2026年10月04日
【噛むと歯が痛い】考えられる6つの原因と受診の目安【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「冷たいものはしみないのに、噛んだときだけズキッとする」。そんなお悩みで来院される方は、とても多いです。
おにぎりやお肉を噛んだ瞬間に響く。でも、しばらくすると治まる。だから、つい様子を見てしまいます。
じつは「噛むと痛い」は、歯の内側よりも歯を支えている周りからのサインであることが多い症状です。この記事では、考えられる6つの原因と、すぐ受診したほうがよい見分け方、受診までの過ごし方をお伝えします。
この記事のポイント
- 噛んだときだけ痛むのは、根の先の炎症・歯のひび・噛み合わせなど、歯を支える周りからのサインであることが多いです。
- 顔や歯ぐきが腫れている、噛まなくても痛む、痛みで眠れない。このどれかがあれば、その日のうちにご連絡ください。
- 受診までは、痛むほうで噛まず、硬いものを避けて過ごすと安心です。お風呂やお酒で温めると、痛みが強くなることがあります。
「しみる」と「噛むと痛い」は、別のサインです
「虫歯でしょうか」と言って来院される方は多いです。でも、噛んだときだけ痛むなら、虫歯以外の原因もしっかり考えます。
歯の内側の神経が傷んでいるときは、冷たいものや甘いものでしみるのが特徴です。いっぽう噛んだときの痛みは、歯の根を包む「歯根膜(しこんまく。歯と骨のあいだにある薄いクッション)」が受け取っています。
この膜に炎症が起きると、噛んだ力がそのまま痛みに変わります。だから、何もしていないときは平気なのに、噛んだ瞬間だけ響くのです。
つまり「噛むと痛い」は、歯の中の問題というより、歯を支えている周りからの知らせだとお考えください。原因が分かれば、やることもはっきりします。順に見ていきましょう。
噛むと歯が痛いとき、考えられる6つの原因
「どれかひとつだけ」と決まっているわけではありません。よくあるものから順にご紹介します。
1. 根の先で炎症が起きている
「前に神経を取った歯なのに、どうして痛むの?」と不思議に思う方が多いところです。
神経を取った歯でも、根の先に炎症が起きることがあります。細い根の中に細菌が残ったり、すき間からあとで入り込んだりするためです。
世界中の調査をまとめた報告では、根の治療を受けた歯のおよそ4割に、根の先の炎症が見つかっていました[1]。めずらしいことではないのです。
やっかいなのは、この炎症は痛みのないまま進むことが多い点です。噛んで痛み出したときには、根の先がすでに腫れていることもあります。根の治療をやり直して治せる場合も多いので、早めにご相談ください。
2. 歯にひびが入っている
「レントゲンでは異常なし。でも噛むと痛い」。これは、歯のひびでよく起こります。
ひびはとても細く、エックス線写真にはほとんど写りません。見分ける手がかりは痛み方です。噛んだときより「噛んで、力をゆるめた瞬間」にズキッとするなら、ひびを疑います。
ひびが見つかった歯を5年分調べた報告では、いちばん多かったのは下の奥歯で、全体のおよそ4分の1でした[2]。力がいちばん強くかかる場所だからです。
詰め物をしたことのない、見た目は健康な歯にもひびは入ります[2]。せんべい、氷、ナッツ、フランスパン。硬いものをよく噛む方は、特に気をつけたいところです。
3. 詰め物が高い、噛む力が一点に集中している
歯の治療をしたあとに「噛むと痛い」が始まったなら、まず噛み合わせを疑います。
詰め物がほんのわずか高いだけで、その歯だけに力が集まります。髪の毛ほどの厚みの差でも、歯根膜はちゃんと気づきます。
この場合は、噛み合わせを少し調整するだけで、数日で落ち着くことが多いです。「治療した歯が当たる気がする」と感じたら、遠慮なくお申し出ください。
食いしばりや歯ぎしりでも、同じことが起こります。日中、気づくと上下の歯が触れている方は、その癖が引き金かもしれません。
4. 歯ぐきの病気で、歯の支えが減っている
「噛むと痛いし、なんだか歯が浮いた感じもする」。そんなときは、歯ぐきの状態も確かめます。
歯周病が進むと、歯を支える骨が少しずつ減ります。支えが減った歯はわずかに動くようになり、噛むたびに痛みが出ます。
国の調査では、15歳以上の47.8%に、深さ4mm以上の歯ぐきの溝(歯周ポケット)がありました[3]。決して他人事ではない数字です。
歯ぐきが赤く腫れている、押すと白い膿が出る。こんなときは、その場での処置が必要になります。早めにご連絡ください。
5. 詰め物の下で、虫歯が広がっている
銀歯の下は、ご自身では見えません。だからこそ、気づきにくい原因です。
詰め物と歯のあいだにすき間ができると、そこから虫歯が進むことがあります。これを二次う蝕(にじうしょく。治療した歯にできる新しい虫歯)と呼びます。
内側の穴が広がると、噛んだときに詰め物がわずかに沈み、痛みにつながります。詰め物が浮いた感じがする、食べ物がはさまるようになった。どちらも受診のサインです。
6. 親知らず、または鼻の奥の炎症
いちばん奥が痛むときは、親知らずが関わっていることがあります。
親知らずのまわりは歯ブラシが届きにくく、歯ぐきが腫れやすい場所です。腫れた歯ぐきを自分で噛んでしまい、痛みが長引くこともあります。
もうひとつ、見落としやすいのが鼻の奥です。上の奥歯の根は、上顎洞(じょうがくどう。鼻につながる空洞)のすぐ近くにあります。
風邪のあとに上の奥歯が数本まとめて痛む、下を向くと響く。こんなときは、副鼻腔炎(ふくびくうえん)が関わっていることがあります。その場合は耳鼻科の受診が必要ですので、お口を拝見したうえでご案内します。
すぐ受診したほうがよいサイン
「痛いけれど、明日には治まるかも」。そう考えて、週末を越してしまう方は少なくありません。

次のどれかがあれば、様子を見ずに、その日のうちにご連絡ください。
- 顔や歯ぐきが腫れている、押すと膿が出る
- 噛まなくても、ずっとズキズキ痛む
- 痛みで眠れない、夜中に目が覚める
- 熱が出た、口が開けにくい、飲み込むとつらい
これらは、炎症が歯の外へ広がりはじめたサインです。腫れは、放っておいて引くのを待つものではありません。
逆に、硬いものを噛んだときだけ軽く響く程度なら、数日のうちの受診で間に合うことが多いです。ただし、自然に消えることはほとんどありません。ご予約はお早めにお願いします。
歯科医院では、こんな順番で調べます
「何をされるのか分からないと不安で」という声を、よくいただきます。流れをお伝えしますね。
まず、どの歯が痛むのかをはっきりさせます。歯を軽く叩いて響き方を比べたり、1本ずつ綿の棒を噛んでいただいたりします。自分でも場所が分からないことは、よくあります。
次に、青い紙を噛んでいただき、どこに力が集中しているかを目で確かめます。高いところが見つかれば、その場で調整できます。
そのうえで、エックス線写真で根の先と骨の状態を見ます。当院では、必要に応じて歯科用CTや拡大鏡・マイクロスコープも使い、細かいところまで確かめています。
歯ぐきの溝の深さも、1本ずつ測ります。ひびが複数ある歯、いちばん奥の歯、歯ぐきの溝が深くなっている歯は、残しにくいことが分かっています[4]。ここまで確かめてから、治療の方針をご相談します。
受診までの数日を、楽に過ごす4つの工夫
「予約の日まで、どう過ごせばいいですか」。これもよくいただく質問です。4つだけ覚えてください。
- 痛むほうで噛まない。反対側だけで食べると、炎症が落ち着きやすくなります。
- 硬いものを避ける。せんべい、ナッツ、氷、フランスパンはお休みしてください。ひびが深くなることがあります。
- 温めない。お風呂、お酒、激しい運動は、血のめぐりがよくなって痛みが強くなりがちです。ほてるときは、頬の上から冷たいタオルを当てる程度にしてください。
- その歯を、いつもより丁寧に磨く。痛いと避けたくなりますが、汚れが残ると腫れが増します。やわらかい歯ブラシで、そっとで構いません。
市販の痛み止めは、箱に書かれた使い方を守れば、お使いいただいて大丈夫です。ただし、痛み止めは原因を治すものではありません。
痛みが消えたからと受診をやめると、気づかないうちに進みます。「効いているあいだに、きちんと診てもらう」とお考えいただけると安心です。
繰り返さないために、今日からできること
一度おさまっても、原因が残っていればまた痛みます。防ぐ鍵は、歯にかかる力を減らすことです。
まずは、日中の食いしばりです。食事や会話をしていないとき、本来、上下の歯は触れていません。
パソコンやスマホを見ているとき、ふっと確かめてみてください。触れていたら、息を吐いて肩の力を抜き、歯を離します。「気づいたら離す」をくり返すだけで、歯にかかる力は減らせます。
寝ているあいだの歯ぎしりには、マウスピース(ナイトガード)という方法があります。当院では、歯と顎の関節にかかる力をやわらげる目的でお作りしています。くわしくは歯ぎしり・食いしばりのページをご覧ください。
ひびが見つかった歯は、噛む面ごと覆うように修復すると長持ちします。
痛みの出たひび割れた歯を7年間追いかけた報告では、噛む面を覆った歯は、ひとつも壊れませんでした[5]。覆わなかった歯には、壊れたり根の治療が必要になったりしたものがありました。
そして、年に数回の定期検診です。ひびや根の先の炎症は、痛みが出る前に見つかることがあります。「痛くなってから」より、ずっと小さな治療で済みます。
よくある質問

Q. 痛みが自然におさまりました。受診しなくても大丈夫でしょうか?
A. 受診してください。歯の神経が死んでしまい、感じなくなっただけのこともあります。その場合、根の先では炎症が静かに進みます。「治った」ではなく「感じなくなった」かもしれない、とお考えください。
Q. レントゲンで異常なしと言われましたが、まだ噛むと痛みます。
A. 歯のひびは、エックス線写真にはほとんど写りません。力をゆるめた瞬間に痛む、特定の向きで噛むと響く。こうした特徴があれば、ひびを疑って調べ直します。遠慮なくもう一度ご相談ください。
Q. ひびが入った歯は、抜くしかないのでしょうか?
A. そうとは限りません。ひびの深さと向きによります。噛む面を覆う修復や根の治療で、残せることも多くあります。ただし、ひびが根の奥まで達していたり、歯ぐきの溝が深くなっていたりすると、残しにくくなります。
Q. 痛み止めを飲んで、我慢して待ってもよいですか?
A. 腫れや熱がなければ、使い方を守ったうえで痛み止めを飲み、受診をお待ちいただけます。ただし腫れている、眠れない、口が開けにくいときは、お待ちにならずご連絡ください。
Q. 治療費はどれくらいかかりますか?
A. 原因と、必要な処置の組み合わせで大きく変わります。保険が使えるものと自費のものがありますので、お口を拝見したうえで、治療計画とあわせてご説明します。
まとめ
噛んだときだけ痛む。これは、歯の内側よりも歯を支える周りからのサインであることが多い症状です。
考えられるのは、根の先の炎症、歯のひび、噛み合わせ、歯周病、詰め物の下の虫歯、親知らずや鼻の奥の炎症。原因ごとに、やることは変わります。
いちばんお伝えしたいのは、この痛みが自然に消えることは、ほとんどないということです。痛みが引いても、原因はそのまま残っています。
腫れている、噛まなくても痛む、眠れない。このどれかがあれば、その日のうちにご連絡ください。そうでなければ、痛むほうで噛まず、硬いものを避けて、早めにご予約をお取りください。
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墨田区の篠塚歯科医院では、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保し、診療室はすべて個室にしております。じっくりご相談いただける環境を整えていますので、噛むと痛む歯があればお早めにご連絡ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- Tibúrcio-Machado CS ほか. The global prevalence of apical periodontitis: a systematic review and meta-analysis. Int Endod J. 2021;54(5):712-735. PubMed
- Kang SH ほか. Cracked teeth: distribution, characteristics, and survival after root canal treatment. J Endod. 2016;42(4):557-562. PubMed
- 厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要」 資料を開く
- Tan L ほか. Survival of root filled cracked teeth in a tertiary institution. Int Endod J. 2006;39(11):886-889. PubMed
- Opdam NJ ほか. Seven-year clinical evaluation of painful cracked teeth restored with a direct composite restoration. J Endod. 2008;34(7):808-811. PubMed


