2026年09月13日
【フロスとどう違う?】歯間ブラシの正しい使い方とサイズの選び方【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。「毎日きちんと歯を磨いているのに、歯と歯の間だけ虫歯や歯ぐきの腫れをくり返す」。そんなご経験はありませんか。実は、歯ブラシの毛先は歯の表面や噛み合わせには届いても、歯と歯の間(歯間部)には十分に入り込めません。そこで役立つのが歯間ブラシです。この記事では、歯間ブラシとデンタルフロスの違い、自分に合ったサイズの選び方、正しい使い方、そして「実際どのくらい効果があるのか」を、研究の確からしさも含めて歯科医師の視点で解説します。
目次
歯ブラシだけでは歯間部の汚れは落としきれない
厚生労働省の「e-ヘルスネット」でも、歯ブラシによる清掃は歯の表裏や噛み合わせには非常に有効だが、歯と歯の間の清掃には十分ではないと明記されています。歯間部は歯ブラシの毛先が届きにくく、プラーク(歯垢)が残りやすい場所です。
このプラークは、単なる食べかすではなく細菌のかたまりです。当院の予防歯科でもお伝えしていますが、1グラムのプラークの中には1000億個以上の細菌が隠れているとされます。歯間部にこの細菌のかたまりが残り続けると、歯間からの虫歯(隣接面う蝕)や歯ぐきの炎症(歯肉炎・歯周病)の入り口になります。だからこそ、歯ブラシに歯間清掃用具を「プラスする」ことが大切なのです。
歯間ブラシとデンタルフロスの違い・使い分け
歯間清掃用具には大きく「デンタルフロス(糸ようじ)」と「歯間ブラシ」があります。どちらが優れているというより、歯と歯のすき間の大きさで使い分けるのが基本です。e-ヘルスネットでも次のように整理されています。
- デンタルフロス…すき間が小さい歯間部に有効。歯と歯がぴったり接している若い方や、前歯などに向きます。
- 歯間ブラシ…すき間がある歯間部に便利。加齢や歯周病で歯ぐきが下がり、三角形のすき間ができた部分や、ブリッジの下などに向きます。
目安として、フロスがスッと入らないほど狭い場所に無理やり歯間ブラシを入れると、歯ぐきを傷つけてしまいます。逆に、すき間が広い場所をフロスだけで済ませると、汚れを取りきれないことがあります。すき間が広い奥歯は歯間ブラシ、狭い前歯はフロス、というように部位で使い分けるのが理想です。どちらを使うべきか迷う場合は、歯科医院で自分の歯間のタイプを確認してもらうと確実です。
歯間ブラシのサイズの選び方
歯間ブラシ選びで最も大切なのがサイズです。市販の歯間ブラシは、細いものから順にSSS・SS・S・M・L・LLといった表記で分かれています(メーカーによって4S〜LLなど呼び方は異なります)。ここで守ってほしい大原則がひとつあります。
それは、「歯のすき間より少し小さめ」のサイズを選ぶということです。これはe-ヘルスネットでも推奨されている選び方です。大きすぎるサイズを無理に押し込むと、歯ぐきが下がったり、歯の表面(エナメル質やその下の象牙質)をすり減らしてしまうことがあります。「きつくて入らない」と感じたら、それはサイズが大きいサインです。ワンサイズ下げてください。
また、口の中でもすき間の大きさは場所によって違います。前歯は細いサイズ、奥歯は太いサイズ、というように数種類を使い分けている方も珍しくありません。最初はどのサイズが合うか分かりにくいので、歯科医院で染め出しやレントゲン、歯周ポケット検査をしたうえで、部位ごとに合うサイズを選んでもらうのがいちばんの近道です。当院の予防歯科では、赤く染め出して磨き残しを確認しながら、その方に合った清掃用具とサイズをご案内しています。
歯間ブラシの正しい使い方
サイズが合っていても、使い方が乱暴だと歯ぐきを傷つけてしまいます。e-ヘルスネットの説明も踏まえた基本の手順は次のとおりです。
- 鏡を見ながら、歯の表側(頬側)から、歯と歯の間にゆっくり優しく差し込みます。急に力を入れて突き刺さないことが大切です。
- 歯ぐきを傷つけないよう、歯の側面(歯面)に沿わせるように、数回往復運動させて汚れをかき出します。
- 少し角度を変えながら動かすと、清掃効果が高まります。手前の歯と奥の歯、両方の面をなでるイメージです。
- 奥歯は裏側(舌側)からも入れられると、より多くの面を清掃できます。
- 使い終わったら水でよく洗い、風通しの良い場所で乾かします。毛先が広がったり、中心のワイヤーが曲がってきたら交換の合図です。
頻度は、1日1回、就寝前の歯みがきに合わせて行うのがおすすめです。就寝中は唾液が減り細菌が繁殖しやすいため、寝る前に歯間部までしっかり清掃しておくと効果的です。歯みがき粉を付ける必要は必ずしもなく、まずは歯間ブラシで物理的にプラークを取り除くことを優先しましょう。
歯間ブラシの効果ってどれくらい?

「本当に効果があるの?」という疑問に、研究の面からお答えします。歯科分野で信頼性が高いとされるコクラン・レビュー(複数の臨床試験を統合して評価する研究)は、2019年に歯間清掃用具の効果をまとめています(Worthingtonほか, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2019)。成人3929人が参加した35件のランダム化比較試験を分析した結果、歯ブラシに歯間ブラシやフロスを加えると、歯ブラシだけの場合より歯肉炎やプラークを減らせる可能性があると報告されています。さらに、歯間ブラシはフロスよりも効果的である可能性があるとも述べられています。
ただし、正直にお伝えすべき点もあります。このレビューでは、多くの研究の「エビデンスの確実性は低い〜非常に低い」と評価されており、効果の大きさが臨床的に大きいとは言い切れない、とも書かれています。過大に「これだけで完璧」と考えるのではなく、あくまで歯ブラシを補う手段として役立つ、という受け止め方が正確です。
歯間ブラシとフロスを直接比べた研究もあります。中等度〜重度の歯周炎の患者26人を対象に、片側をフロス、反対側を歯間ブラシで6週間ケアして比べた試験(Christouほか, Journal of Periodontology, 1998)では、歯間部のプラークスコアが歯間ブラシで3.09から2.15へ、フロスで3.10から2.47へと減り、歯間ブラシのほうが有意に多くプラークを除去したと報告されています。この結果は、歯ぐきが下がってすき間がある方には歯間ブラシが向く、という使い分けの根拠のひとつになっています。
歯間ブラシを使うときの注意点
- 無理に押し込まない…きつい場所に大きいサイズを入れると、歯ぐきや歯を傷つけます。入らないときはサイズを下げるか、その部位はフロスに切り替えます。
- 最初の出血に驚かない…歯ぐきに炎症があると、使い始めに軽く出血することがあります。多くは正しく続けるうちに落ち着きますが、痛みや出血が長引く場合は歯周病が進んでいる可能性があるため受診してください。
- 金属ワイヤーの向きに注意…ワイヤータイプは、被せ物やインプラント、矯正装置に当てるとキズや破損の原因になることがあります。心配な場合はゴム(シリコン)タイプや、歯科医院で合ったものを選びましょう。
- すき間がない人は使わない…歯と歯がぴったり閉じている部分に無理に通すのは逆効果です。その場合はフロスが適しています。
よくある質問

Q. 歯間ブラシとフロス、両方使ったほうがいいですか?
A. 部位によって使い分けるのがおすすめです。すき間が広い奥歯は歯間ブラシ、歯がぴったり接している前歯はフロス、というように分けると効率的です。すべての歯間を同じ道具でカバーしようとせず、自分の口に合わせて組み合わせてください。
Q. サイズが分かりません。どう選べばいいですか?
A. 「すき間より少し小さめ」が基本です。きつくて入りにくいと感じたらワンサイズ下げてください。口の中でも場所ごとにすき間の大きさは違うので、歯科医院で部位ごとに合うサイズを確認してもらうと失敗がありません。
Q. 毎日使うと歯ぐきが下がったりすり減ったりしませんか?
A. サイズが合っていて、優しく動かしていれば問題ありません。歯ぐきが下がる主な原因は、大きすぎるサイズや強すぎる力です。正しく使えば、むしろ歯ぐきの炎症を抑えて健康に保つ助けになります。
Q. どのくらいの頻度で交換すればいいですか?
A. 明確な日数の決まりはありませんが、毛先が広がったり中心のワイヤーが曲がってきたら交換の目安です。汚れを落とす力が落ち、歯や歯ぐきを傷つけやすくなるためです。
まとめ
歯間ブラシは、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間のプラークを取り除き、虫歯や歯周病の予防を助ける心強い道具です。ポイントは、(1)すき間の大きさでフロスと使い分ける、(2)「少し小さめ」のサイズを選ぶ、(3)表側から優しく、角度を変えながら数回往復させる、(4)1日1回就寝前に続ける、の4つです。研究上も、歯ブラシに歯間清掃を加えることは歯肉炎やプラークを減らす助けになると示されています(効果の確実性は今後の研究課題です)。自分に合ったサイズや使い方が分からないときは、自己流で続ける前に一度歯科医院で確認するのが、遠回りに見えていちばんの近道です。
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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
参考文献:
・厚生労働省 e-ヘルスネット「歯間部清掃(デンタルフロス・歯間ブラシ)」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-008.html
・Worthington HV ほか. Home use of interdental cleaning devices, in addition to toothbrushing, for preventing and controlling periodontal diseases and dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews 2019;4. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30968949/
・Christou V ほか. Comparison of different approaches of interdental oral hygiene: interdental brushes versus dental floss. Journal of Periodontology 1998;69(7):759-764. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9706852/
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭


