【また噛んだ…】頬の内側をよく噛む原因と、くり返さないための対策・受診の目安【歯医者が解説】

頬の内側を噛む原因を説明する歯科医師と歯のキャラクターのイラスト

こんにちは、篠塚歯科医院です。

食事中に「ガリッ」と頬の内側を噛んで、思わず手が止まる。そんな経験は、多くの方にあると思います。

「最近、同じところばかり噛む」「噛んだあとが口内炎になって、なかなか治らない」と、心配になることもありますよね。

この記事では、ほっぺの内側をよく噛む原因と、噛んだ傷の治り方・家でのケア、歯科に相談したほうがよい目安をまとめました。

この記事のポイント

  • 噛んだ傷の多くは、10日ほどで自然に治ります。治るまでは、反対側でゆっくり噛みましょう。
  • 何度も同じ所を噛むときは、噛み合わせや被せ物の形、親知らず、歯ぎしり、癖などが隠れていることがあります。
  • 2週間たっても治らない傷や、しこりのある傷は、痛くなくても歯科を受診しましょう。

口の中を噛むのは、よくあること?

「こんなに口の中を噛むのは、自分だけ?」と思う方もいるかもしれません。でも、頬を噛むのは、とても身近なトラブルです。

ドイツの全国調査では、35〜44歳の約10人に1人に、唇や頬を噛んだあとが見られました[1]。

口の中にできる傷も、頬の内側がいちばん多いといわれています[2]。

頬が噛まれやすいのは、食べ物を噛むたびに、頬と舌が歯のすぐそばで動いているからです。

頬の筋肉は、食べ物を歯の上に戻しながら、頬そのものを歯から離す役目もしています。

顔の神経がまひした人を調べた研究があります。顔の動きが戻ってきても、頬を噛みやすいと感じる人が多くいました[3]。

頬と舌と歯の動きが、ほんの少しずれる。それだけで「ガリッ」が起こります。たまに噛むくらいなら、あまり心配はいりません。

頬の内側をよく噛む7つの原因

「最近、よく噛むな」と感じたら、原因を一つずつふり返ってみましょう。

たまに噛むだけなのか、同じ所を何度も噛むのかで、考えられる原因が変わります。

頬の内側を噛む主な原因を4つのカードにまとめた図。一時的な原因、歯と噛み合わせ、歯ぎしりや癖、年齢と入れ歯

1. 疲れ・むくみ・早食い

疲れているときや、考えごとをしながら食べているときは、頬や舌の動きと噛む動きがずれやすくなります。

寝不足や体調で頬の内側が少しむくむと、歯の間にはさまりやすくなるとも考えられています。

急いで食べると、頬をよける動きが間に合いません。思い当たる日が続いたら、まずはひと口を小さく、ゆっくり噛むことから始めましょう。

2. 奥歯の噛み合わせ

ふつう、上の奥歯は、下の奥歯より少し外側にかぶさるように噛み合っています。

このかぶさりが、頬を外へよける「防波堤」の役目をしています。

かぶさりが浅い人や、上下の奥歯が逆に噛み合っている人は、頬が歯の間に入りこみやすくなります。上下が逆の噛み合わせは、交叉咬合(こうさこうごう)といいます。

歯並びが原因のときは、いつも同じ側の、同じあたりを噛むことが多いです。

3. 被せ物・詰め物・インプラントの形

「新しい被せ物を入れてから、頬を噛むようになった」という声は、よく聞かれます。

新しい歯が前の歯より外側にふくらんでいたり、角が少しとがっていたりすると、頬に当たりやすくなります。

80歳以上でインプラントの歯を入れた人の調査では、頬や唇を噛むことが、よくある困りごとのひとつでした[4]。

数日で慣れることもありますが、続くときは形の調整で楽になることが多いです。遠慮なく相談してください。

4. 外側に傾いた上の親知らず

上の親知らずは、頬のほうへ傾いて生えてくることがあります。

いちばん奥で頬の内側に当たり、口を開け閉めするたびにこすれてしまいます。

当院の親知らずの抜歯のページでも、「奥の歯茎や頬を咬んでしまう」をよくあるお悩みとして紹介しています。

いちばん奥の頬に、いつも傷ができる方は、一度見てもらいましょう。

5. 歯ぎしり・食いしばり

寝ている間や、何かに集中しているときの食いしばりで、頬が歯に強く押しつけられることがあります。

朝起きたら頬の内側に傷がある、という方は、寝ている間の歯ぎしりや食いしばりを疑ってみましょう。

高齢の方を調べた研究では、食いしばりや歯ぎしりのある人に、頬の内側の白い線が多く見られました[5]。

歯ぎしり・食いしばりの対策は、ナイトガードの記事でもくわしく紹介しています。

6. ストレスと関係する「噛む癖」

気づくと頬の内側を歯でかじっている、皮をはがしてしまう、という方もいます。これは、くせになりやすい行動のひとつです。

アメリカで大学生約4,300人を調べた調査があります。爪を噛むなどの「体をいじる癖」のうち、いちばん多かったのが頬を噛む癖でした[6]。

こうした癖のある人は、不安や気分の落ちこみを感じている割合が高い傾向もありました[7]。

ただ、癖があるから心の病気、というわけではありません。手持ちぶさたなときに、なんとなく出るという人も多いです。

7. 年齢による筋力の低下と入れ歯

年齢とともに、頬や舌の筋肉の力は少しずつ弱まります。

舌の力を調べた日本の研究でも、70代の力は、若い世代より弱くなっていました[8]。

頬や舌の動きがゆるやかになると、食べ物を歯の上にのせる動きがずれて、頬が歯の間に入りやすくなります。

入れ歯の方は、歯ぐきがやせたり、入れ歯がすり減ったりして合わなくなると、頬を噛みやすくなります。

合わない入れ歯は、そのままにせず調整しましょう。噛む力や飲みこむ力の衰えが気になる方は、オーラルフレイルの記事もご覧ください。

噛んだ傷・口内炎の治り方と、家でのケア

「噛んだところが白っぽくなって、しみる…」。噛んだ傷は、数日すると白い膜におおわれた口内炎のようになります。

でも、安心してください。噛んだ傷は、原因がなくなれば3日ほどで痛みがおさまることが多いです[2]。

そして多くは、10日ほどで治ります[2]。

口内炎(アフタ)も、何もしなくても1〜2週間で治るとされています[9]。

治りが遅れるのは、同じところをまた噛んだり、刺激が加わり続けたりしたときです[2]。

治るまでのケア

治るまでの間は、次のことに気をつけましょう。

  • 反対側で、ゆっくり噛む…噛んだところは腫れて盛り上がり、また当たりやすくなっています。
  • しみる物を控える…辛い物・すっぱい物・熱い物・塩辛い物は、傷にしみやすいです[9]。
  • かたい物は小さく…せんべい、ナッツ、フランスパンなどは、小さくしてから口に入れましょう。
  • 歯みがきはやさしく…傷のまわりは、やわらかい歯ブラシで軽くみがき、口の中を清潔に保ちます。
  • 口をうるおす…こまめに水を飲み、口の乾燥を防ぎましょう。
  • 傷をさわらない…舌や指でさわったり、皮をはがしたりすると、治りが遅れます。

痛みが強いときは、薬局で口内炎用の塗り薬や貼り薬を相談するのもよいでしょう。

薬を使っても長引くときは、あとの「受診の目安」を確かめてください。

頬の内側の白い線は、病気?

鏡で頬の内側を見ると、奥歯の噛み合わせの高さに、横に走る白い線が見えることがあります。

これは、頬が歯に押されて、粘膜が少し厚くなったものです。多くは病気ではありません。

大学生を調べた研究では、およそ半数にこの白い線がありました[10]。めずらしいものではないので、あわてなくて大丈夫です。

ただし、白い部分が厚く盛り上がっている、こすっても取れない白い所がある、といったときは別です。次の章を読んでください。

白い線と食いしばりとの関係は、舌のふちのギザギザの記事でくわしく紹介しています。

こんな傷は歯科へ:受診の目安

「この口内炎、なかなか治らないけど大丈夫かな」。そんなときに確かめてほしいポイントです。

くり返しになりますが、噛んだ傷のほとんどは心配いりません。ただ、次のようなときは、痛みがなくても歯科を受診しましょう。

歯科の受診を考えたいサインをまとめたチェックリストの図。2週間治らない、しこりがある、こすっても取れない白や赤、同じ所を何度も噛む
  • 2週間たっても治らない…2週間しても治らない口内炎は、注意が必要とされています[11]。
  • 痛みが少ないのに、治らない…口のがんは、初期にはほとんど痛みや出血がありません[11]。
  • しこりがある・まわりが硬い…口の中に硬いしこりができることもあります[11]。指でふれて硬い傷は、早めに見てもらいましょう。
  • こすっても取れない白い所や、赤い所がある…白板症(はくばんしょう)など、くわしい検査が必要な病気のことがあります[9]。
  • 同じ所を何度も噛む・傷が大きくなる…歯や被せ物、入れ歯が当たり続けているかもしれません。

長く続く刺激は、早めに取りのぞく

とがった歯や合わない入れ歯が、同じところに何か月も当たり続ける。こうした刺激は、口のがんと関係があると報告されています[12]。

ただし、刺激だけでがんになるというより、たばこやお酒などとならんで、後押しする要因と考えられています[12]。

日本口腔外科学会も、むし歯や合わない入れ歯による慢性の刺激を、原因として疑われるものに挙げています[13]。

ときどき、うっかり噛む傷とは別のものです。必要以上にこわがらず、「当たり続ける原因をなくす」ことを大切にしましょう。

当院で拝見し、くわしい検査が必要なときは、口腔外科などの専門の医療機関をご紹介します。

歯科でできることと、噛む癖を減らす工夫

「何度も噛むのは、もう仕方ない」とあきらめていませんか。原因がわかれば、歯科でできることはいろいろあります。

被せ物・詰め物の形を整える

頬に当たっている角を丸くみがいたり、外側へのふくらみを小さくしたりします。形が合わないときは、作り直しを考えることもあります。

噛み合わせの調整

一部の歯だけが強く当たっているときは、噛み合わせを少し整えることで、頬が入りこみにくくなることがあります。

マウスピース(ナイトガード)

寝ている間の歯ぎしりや食いしばりで頬を噛む方には、マウスピースを使う方法があります。

歯の表面をおおうので、寝ている間に頬が歯の間にはさまりにくくなることが期待できます。

親知らずの抜歯

頬に当たる上の親知らずは、抜歯を考えます。抜いたあとのケアは、抜歯後のケアの記事をご覧ください。

入れ歯の調整・矯正

合わなくなった入れ歯は、調整や作り直しで噛み合わせを整えます。

歯並びそのものが原因のときは、矯正歯科で噛み合わせを整える方法もあります。

癖を減らす練習

癖で噛んでしまう方には、「気づく練習」と「代わりの動き」を組み合わせる方法があります。習慣逆転法(しゅうかんぎゃくてんほう)と呼ばれるやり方です[14]。

  1. 気づく…どんなときに噛むか、メモをつけてみます。テレビ、パソコン、考えごとの最中など、場面が見えてきます。
  2. 代わりの動きをする…噛みたくなったら、唇を軽く閉じて上下の歯を離し、舌の先を上あごにそっと当てます。そのまま1分ほど保ちましょう。
  3. 思い出すきっかけを作る…よく噛む場所に付せんを貼り、目に入るたびに思い出すようにします。

頬や唇を噛む癖を含む「体をいじる癖」のある、約330人で比べた研究があります[14]。

気づく練習や代わりの動きなど、いくつかの方法を手引きで練習した人は、何もしなかった人より癖が減っていました[14]。

一人で続けるのがつらいときや、気持ちの落ちこみが強いときは、心療内科などで相談するのもひとつの方法です。

よくある質問

よくある質問

Q. 頬を噛んで血が出ました。どうすればいいですか?
A. 清潔なガーゼやハンカチで、傷を5〜10分ほど押さえてください。口の中の傷は、押さえていると止まることがほとんどです。それでも止まらないときや、傷が深いときは受診しましょう。

Q. 噛んで腫れたところを、また噛んでしまいます。
A. 腫れて盛り上がった所は、歯に当たりやすくなっています。腫れが引くまでは、反対側でゆっくり噛みましょう。腫れが引かず、こぶのように残るときは歯科で見てもらってください。

Q. 新しい被せ物を入れてから、頬を噛むようになりました。
A. 数日で慣れることもありますが、同じ所を何度も噛むなら、形の調整で楽になることが多いです。がまんせず、治療を受けた歯科医院に相談しましょう。

Q. 子どもがよく頬を噛みます。大丈夫ですか?
A. 歯の生え変わりや、奥歯が生えてくる時期は、噛み合わせが変わって頬を噛みやすくなります。多くは一時的ですが、同じ所に傷が続くときは見せてください。歯科の麻酔のあとは、しびれで頬や唇を噛みやすいので、特に気をつけましょう。

まとめ

頬の内側を噛むのは、だれにでもあるトラブルです。噛んだ傷の多くは、10日ほどで自然に治ります。

  • たまに噛む…疲れや早食いが原因のことが多いです。ひと口を小さく、ゆっくり噛みましょう。
  • 何度も同じ所を噛む…噛み合わせ、被せ物の形、親知らず、歯ぎしり、入れ歯などを、歯科で確かめましょう。
  • 癖で噛む…「気づく」と「代わりの動き」の練習が役立ちます。
  • 2週間治らない傷…痛くなくても、早めに歯科を受診しましょう。

「また噛んだ…」が続くときは、ひとりで悩まず、気軽にご相談ください。

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親知らずについては、親知らずの抜歯のページをご覧ください。

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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. Reichart PA. Oral mucosal lesions in a representative cross-sectional study of aging Germans. Community Dent Oral Epidemiol. 2000;28(5):390-398. PubMed
  2. Mortazavi H ほか. Diagnostic Features of Common Oral Ulcerative Lesions: An Updated Decision Tree. Int J Dent. 2016;2016:7278925. PubMed
  3. Miyanaga T ほか. Nasal obstruction and cheek biting as overlooked sequelae of facial nerve palsy: Findings from an exploratory cohort study. JPRAS Open. 2026;49:1-6. PubMed
  4. Engfors I ほか. Fixed implant-supported prostheses in elderly patients: a 5-year retrospective study of 133 edentulous patients older than 79 years. Clin Implant Dent Relat Res. 2004;6(4):190-198. PubMed
  5. Morita K ほか. Association between buccal mucosa ridging and oral or occlusal status among older people. Oral Dis. 2018;24(5):778-783. PubMed
  6. Houghton DC ほか. Body-focused repetitive behaviors: More prevalent than once thought? Psychiatry Res. 2018;270:389-393. PubMed
  7. Solley K ほか. Prevalence and correlates of clinically significant body-focused repetitive behaviors in a non-clinical sample. Compr Psychiatry. 2018;86:9-18. PubMed
  8. Utanohara Y ほか. Standard values of maximum tongue pressure taken using newly developed disposable tongue pressure measurement device. Dysphagia. 2008;23(3):286-290. PubMed
  9. 日本口腔外科学会「口腔粘膜疾患(口腔外科で扱う主な病気)」 ページを開く
  10. Mizutani S ほか. Factors related to the formation of buccal mucosa ridging in university students. Acta Odontol Scand. 2014;72(1):58-63. PubMed
  11. 国立がん研究センター「口腔がんの原因・症状について」 ページを開く
  12. Gupta AA ほか. Chronic mechanical irritation and oral squamous cell carcinoma: A systematic review and meta-analysis. Bosn J Basic Med Sci. 2021;21(6):647-658. PubMed
  13. 日本口腔外科学会「悪性腫瘍(口腔外科で扱う主な病気)」 ページを開く
  14. Moritz S ほか. Habit Reversal Training and Variants of Decoupling for Use in Body-Focused Repetitive Behaviors. A Randomized Controlled Trial. Cognit Ther Res. 2023;47(1):109-122. PubMed

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