【歯茎が腫れた】原因は歯周病だけじゃない?考えられる病気と対処法【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。「歯茎がぷっくり腫れている」「歯磨きのときに血が出る」「押すとブヨブヨして痛い」。歯茎の腫れは、多くの方が一度は経験するトラブルです。
「歯周病かな」と思いがちですが、原因はそれだけではありません。歯の根の先にできた膿、親知らず、女性ホルモンの変化、飲んでいるお薬など、いろいろな理由で歯茎は腫れます。
原因によって、対処の仕方はまったく違います。この記事では、歯茎が腫れる主な原因と、ご自宅でできる応急のケア、受診の目安を、東京都墨田区東駒形の篠塚歯科医院がお伝えします。
この記事のポイント
- 歯茎が腫れる原因は、歯周病のほかに、根の先の膿、親知らず、ホルモンの変化、お薬、疲れなどがあります。
- 腫れを感じたときには、歯茎の中で炎症がかなり進んでいることが多いです。引いても、原因は残っています。
- 頬まで腫れる、熱がある、口が開けにくいときは急ぎます。膿を無理に出すのはやめましょう。
その歯茎の腫れ、放っておいて大丈夫?
歯茎の腫れや出血は、珍しいものではありません。国の調査では、歯茎から血が出る人は全体の4割あまりで、年齢が上がるほど増えていました[1]。
歯周病が進んでいるサインである「4mm以上の歯周ポケット」がある人も、全体のほぼ半数でした[1]。多くの方の歯茎で、炎症が起きているのです。
ここで気をつけたいことがあります。腫れや出血に気づく人は、実際にポケットが深くなっている人よりずっと少ない、という点です。
つまり、はっきり腫れを感じたときには、歯茎の中では炎症がかなり進んでいることが珍しくありません。
「腫れたけど、そのうち引いたから大丈夫」を繰り返すうちに、歯を支える骨がじわじわ溶けてしまうこともあります。一度の腫れでも、原因を確かめておきましょう。
歯茎が腫れる主な原因は6つ

歯茎の腫れには、いくつものパターンがあります。多いものから順に見ていきましょう。
1. 歯肉炎・歯周病(いちばん多い原因)
歯と歯茎の境目に歯垢(しこう。細菌のかたまり)や歯石がたまると、歯茎に炎症が起こります。
初期の「歯肉炎」では、歯茎が赤く腫れる、痛む、歯磨きで血が出る、といった症状が出ます。この段階なら、歯を支える骨はまだ溶けていません。正しいケアで元に戻せます。
放っておくと「歯周炎」に進みます。歯茎が下がってしみる、口臭が出る、重くなると膿が出て歯がグラグラしてきます。
2. 歯の根の先にたまった膿
虫歯が神経まで進んだり、神経を取った歯がまた感染したりすると、根の先に膿の袋ができることがあります。歯茎の一部だけが、ぷくっと腫れるのが特徴です。
ニキビのようなできものから膿が出て、いったん痛みが引くこともあります。でも、根の中の感染が消えたわけではありません。
一か所だけが腫れて痛むときは、このタイプを疑います。治療には、根の中を掃除する根管治療が必要です。
3. 親知らずのまわりの炎症
斜めや横向きに生えた親知らずは、歯茎が半分かぶさった形になりやすく、そのすき間に汚れがたまって炎症を起こします。
いちばん奥の歯茎が腫れて痛み、ひどくなると口が開けにくくなったり、頬まで腫れたりします。疲れたときに繰り返しやすいのも特徴です。
炎症を繰り返す親知らずは、抜歯を検討します。当院では、保険で2,000〜5,000円ほどが目安です。生え方によって変わります。
4. 女性ホルモンの変化
妊娠中や思春期など、女性ホルモンが大きく変わる時期は、歯茎が腫れやすくなります。
妊娠中はホルモンの影響で特定の歯周病菌が活発になり、「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。同じ歯磨きでも、この時期は歯茎が敏感に反応します。
つわりで歯磨きがつらい時期とも重なります。体調に合わせた、無理のないケアが大切です。
5. 飲んでいるお薬の影響
一部のお薬には、副作用として歯茎が盛り上がるように増える「薬物性歯肉増殖症」を起こすものがあります。
代表的なのは、てんかんのお薬(フェニトイン)、高血圧のお薬の一部(カルシウム拮抗薬)、臓器移植などで使う免疫抑制薬です。
歯垢が残っていると症状が出やすくなります。これらのお薬を飲んでいる方は、ていねいな歯磨きと定期的なクリーニングがとくに大切です。お薬を自己判断でやめるのは危険です。まず歯科と主治医にご相談ください。
6. 疲れ・ストレス・免疫の低下
睡眠不足や過労、強いストレスが続くと免疫の力が下がり、ふだんは抑えられている細菌の勢いが増して、急に腫れることがあります。
「疲れると決まって歯茎が腫れる」という方は、もともと軽い歯肉炎や親知らずの炎症を抱えていることが多いです。腫れが、体調のバロメーターになっているとも言えます。
こんな腫れは、早めに受診を

歯茎の腫れの多くは、歯科での対応が必要です。なかでも、次のようなときは早めに受診してください。
- 腫れが数日たっても引かない、どんどん強くなる
- 膿が出る、押すと膿のような味がする
- 頬やあごの下まで腫れてきた、口が開けにくい
- ズキズキする強い痛みや、熱がある
- 歯がグラグラしてきた、噛むと痛い
とくに、頬やのどのほうまで腫れが広がる、熱がある、飲み込みや息がしづらいときは、炎症が深いところに広がっているおそれがあります。
夜間や休日でも、我慢せずに歯科の救急対応や病院への相談を考えてください。
受診までの応急ケアと、やってはいけないこと
受診までの間に、ご自宅でできることもあります。ただし、どれも一時しのぎです。原因そのものを治すものではありません。
- やさしく清潔にする…腫れている部分も、やわらかい歯ブラシでそっと汚れを落とします。ぬるま湯や刺激の少ないうがい薬で、口の中を清潔に
- 軽く冷やす…ズキズキするときは、頬の外から冷たいタオルで軽く冷やします。氷を直接当てて冷やしすぎるのは避けましょう
- 体を休める…睡眠をしっかりとり、お酒、激しい運動、長風呂など、血行がよくなりすぎることは控えます
逆に避けたいのが、腫れた部分を指やつまようじで押して、膿を出そうとすることです。細菌を押し広げたり、傷つけて悪化させたりします。
痛い部分を強く磨く、鎮痛薬を患部に直接すり込む、といったことも歯茎を傷めます。市販の痛み止めは用法どおりに飲めば問題ありませんが、痛みが治まっても原因は残っています。必ず受診してください。
歯科医院での治療の流れ
歯科では、まず腫れの原因がどこにあるかを確かめます。歯周ポケットの検査と、根の先の膿や親知らずの向きを見るレントゲン撮影を行い、原因に応じて治療を進めます。
- 歯周病が原因…歯垢と歯石を取り除くクリーニングと、歯磨きの指導。進んでいる場合は、歯茎の手術も検討します
- 根の先の膿が原因…歯の中を掃除して消毒する根管治療
- 親知らずが原因…まず炎症を抑える処置をして、落ち着いてから必要に応じて抜歯
強い腫れや膿があるときは、抗菌薬や洗浄で症状を抑える処置を先に行うこともあります。腫れをその場でしのぐだけでなく、原因を根本から取り除くことが、再発を防ぐ近道です。
歯茎の腫れを繰り返さないために
歯茎の腫れの多くは、毎日のケアと定期的なメンテナンスで防げます。基本は、歯と歯茎の境目に歯垢をためないことです。
歯ブラシに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスで歯と歯の間も落としましょう。強く磨くのではなく、毛先を境目に当てて小刻みに動かすのがコツです。
自分では取りきれない歯石や、ポケットの中の汚れは、歯科でのクリーニングで定期的に取り除きます。当院のホームページで紹介している研究では、定期的に通っていた人は、不定期だった人より歯を失うリスクが半分ほどでした。
目安は3〜4か月に一度の定期検診です。腫れてから対処するのではなく、腫れる前に整えておくことが、歯茎を守るいちばんの近道です。
よくある質問

Q. 歯茎の腫れは、放っておけば自然に治りますか?
A. 疲れなどで一時的に腫れた場合は、体調が戻ると引くことがあります。でも多くは、歯垢や歯石、根の感染、親知らずといった原因が残ったままです。引いたからと安心せず、一度は原因を調べましょう。
Q. 歯茎から膿が出て、痛みが引きました。もう受診しなくて大丈夫ですか?
A. いいえ、受診をおすすめします。痛みが和らいだのは、たまった圧が抜けただけです。根の中やポケットの感染は治っていません。放っておくと、またたまって、まわりの骨を溶かしていくことがあります。
Q. 妊娠中に歯茎が腫れました。治療は受けられますか?
A. 受けられます。妊娠初期は応急処置にとどめ、本格的な治療は安定期に行うのが一般的です。妊娠中は歯茎が腫れやすい時期なので、まずはご相談ください。
Q. 市販の歯磨き粉で、歯茎の腫れは治せますか?
A. 炎症を抑える成分の入った歯磨き粉は、予防や症状をやわらげる助けにはなります。ただ、歯磨き粉だけで歯周病は治せません。歯石を取ることや、深いポケットの掃除には、歯科での治療が必要です。
まとめ
- 歯茎の腫れは、歯周病だけでなく、根の先の膿、親知らず、ホルモンの変化、お薬、体調の低下など、さまざまな原因で起こります。
- 原因によって治療はまったく違います。自己判断で放ったり、無理に膿を出そうとしたりしないでください。
- 腫れが引かない、膿が出る、頬まで腫れる、熱がある。こんなときは早めに受診してください。
- 毎日の歯磨きと、3〜4か月ごとのメンテナンスで、腫れる前に整えておきましょう。
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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- 厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査」結果の概要 資料のページを開く




