【いびき・日中の眠気】睡眠時無呼吸症候群のスリープスプリント(マウスピース)を歯医者が解説

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「家族から、いびきがうるさい・時々息が止まっていると言われた」「しっかり寝たはずなのに、日中どうしても眠くなる」「朝起きたときに頭が重い、口がカラカラに乾いている」——こうしたことが続いていませんか。

それは睡眠時無呼吸症候群かもしれません。そして意外に思われるかもしれませんが、この治療には歯科がかかわる場面があります。当院では、就寝時に装着する口腔内装置——スリープスプリントの製作に対応しています。今回は、この装置がどういうもので、どこまで効果が確かめられていて、始めるには何が必要なのかを、浅草・本所吾妻橋の歯科医師の立場から解説します。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠中に、のどの奥(気道)がふさがって呼吸が止まったり浅くなったりを繰り返す状態です。仰向けで眠ると舌の付け根が重力で落ち込み、空気の通り道が狭くなることが主な原因のひとつとされています。

本人は眠っているため気づきません。ご家族の指摘か、日中の強い眠気が最初のきっかけになることがほとんどです。そして決してまれな状態ではありません。世界16か国のデータをもとにした推計があります。30〜69歳のうち軽症から重症までを含めると約9億3,600万人、中等症以上に限っても約4億2,500万人が該当すると報告されています[1]。

重症度はAHI(無呼吸低呼吸指数)——1時間あたり何回、呼吸が止まったり浅くなったりしたか——という数値で判定されます。この数値は睡眠検査でしか出せません。ここが今回いちばん大切なポイントにつながります。

スリープスプリント(口腔内装置)の仕組み

スリープスプリントは、就寝時に上下の歯に装着するマウスピース型の装置です。下顎をやや前方に保った状態で固定することで、舌の付け根が落ち込むのを防ぎ、気道のスペースを確保します。

ここで、当院で歯ぎしり用にお作りしているナイトガードとの違いを整理しておきます。見た目は似ていますが、目的も設計もまったく別のものです。

  • ナイトガード(歯ぎしり用)… 歯にかかる力を分散させ、歯と顎関節を守るのが目的。上下どちらか片方の顎に装着します。
  • スリープスプリント(睡眠時無呼吸用)… 気道を広げるのが目的。上下の歯にまたがって装着し、下顎を前に出した位置で保ちます。

つまり「歯ぎしり用のマウスピースを作れば、いびきにも効く」わけではありません。ご相談の際は、どちらを目的にしているのかをお聞かせください。

【重要】まず医科での検査と診断が必要です

ここが、この治療でもっとも誤解の多いところです。「いびきが気になるので、歯科でマウスピースを作ってほしい」という流れでは、保険で作ることができません。

厚生労働省の定める算定要件では、睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置は、「睡眠時無呼吸症候群を診断し、治療を行っている医科の保険医療機関又は医科歯科併設の保険医療機関の担当科医師から、診療情報提供に基づく口腔内装置治療の依頼」があった場合に限り算定できるとされています[2]。

これは事務手続き上の決まりというより、医学的に理にかなった順番です。理由は3つあります。

  • 診断そのものが歯科ではできない… 睡眠中の呼吸状態を測る検査(終夜睡眠ポリグラフ検査や自宅での簡易検査)は医科で行うものです。
  • 重症度によって最適な治療が変わる… 後述のとおり、重い方には別の治療のほうが効果が大きいことがわかっています。
  • いびき=睡眠時無呼吸とは限らない… 鼻や扁桃の問題が主因のこともあり、その場合は耳鼻咽喉科での対応が先になります。

ですので、流れとしてはこうなります。

  1. 内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠専門外来などを受診し、睡眠検査を受ける
  2. 診断を受け、口腔内装置による治療が適していると判断される
  3. 担当の医師から診療情報提供書(紹介状)を発行してもらう
  4. それを持って歯科を受診し、型取りをして装置を製作
  5. 装着後、調整とフォローアップを継続

「どこで検査を受ければよいかわからない」という段階でも構いません。まずご相談いただければ、医科での検査が必要であることも含めてご案内します。

CPAPとどちらが良い? データで見た正直なところ

睡眠時無呼吸症候群の治療でよく知られているのが、鼻にマスクを装着して空気を送り込むCPAP(シーパップ)です。口腔内装置とどちらが優れているのか、歯科医師として都合の良いことだけを申し上げるつもりはありませんので、データをそのままお伝えします。

呼吸を止めない力は、CPAPのほうが上です

成人を対象に治療を比べた77件の研究をまとめた報告では、AHIの改善は口腔内装置が1時間あたり9.3回の減少、CPAPが25.4回の減少でした。2つを直接比べた研究でも、CPAPのほうが1時間あたり7.0回少ないという結果でした[3]。

中等症の方85人を12か月追いかけて比べた研究もあります。AHIの下がり方はCPAPが1時間あたり18.3回、口腔内装置が13.5回で、CPAPのほうがはっきり上回りました。この研究の結論も「中等症では CPAP が第一選択で、口腔内装置は良い代替となりうる」というものです[4]。

それでも口腔内装置に価値がある理由

では口腔内装置の出番はないのかというと、そうではありません。先ほどの77件の研究をまとめた報告は、「CPAPに耐えられない患者にとって口腔内装置は適切な治療であり、軽症ではCPAPに匹敵しうる」と結論づけています。軽症の方では、2つを直接比べた研究はまだないものの、日中の眠気の改善度は両者で同じくらいでした[3]。

そして見逃せないのが「実際に何時間つけて眠れるか」です。同じ研究に参加した方の装着時間を、機器で客観的に測った研究があります。12か月時点の装着時間は口腔内装置が1晩あたり6.9時間、CPAPが6.8時間とほぼ同じでした[5]。

治療の効果は「装置の力 × 実際に使った時間」で決まります。どれほど優れた治療でも、使えなければ効果はゼロです。マスクが合わない、旅行や出張が多い、電源のない場所で眠ることがある——そうした事情でCPAPが続かない方にとって、電源も音も不要な口腔内装置は現実的な選択肢になります。

始める前に知っておいていただきたい副作用

この装置には、事前に必ずお伝えしておくべき副作用があります。長期間使うと、噛み合わせが少しずつ変化します。

口腔内装置とCPAPを2年間使った方を比べた研究があります。口腔内装置の方では、前歯の噛み合わせの深さ(オーバーバイト)が平均1.2mm、上下の前歯の水平的な差(オーバージェット)が平均1.5mm減少していました。奥歯の噛み合っている点の数は、CPAPの方も含めて、どちらでも減っていました。著者らは「口腔内装置による治療は生涯にわたる治療と考えるべきであり、歯科的な副作用が起こるリスクがある。歯科睡眠医学に習熟した歯科医師による綿密なフォローアップが必要である」と述べています[6]。

このほか、使い始めの時期には、朝起きたときの顎のだるさ、噛み合わせの違和感、唾液が増える・口が乾く、歯の圧迫感といった症状が出ることがあります。多くは慣れとともに軽くなりますが、続くようであれば調整が必要です。

大切なのは、これらを承知したうえで、呼吸が止まることのリスクと天秤にかけて判断するということです。噛み合わせの変化は歯科医師が定期的に確認していれば早い段階で気づけますし、装置の設計や前方に出す量を調整することで負担を減らすこともできます。「作って終わり」ではなく、定期的に通っていただくことが前提の治療だとお考えください。

装置が作れないことがあります

スリープスプリントは、ご自身の歯を支えにして下顎を前に保つ装置です。そのため、お口の状態によっては製作できない、あるいは先に別の治療が必要になることがあります。

  • 残っている歯が少ない、支えになる歯がぐらついている… 装置を固定できず、歯に無理な力がかかります。
  • 進行した歯周病や大きな虫歯がある… 先にそちらの治療が必要です。
  • 顎関節に痛みや開けにくさがある… 下顎を前に出した状態で眠るため、症状が悪化するおそれがあります。
  • 鼻づまりが強い… 装置装着中は口で呼吸しにくくなるため、耳鼻咽喉科での治療が先になります。

これらはお口の中を実際に拝見し、レントゲンで確認したうえで判断します。紹介状をお持ちいただいた場合でも、歯やあごの状態によっては作れないとお伝えすることがありますので、あらかじめご了承ください。

よくある質問

よくある質問

Q. 保険は使えますか? 費用はどのくらいですか?
A. 医科の医師からの診療情報提供書があれば、保険が適用されます。ただし総額は、装置の種類のほか、型取り・咬み合わせの記録・装着・調整といった処置の組み合わせで変わります。正確な金額は、お口の状態を拝見したうえで治療計画とあわせてご説明しますので、診察時にお尋ねください。

Q. いびきをかくだけで、無呼吸はないと思うのですが作れますか?
A. ご自身の感覚だけでは、無呼吸があるかどうかは判断できません。いびきは気道が狭くなっているサインですので、まずは医科で検査を受けていただくことをおすすめします。検査の結果、治療が必要ないとわかればそれ自体が安心材料になります。

Q. CPAPを使っていますが、マスクが苦手です。切り替えられますか?
A. CPAPが続けられない方は、口腔内装置の良い適応とされています。ただし切り替えの判断は、現在CPAPを処方している医師とご相談ください。医師が装置による治療が適切と判断され、診療情報提供書をいただければ対応できます。自己判断でCPAPを中止されないようお願いします。

Q. 歯ぎしり用のマウスピースを持っています。これで代用できませんか?
A. できません。歯ぎしり用は片方の顎だけに装着して力を分散させるもので、下顎を前に保つ構造になっていません。気道を広げる働きは期待できませんので、代用は避けてください。

Q. 装置は毎晩つけないといけませんか?
A. 効果は装着している間だけです。つけなかった夜は、無呼吸がそのまま起こります。毎晩、眠っている時間ずっと装着していただくことが前提です。逆にいえば、それが続けられる装置であることが、この治療のいちばんの強みでもあります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群に対するスリープスプリントは、下顎を前方に保つことで気道を広げる装置です。呼吸を止めない力そのものはCPAPに及びませんが、実際に装着できる時間はCPAPと同等であり、CPAPが続けられない方や軽症の方にとっては現実的で有効な選択肢になります。

一方で、長期使用による噛み合わせの変化という副作用があり、定期的な歯科でのフォローアップが欠かせません。そして始めるには、必ず医科での検査・診断と診療情報提供書が必要です。この順番だけは、どうか覚えて帰ってください。

睡眠時無呼吸症候群は、日中の眠気だけの問題ではありません。放置すれば全身にも影響が及ぶ状態です[3]。ご家族にいびきや呼吸の停止を指摘されたことがある方は、どうか様子見で終わらせないでください。当院でも、検査の受け方からご相談をお受けしています。

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篠塚歯科医院では、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保し、診療室はすべて個室にしております。周囲を気にせずご相談いただけますので、睡眠中のいびきや呼吸でお困りのことがあれば、お気軽にご連絡ください。

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. Benjafield AV ほか. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019;7(8):687-698. PubMed
  2. 厚生労働省保険局医療課医療指導監査室「保険診療確認事項リスト(歯科)令和7年度改訂版」(I017-1-2 睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置の項) 資料を開く
  3. Sharples LD ほか. Meta-analysis of randomised controlled trials of oral mandibular advancement devices and continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnoea-hypopnoea. Sleep Med Rev. 2016;27:108-124. PubMed
  4. de Vries GE ほか. Clinical- and Cost-Effectiveness of a Mandibular Advancement Device Versus Continuous Positive Airway Pressure in Moderate Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2019;15(10):1477-1485. PubMed
  5. de Vries GE ほか. Long-Term Objective Adherence to Mandibular Advancement Device Therapy Versus Continuous Positive Airway Pressure in Patients With Moderate Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2019;15(11):1655-1663. PubMed
  6. Doff MH ほか. Long-term oral appliance therapy in obstructive sleep apnea syndrome: a controlled study on dental side effects. Clin Oral Investig. 2013;17(2):475-482. PubMed

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