【何分磨けばいい?】歯磨きの時間の目安と磨き残しを減らす順番【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。「歯磨きって、結局何分磨けばいいんですか?」——診療室でとてもよくいただく質問です。1分で十分だと思っている方もいれば、10分以上かけているという方もいて、なかなか正解が見えにくいテーマだと思います。

じつはブラッシング時間と歯垢(プラーク)の落ち具合の関係は、これまで数多くの臨床研究で実際に測定されてきました。この記事では、そうした研究データと国の統計をもとに、「何分磨けばよいのか」「時間さえかければ落ちるのか」「磨き残しはどこに溜まるのか」を、東京都墨田区東駒形の篠塚歯科医院の歯科医師が解説します。

結論:目安は「2分以上」。ただし時間だけでは足りません

先に結論をお伝えします。研究データから導かれる現実的な目安は「1回あたり2分以上」です。世界的にも歯科の専門家は最低2分を推奨しており、この記事で紹介する臨床試験の結果もそれを裏づけています。

ただし、ここがとても大切なところなのですが、2分磨けば汚れが落ちきるわけではありません。時間は「必要条件」であって「十分条件」ではない、というのが研究からわかっていることです。時間・順番・道具の3つがそろってはじめて、磨き残しは減っていきます。理由を順番に見ていきましょう。

研究でわかっている「磨く時間」と「落ち具合」の関係

オランダのアムステルダム歯学部(ACTA)の研究グループは、手用歯ブラシによるブラッシングの効果を調べた59本の論文(212通りのブラッシング条件)をまとめて解析しました。その結果、磨く時間ごとの歯垢の減少率は次のようになっていました。

  • 1分間のブラッシング … 歯垢スコアの減少は平均27%
  • 2分間のブラッシング … 歯垢スコアの減少は平均41%

1分増やすだけで、落ちる量が1.5倍ほどに変わっているのがわかります(Slot DE ほか、Int J Dent Hyg 10(3) 2012年 187-197ページ/PubMed)。

もう一つ、47人を対象に30秒から180秒まで時間を変えてブラッシングしてもらい、歯垢の落ち方を比べた研究があります。この試験では、180秒磨いた場合は30秒の場合より55%多く、120秒(2分)磨いた場合は45秒の場合より26%多く歯垢が落ちていました(Creeth JE ほか、J Dent Hyg 83(3) 2009年 111-116ページ/PubMed)。

この論文の背景説明では「歯科の専門家は最低2分を勧めているが、一般の人の平均的な磨き時間は45秒に近い」と述べられています。つまり多くの方は、ご自身が思っているよりずっと短い時間で終えている可能性が高い、ということです。

きちんと磨いても「半分近くは残る」という現実

ここは都合の良い話ではないのですが、隠さずにお伝えします。歯ブラシだけでは、どれだけ丁寧に磨いても歯垢は落ちきりません。先ほどの解析でも、1回のブラッシングで落ちる歯垢は平均42%程度にとどまっていました。

さらに示唆的なのが、94人に1分間ブラッシングしてもらい、歯の面ごとに落ち具合を測った研究です。歯垢の減少は全体平均で39%でしたが、面によって大きな差がありました。

  • 頬側(唇やほほに面した外側) … 69%まで落ちた
  • 舌側(舌やあごに面した内側) … 21%しか落ちなかった

同じ人が同じ1分間磨いても、内側は外側の3分の1以下しか落ちていなかったことになります(Van der Weijden GA ほか、J Clin Periodontol 25(5) 1998年 413-416ページ/PubMed)。

鏡で見えて、手も動かしやすい外側ばかりに時間を使ってしまうのは、私もよくやってしまいます。

磨き残しが集中する4つの場所

研究結果と日々の診療で見る「赤染め」(染め出し)の結果を合わせると、磨き残しが溜まりやすい場所はほぼ決まっています。

  1. 下の奥歯の内側(舌側)…舌が邪魔になり、歯ブラシが寝てしまいやすい場所です。歯石もここに最もよく付きます。
  2. 歯と歯の間…歯ブラシの毛先が構造的に届きません。後述する歯間清掃が必要な場所です。
  3. 歯と歯ぐきの境目…毛先を当てる角度が少しずれるだけで、汚れが帯状に残ります。歯周病はここから始まります。
  4. いちばん奥の歯のうしろ側…口を大きく開けるほど頬が突っ張って入りにくくなります。少し口を閉じ気味にすると届きやすくなります。

「2分磨けているつもり」を防ぐ3つのコツ

1. 磨く順番を決めてしまう

時間を意識するより、「毎回同じルートを通る」ほうが確実です。上下左右を前歯と奥歯で分け、外側・内側・噛む面をそれぞれ通る順路を決めてしまいましょう。順番が決まっていれば、途中で考え事をしても手が勝手に同じ経路をたどります。逆に順番がないと、毎回同じ場所だけを何度も磨き、同じ場所を毎回飛ばすことになります。

2. 時間は「測る」——体感はあてになりません

体感時間は驚くほど短く出ます。スマートフォンのタイマー、砂時計、2分前後の曲を1曲流すなど、外から時間を示してくれるものを一つ用意してください。タイマーつきの電動歯ブラシを使うのも合理的な方法です。

3. 力を入れすぎない

歯磨きにかける力は、150gほどが理想と言われています。これ以上力がかかると長期的に歯茎を傷つけ、歯肉が下がり、知覚過敏などが生じる可能性があります。

しかし、先ほどの94人の研究では、ブラッシング時の平均的な力は約330gでした。そして力と落ち具合の関係を解析したところ、一定の強さまでは力を強めると落ちやすくなるものの、約407gを超えると逆に落ちにくくなることが示されています。強く握るほど毛先が寝てしまい、歯と歯ぐきの境目に毛先が入らなくなるためです。

同じ研究では、力の強さと歯垢除去率の間に全体としての相関は認められませんでした。力任せに磨いても落ちる量は増えず、歯ぐきが下がるリスクだけが残ります。歯ブラシは鉛筆のように持ち、毛先が広がらない程度の力で、小刻みに動かしてください。

歯磨き粉は「汚れを落とすため」のものではありません

意外に思われるかもしれませんが、先ほどのCreethらの研究では、60秒のブラッシングにおいて歯磨き粉を使っても歯垢の除去量は増えませんでした。歯垢を物理的にはがしているのは、あくまで毛先です。

では歯磨き粉は不要かというと、まったく違います。歯磨き粉の主役はフッ素を歯に届けることであり、虫歯予防の効果はここから生まれます。「汚れを落とすのは毛先と時間」「歯を強くするのはフッ素」と役割を分けて考えると、磨き方の優先順位がはっきりします。フッ素の活かし方についてはフッ素洗口の記事でも詳しく解説しています。

回数は1日何回がよい?日本人の実態とエビデンス

厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査によると、1歳以上で毎日歯を磨く人の割合は97.4%、毎日2回以上磨く人は79.2%でした。内訳は1日1回が18.2%、2回が50.8%、3回以上が28.4%です。2回以上の割合は平成28年(2016年)の77.0%からさらに増えています(令和4年歯科疾患実態調査結果の概要)。

回数と虫歯の関係については、33件の研究をまとめたメタ解析があります。磨く回数が少ない人は、多い人に比べて虫歯の発生するオッズ比が1.50(95%信頼区間 1.34〜1.69)と高く、その差は永久歯(1.39)より乳歯(1.75)で大きく出ていました(Kumar S ほか、J Dent Res 95(11) 2016年 1230-1236ページ/PubMed)。

ただしこの論文の著者自身が、冒頭で「1日2回という頻度は社会的な規範になっているが、その根拠となるエビデンスは弱い」と率直に述べています。「2回」という数字そのものに強い科学的裏づけがあるというより、回数が少ない人ほど虫歯が多いという傾向がはっきりしている、と理解するのが正確です。夜間は唾液の分泌が減って細菌が増えやすいため、最低限、就寝前の1回を最も丁寧に行うことをおすすめしています。

歯ブラシだけでは歯と歯の間に届きません

何分磨いても、歯ブラシの毛先が構造的に入らない場所があります。歯と歯の間です。ここにはデンタルフロスや歯間ブラシが必要になります。

成人3,929人が参加した35件のランダム化比較試験をまとめたコクラン・レビューでは、歯磨きに加えてフロスや歯間ブラシを使うと、歯磨きだけの場合より歯肉炎や歯垢が減る可能性が示されています。歯間ブラシはフロスより効果が高い可能性があるとも報告されました。ただし著者らは、エビデンスの確実性は「低い」から「非常に低い」であり、効果の大きさも臨床的に重要とは言えないかもしれないと明記しています(Worthington HV ほか、Cochrane Database Syst Rev 2019年 CD012018/PubMed)。

研究の確実性は高くありませんが、歯ブラシが届かない面が存在することは事実です。先ほどの令和4年歯科疾患実態調査でも、フロスや歯間ブラシで歯と歯の間を清掃している人は全体の50.9%(男性39.9%、女性60.1%)にとどまっていました。サイズの選び方や使い方は歯間ブラシの正しい使い方の記事でまとめています。

自分の磨き残しは「染め出し」で見えるようになります

ここまで読んで、「では自分はどこを磨けていないのか」と思われたのではないでしょうか。歯垢は歯と同じ白っぽい色をしているため、鏡を見ても自分では判断できません。

そこで当院では、歯垢を赤く染める「赤染め」を使い、磨き残しの場所をご自身の目で確認していただいています。当院の予防歯科プログラムでは磨き残し20%以下を目標に、その方の歯並びや苦手な部位に合わせてブラッシングの指導を行います。歯ブラシの角度を数度変えるだけで落ちるようになる部位も多く、時間を延ばすより効果が出ることは珍しくありません。

よくある質問

Q. 長く磨けば磨くほど良いのでしょうか?
A. 時間を延ばすほど落ちる量は増えますが、増え方はしだいに頭打ちになります。紹介した研究でも、長い時間ほど除去率は最大値に近づいていく傾向が示されていました。10分磨くより、2〜3分を正しい順番と適切な力で行い、歯間清掃を足すほうがはるかに効率的です。長時間ゴシゴシ磨き続けることは、歯ぐきが下がる原因にもなります。

Q. 電動歯ブラシなら短い時間で済みますか?
A. 多くの電動歯ブラシには2分のタイマーが付いており、それが目安になります。短時間で済ませてよいという根拠はありませんので、タイマーが鳴るまで、部位を移動しながら当て続けてください。押し付けずに軽く添えるのがコツです。

Q. 忙しくて毎回2分もかけられません。
A. すべての回を2分にする必要はありません。朝や昼は短くても構わないので、就寝前の1回だけは時間をかけて、歯間清掃も一緒に行う——という配分をおすすめします。回数より、1日1回確実に汚れをリセットできているかどうかが重要です。

Q. 強く磨いたほうが汚れは落ちますか?
A. 落ちません。研究では、力の強さと歯垢除去率に全体としての相関は認められず、一定以上の力ではかえって除去率が下がっていました。強すぎるブラッシングは歯ぐきが下がる原因にもなります。歯ぐきが下がってきた方は歯肉退縮の記事もご覧ください。

Q. しっかり磨いているのに歯ぐきから血が出ます。
A. 出血は多くの場合、磨きすぎではなく歯ぐきに炎症がある合図です。自己判断で磨くのをやめず、歯科医院でご相談ください。歯石が付いている場合は、ご自身のブラッシングだけでは改善しません。

まとめ

  • ブラッシング時間の目安は1回2分以上。1分では歯垢の減少は平均27%、2分で41%と差が出ます。
  • ただし2分磨いても落ちるのは半分程度。とくに下の奥歯の内側は落ちにくいことがわかっています。
  • 時間より先に磨く順番を固定し、タイマーで時間を外から測るのが確実です。
  • 力の入れすぎは効果を上げず、歯ぐきを傷めます。毛先が広がらない強さで。
  • 歯と歯の間には毛先が届きません。フロス・歯間ブラシの併用を。
  • 自分の磨き残しは染め出しではじめて見えます。定期的なチェックを受けましょう。

「毎日ちゃんと磨いているのに虫歯や歯周病になる」という方は、時間が足りないのではなく、当たっていない場所がある場合がほとんどです。どこが磨けていないかは、染め出しとプロの目で確認するのが近道です。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

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