【歯石は自分で取れる?】市販スケーラーの危険性を歯医者が解説!

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「鏡を見たら、下の前歯の裏に白っぽい塊がついている」「歯石取り用のスケーラーが100円ショップやネット通販で買えるみたいだけど、自分で取ってもいいの?」——そんな疑問をお持ちではありませんか。

結論からお伝えすると、ご自身で歯石を取ることはおすすめできません。今回は、浅草・本所吾妻橋エリアで「なるべく削らない予防歯科」に力を入れている当院が、その理由と、歯石との正しい付き合い方を解説します。

そもそも歯石とは? なぜ歯ブラシで落ちないのか

歯石とは、プラーク(細菌のかたまり)が石灰化して固まったものです。歯ブラシで落としきれなかったプラークに、唾液に含まれるカルシウムやリン酸が結びつき、硬い塊に変化します。

プラークの状態なら歯ブラシやデンタルフロスで落とせますが、いったん石灰化して歯石になってしまうと、歯ブラシでは絶対に落とせません。歯の表面にセメントのようにこびりついているためです。

歯石がつきやすいのは、唾液の出口に近い場所です。具体的には次の2か所を覚えておいてください。

  • 下の前歯の裏側……舌の下に唾液腺の出口があります
  • 上の奥歯の外側(頬側)……頬の内側に唾液腺の出口があります

「よく磨いているのにここだけ歯石がつく」という方が多いのは、この理由によるものです。歯石がつくこと自体は、必ずしも磨き方が悪いことだけを意味しません。

自分で取ろうとすると起きる4つのトラブル

①歯ぐきを傷つけ、炎症や感染を招く

スケーラーの先端は鋭利です。歯科医院では、歯の面に沿わせる角度と力加減を訓練したうえで使いますが、鏡越しに、しかも自分の口の中を見ながら正確に操作するのは至難の業です。少しでも角度を誤れば歯ぐきに突き刺さり、出血や炎症、そこからの感染を招きます。

②歯の表面に傷をつけ、かえって汚れが付きやすくなる

意外に見落とされがちなのがこちらです。金属の器具で歯の表面をこすれば、目に見えない細かい傷がつきます。ざらついた面にはプラークがより付きやすくなり、結果として歯石ができるスピードが速くなってしまいます。「きれいにしたつもりが、汚れやすい歯にしていた」——これでは本末転倒です。

歯科医院では、歯石を取ったあとに必ずポリッシング(研磨)を行い、表面をなめらかに整えます。この仕上げまで含めて「歯石除去」なのです。

③本当に取るべき歯石は、見えない場所にある

歯石には、歯ぐきから上に見えている「縁上歯石」と、歯ぐきの中に隠れている「縁下歯石」があります。

歯周病を進行させる主役は、見えない縁下歯石のほうです。黒っぽく硬く、歯の根にしっかり付着しているため、専門的な器具と技術がなければ除去できません。ご自身で取れるのは、せいぜい見えている部分の一部だけ。「取れた」と思っても、問題の本体は残ったままなのです。

④歯ぐきが下がってしまう

硬い器具で歯ぐきの際を繰り返しこすれば、歯ぐきは確実にダメージを受けます。歯周病学の専門誌に掲載された研究のまとめでも、器具の当て方や力の強さが、歯ぐきが下がること(歯肉退縮)と関連することが示されています(HeasmanほかJournal of Clinical Periodontology 第42巻 Suppl.16 S237-S255, 2015年)。

一度下がった歯ぐきは、自然には元に戻りません。露出した歯の根はしみやすく、虫歯にもなりやすい——歯石を取ったつもりが、より深刻な問題を招くことになります。

じつは、歯石除去は「医療行為」です

あまり知られていませんが、歯石を取ることは法律上、歯科医師と歯科衛生士が行う医療行為として位置づけられています。

歯科衛生士法(昭和23年法律第204号)第2条では、歯科衛生士の業務として「歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物及び沈着物を機械的操作によつて除去すること」と定められています(e-Gov法令検索「歯科衛生士法」)。この「付着物及び沈着物を機械的操作によって除去する」というのが、まさに歯石除去のことです。

つまり歯石除去は、専門の教育を受け、国家資格を持つ者が行うものとして制度上も設計されている処置だということです。市販の器具が手に入るからといって、安全にできることを意味するわけではありません。

では、歯石を放置してもいいのか?

もちろん、放置もいけません。歯石そのものが直接歯を溶かすわけではありませんが、ざらついた表面が新たなプラークの温床になり、歯ぐきの炎症を進める土台になります。

その先にあるのが歯周病です。全国の歯科医師2,345人が報告した8,003本の抜歯を集計した調査では、永久歯を抜く原因の第1位は歯周病で37.1%(第2位が虫歯29.2%、第3位が歯の破折17.8%)でした(公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書」2018年11月)。大人が歯を失う最大の理由は、虫歯ではなく歯周病なのです。

つまり、正解は「自分で取る」でも「放置する」でもなく、歯科医院で定期的に取ってもらう——これに尽きます。

プロに任せると、こう変わる

継続的な予防管理の効果は、長期の研究でも示されています。予防プログラムを30年間続けた成人を追跡した報告では、う蝕や歯周病の発生、歯を失う数がいずれも非常に少なく、30年間で新しくできた虫歯は平均1.2〜2.1本にとどまりました(AxelssonほかJournal of Clinical Periodontology 第31巻9号 749-757, 2004年)。

歯科医院での歯石除去は、次のような流れで行います。

  1. 検査……歯ぐきの状態を数値で測り、歯石がどこにどれだけ付いているかを把握します。
  2. 歯ぐきより上の歯石除去……超音波の器具で振動を与えて砕き、手用の器具で仕上げます。
  3. 必要に応じて歯ぐきの中の歯石除去……深い部分は麻酔を使い、数回に分けて丁寧に行います。
  4. ポリッシング……表面をなめらかに磨き、汚れが再付着しにくい状態に整えます。
  5. ブラッシング指導……染め出しで磨き残しを確認し、その方に合った磨き方をお伝えします。

当院ではさらに高濃度のフッ素塗布まで行い、次のご来院までの数か月を守ります。

歯石をつきにくくする5つの習慣

  • 歯と歯ぐきの境目に毛先を当てる……歯石はここから育ちます。力ではなく、当てる位置が重要です。
  • フロス・歯間ブラシを毎日使う……歯と歯の間は歯ブラシでは届きません。
  • つきやすい場所を意識する……下の前歯の裏、上の奥歯の外側。鏡で確認しながら磨きましょう。
  • だらだら食べを避ける……プラークが育つ時間を減らします。
  • 定期的にプロのクリーニングを受ける……3か月〜半年に1回が目安です。

プラークのうちに落とせれば、歯石にはなりません。歯石を取ることより、歯石にさせないことのほうが、ずっと簡単で確実です。

よくある質問

よくある質問

Q. 市販の歯石取り用スケーラーは、なぜ売られているのですか?
A. 購入できることと、安全に使えることは別の問題です。爪切りのように誰でも扱える道具ではなく、歯や歯ぐきを傷めるリスクのある器具とお考えください。すでにお持ちの場合も、ご自身の歯には使わないでください。

Q. 爪や糸ようじで引っかけて取るのはどうですか?
A. おすすめしません。爪では歯ぐきを傷つけますし、無理に力を加えると歯や詰め物を傷めることもあります。取れた部分があっても、根元は残ったままです。

Q. 歯石取りは痛いですか?
A. 歯ぐきより上の歯石は、ほとんど痛みなく取れます。歯ぐきの中の歯石を取る場合は、必要に応じて麻酔を使いますのでご安心ください。つらいときは、遠慮なくお伝えください。

Q. 歯石を取ったら歯がしみるようになりました。
A. 歯石で覆われていた歯の根が露出することで、一時的にしみることがあります。多くは数日〜数週間で落ち着きます。続く場合はご相談ください。しみ止めの処置やフッ素の塗布で対応できます。

Q. どのくらいの頻度で取ってもらえばよいですか?
A. 3か月〜半年に1回が一般的な目安ですが、歯石のつきやすさには個人差があります。歯ぐきの検査結果をもとに、その方に合った間隔をご提案します。

まとめ

歯石は、歯ブラシで落とせなくなったプラークが石灰化したものです。ご自身で取ろうとすると、歯ぐきを傷つける・歯の表面に傷をつけて汚れやすくする・見えない部分は取れない・歯ぐきが下がる、という4つのリスクがあります。歯石除去は法律上も、歯科医師と歯科衛生士が行う医療行為として位置づけられています。

とはいえ放置もいけません。永久歯を失う原因の第1位は歯周病(37.1%)であり、その土台をつくるのが歯石だからです。正解は「自分で取る」でも「放置する」でもなく、「定期的にプロに取ってもらいながら、歯石にさせない毎日を送る」ことです。

鏡を見て気になっている方は、どうぞそのままにして、一度ご相談にお越しください。取り方も、つきにくくする方法も、あわせてお伝えします。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

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