありません。その主な理由は、効果に疑問があるからではなく、「国内では正式に認可されていない」という制度上の事情だと、ガイドライン自体に書かれています[1]。
厚生労働省が定める医薬品等の輸入の手続きを経れば、歯科医師が自分の患者さんの治療のために海外製品を取り寄せることは認められています[1][7]。この仕組みを利用して、自由診療でハイリスクな患者さんに5,000ppm製品を提供している歯科医院もあります。
誰でも簡単に手に入るものではないため、気になる方はまず歯科医院にご相談ください。国内で受けられる代わりの方法として、歯科医院で行う「フッ素塗布」(家庭用歯磨き粉のおよそ10倍濃度)も、根面う蝕の予防に効果が期待できます[8]。
篠塚歯科医院では、診察を行い虫歯に対してハイリスクと判断した患者さんに対して3Mの5000ppmのフッ素歯磨き粉を販売しております。(3300円+Tax)

なお前述のガイドラインでは、5,000ppmの歯磨剤を使う場合の目安として、1日2回、歯ブラシに約1cmをのせて磨くことが示されています[1]。使う期間は6〜8ヶ月を目安にし、虫歯が落ち着いたら市販の歯磨き粉への切り替えも考えます[1]。ふだんの歯磨き粉と同じく、寝る前を含めて1日2回磨き、磨いた後は軽く吐き出して、うがいをする場合は少量の水で1回だけにしましょう[9]。フッ素を口の中に長くとどめておくことで、歯を修復する働きを高める狙いがあります。
安全に使うための注意点
フッ素は虫歯予防にとても役立つ成分です。ただし、歯が作られる時期(永久歯ではおおむね7歳ごろまで)にフッ素の摂りすぎが続くと、「歯のフッ素症(斑状歯)」という白い斑点や着色が出やすくなります[1]。
そのため国際歯科連盟(FDI)の手引きでも、5,000ppmのような高濃度の製品は16歳以上が対象です。それも、虫歯のリスクがとても高い場合に、歯科医師の処方やすすめのもとで使うものとされています[10]。15歳までのお子さんは、日本の歯科の4学会が示す次の目安を参考にしてください。
・歯が生えてから5歳まで:900〜1,000ppmの歯磨き粉を、少しの量(2歳までは米粒程度、3〜5歳はグリーンピース程度)で使用して下さい[9]。
・6~15歳まで:1,400〜1,500ppmの歯磨き粉を、適切な量を守って使わせてあげてください[9]。
各年齢ごとにおけるフッ素歯磨き粉の使用については、こちらの記事でもまとめていますので良かったら参考にして下さい。
よくある質問

Q. 市販の1,500ppmの歯磨き粉では根面う蝕の予防に不十分ですか?
A. いいえ、大多数の方にとって1,500ppmで十分な予防効果が期待できます。5,000ppmが検討されるのは、根面う蝕や口腔乾燥など特定のリスクをお持ちの一部の方に限られます。
Q. 高濃度フッ素を試したい場合はどうすればいいですか?
A. まずは歯科医院でご自身の虫歯リスクを確認することをおすすめします。当院では唾液検査などで一人ひとりのリスクを評価したうえで、フッ素塗布を含めた適切な予防プランをご提案しています。
Q. 根面う蝕を放置するとどうなりますか?
A. 象牙質は虫歯の進行が速いため、放置すると短期間で歯の内部(歯の神経)まで達し、歯が欠けたり折れたりするリスクが高まります。全国の歯科医院で抜歯の原因を調べた調査でも、永久歯を失う原因の第2位はう蝕(29.2%)で、第1位の歯周病(37.1%)に次いでいます[11]。早めに気づいて対応することが、歯を長持ちさせる鍵になります。
まとめ
根面う蝕は、歯ぐきが下がることで露出した歯根に起こる、進行の早い虫歯です。海外の研究や日本歯科保存学会の診療ガイドラインでも、5,000ppmの高濃度フッ素歯磨き粉が、根面う蝕のリスクが高い方に対して通常濃度の歯磨き粉を上回る効果を持つことが示されています。
ただし国内では市販されておらず、歯科医師の管理のもとで使用を検討すべき製品である点が重要です。
歯ぐきの下がりや口腔乾燥などのリスクをお持ちの方は、自己判断で高濃度製品を探すのではなく、歯科医院でのフッ素塗布や、お一人おひとりに合った予防プランを相談することが安全で確実な選択です。
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歯ぐきの下がりや根元の虫歯が気になる方は、お気軽に当院までご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- 日本歯科保存学会「根面う蝕の診療ガイドライン-非切削でのマネジメント-」(2022年) 資料を開く
- Walsh T ほか. Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries. Cochrane Database Syst Rev. 2019;3(3):CD007868. PubMed
- Srinivasan M ほか. High-fluoride toothpaste: a multicenter randomized controlled trial in adults. Community Dent Oral Epidemiol. 2014;42(4):333-340. PubMed
- Wierichs RJ ほか. Systematic review on noninvasive treatment of root caries lesions. J Dent Res. 2015;94(2):261-271. PubMed
- León S ほか. Dynamics of root caries in older adults using high-fluoride toothpaste. J Dent. 2025;162:106018. PubMed
- 日本小児歯科学会「濃度の高いフッ化物配合薬用歯みがき剤の使用について」(2018年12月) 資料を開く
- 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」 資料を開く
- Zhang J ほか. Topical Fluoride to Prevent Root Caries: Systematic Review with Network Meta-analysis. J Dent Res. 2020;99(5):506-513. PubMed
- 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」(2023年1月) 資料を開く
- 国際歯科連盟(FDI)「う蝕予防とマネジメント チェアサイドガイド」(2017年) 資料を開く
- 8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書」(2018年) 資料を開く




