2025年10月23日
歯医者のシーラントって?子供の虫歯予防に効果的な理由と費用を解説

お子様の歯、特に生えたての永久歯を虫歯から守りたい、と願うのはすべての保護者様の共通の思いではないでしょうか。仕上げ磨きを頑張っていても、奥歯の溝は複雑で、どうしても磨き残しが出てしまいがちです。
そんな虫歯リスクの高い「奥歯の溝」を物理的にガードする予防処置が「シーラント」です。
この記事では、歯科医院で行うシーラントとは具体的にどのような治療なのか、なぜ子供の虫歯予防に効果的なのか、そして治療のメリット・デメリット、費用について詳しく解説します。
目次
シーラントが子供の虫歯予防に不可欠な理由

なぜ、特にお子様にシーラントが推奨されるのでしょうか。それには、生えたての歯が持つ特有の「弱点」が関係しています。
理由1:奥歯の「深い溝」は歯ブラシの毛先が届かない
生えたばかりの奥歯、特に「6歳臼歯」と呼ばれる最初の永久歯は、食べ物をすり潰すために非常に複雑で深い溝を持っています。
この溝は、大人の歯ブラシの毛先よりも細く深いため、どんなに丁寧に歯磨きをしても、奥底に詰まった汚れ(プラーク)を完全に取り除くことは非常に困難です。この磨き残しが、虫歯菌の温床となってしまうのです。
理由2:生えたての歯は「未熟」で酸に弱い
生えたばかりの永久歯は、一見すると完成しているように見えますが、実はまだ歯の質(石灰化)が未成熟です。大人の歯に比べて柔らかく、虫歯菌が出す「酸」に対する抵抗力が低い状態です。
そのため、磨き残しがあると、わずかな期間で虫歯が急速に進行してしまうリスクを抱えています。
シーラント治療の基本情報

シーラントは、これら2つの弱点を効果的にカバーする予防処置です。
シーラントとは?
シーラントは、虫歯になりやすい奥歯の溝を、フッ素を含むプラスチック樹脂(歯科用レジン)で物理的に埋めてしまう治療です。
溝を滑らかな状態にすることで、汚れが溜まる「場所」そのものをなくし、歯ブラシも当てやすくなるため、虫歯のリスクを劇的に減らすことができます。
更に当院で使用しているシーラントには「フッ素徐放性」と言った徐々にフッ素を歯に放出する性質があり、よりむし歯予防として効果的です!
治療に最適な時期は?(いつから?)
シーラントの予防効果を最大限に発揮するためには、虫歯になる前に処置を行うことが重要です。
- 乳歯の奥歯(3歳~4歳頃): 乳歯も複雑な溝を持っており、虫歯になると後の永久歯の歯並びにも影響を与えることがあります。
- 永久歯の奥歯(6歳~12歳頃):
- 6歳臼歯(第一大臼歯): 6~7歳前後に生えてくる最初の永久歯で、最も虫歯になりやすい歯です。生え始めたら早めの処置が推奨されます。
- 12歳臼歯(第二大臼歯): 12歳頃に生えてくる最後の奥歯も対象となります。
生えてから間もない、歯質が未熟な時期(生え始め~1年程度)が、最もシーラントに適したタイミングと言えます。
治療の流れと痛みについて
シーラントの最大の特長の一つは、歯を削らないことです。そのため、治療中に痛みを感じることは基本的にありません。
<一般的な治療ステップ>
- 歯のクリーニング: まず、専用の器具を使って溝の奥の汚れを徹底的に清掃します。
- 表面処理: 樹脂がしっかりと歯に接着するように、歯の表面を処理するお薬を塗布します。
- シーラント材の塗布: 溝の部分に、液状のシーラント材(樹脂)を流し込みます。
- 光照射: 専用の光を当てて、シーラント材を瞬時に固めます。
1本あたり数分程度で完了するため、歯医者さんが苦手なお子様でも安心して受けていただけます。
シーラントのメリットとデメリット(注意点)
シーラントは非常に優れた予防法ですが、万能ではありません。メリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。
シーラントの主なメリット
- 高い虫歯予防効果: 適切に処置されれば、奥歯の溝(小窩裂溝)からの虫歯を大幅に予防できます。
- 歯を削らない: 歯にダメージを与えることなく、予防が可能です。
- 痛みがなく、短時間で終わる: お子様への負担が非常に少ない処置です。
- フッ素徐放性: シーラント材に含まれるフッ素が少しずつ放出され、歯質を強化する効果も期待できます。
知っておきたいデメリットと注意点
- 取れる可能性がある:シーラントは強力に接着していますが、粘着性の高い食べ物(キャラメルやガムなど)や、硬い食べ物を噛んだ衝撃で、欠けたり取れたりすることがあります。
- 永久的なものではない:シーラントは経年劣化もします。取れていなくてもすり減ったり、隙間ができたりすることがあるため、定期的なチェックが必要です。
- シーラントをしていない部分は虫歯になる:シーラントはあくまで「奥歯の溝」を守るものです。歯と歯の間や、歯の側面など、他の部分は虫歯になる可能性があります。
- シーラントの下で虫歯になる:稀ですが、シーラントと歯の間に微細な隙間ができ、そこから虫歯が進行するケースも報告されています。これを防ぐためにも、歯科医院での定期検診が不可欠です。
シーラントの費用は?保険は適用される?
シーラントは小児に対して保険適用ですが、高校生以降は歯の状態によって保険適用となるかどうかが決まります。保険適用の場合、東京都では患者様の負担額は「0円」です。
シーラントだけで安心?総合的な予防歯科の重要性
シーラントは強力な予防法ですが、「シーラントをしたから、もう虫歯にならない」というわけではありません。
虫歯予防は、以下の3つを組み合わせることで最大の効果を発揮します。
- シーラント(物理的な防御): 奥歯の溝を埋める。
- フッ素塗布(歯質の強化): 歯全体を酸に溶けにくい強い歯質に変える。
- 毎日の歯磨き(汚れの除去): 歯の表面や歯と歯の間のプラークを除去する。
当院では、お子様の虫歯予防のために小児歯科や予防歯科に力を入れております 1。シーラント処置だけでなく、定期的なフッ素塗布、ご家庭でのケアの方法、食生活のアドバイスなど、お子様一人ひとりのお口の状態に合わせた個別の予防プログラムをご提案しています 2。
よくある質問(Q&A)

Q1. シーラントが取れたらどうすればいいですか?
A. 取れてしまった部分の予防効果は失われていますが、取れた樹脂を飲み込んでしまっても体に害はありませんのでご安心ください。萌出から3年も経過していればエナメル質も成熟しているので、再度シーラントするのは基本不要です。
Q2. シーラントをした歯は、歯磨きしなくていいですか?
A. いいえ、必ず必要です。前述の通り、シーラントは溝を守るものであり、歯の表面や歯と歯の間は虫歯になる可能性があります。シーラントをした後も、毎日の丁寧な歯磨きと仕上げ磨きを続けてください。
Q3. 何歳までできますか?
A. 主に6歳から12歳頃の永久歯が生えそろう時期が中心となりますが、特に厳密な年齢制限はありません。乳歯にも行えますし、大人の歯でも条件によっては可能です。
まとめ

シーラントは、お子様の大切な歯、特に生えたての「6歳臼歯」を虫歯から守るための、非常に有効で負担の少ない予防処置です。
- 奥歯の深い溝を物理的に埋めて、汚れが溜まるのを防ぎます。
- 歯を削らず、痛みもないため、お子様も安心して受けられます。
- 多くの場合、保険適用で治療が可能です。
ただし、シーラントだけに頼るのではなく、「フッ素塗布」や「毎日の歯磨き」、そして最も重要な「歯科医院での定期検診」を組み合わせることが、お子様の歯を生涯守るための鍵となります。
お子様のお口の状態でシーラントが必要かどうか、またはいつ頃行うのが最適かについては、お口の状態によって異なります。
当院では、全ユニットを個室にしており、お子様がリラックスして過ごせるよう、1階と2階にキッズスペースを完備してお待ちしております 。お子様の歯に関するご不安やご質問がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭