2026年10月05日
【乳歯の虫歯】「生え変わるから大丈夫」は本当?原因・治療・予防を解説【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。「乳歯はどうせ生え変わるから、少しくらいのむし歯なら大丈夫」。お子さんの歯を見て、そう思ったことはありませんか。
じつは、乳歯のむし歯を放っておくと、あとから生える永久歯や歯並びにまで影響することがあります。いっぽうで、毎日の習慣を見直せば、防ぎやすいことも分かっています。
この記事では、乳歯のむし歯の特徴と治し方、おうちでできる予防を、東京都墨田区東駒形の篠塚歯科医院がお伝えします。
この記事のポイント
- 子どものむし歯は減ってきましたが、3歳児の10人に1人ほどには、まだむし歯があります。
- 乳歯のむし歯は進むのが早く、「生え変わるから」と放っておくと、永久歯や歯並びに響くことがあります。
- 予防の柱は、甘いもののとり方、保護者ご自身のお口を整えること、年齢に合ったフッ素の3つです。
子どものむし歯は、ずいぶん減ってきました
「うちの子、むし歯が多いのかな」と心配になる方もいるでしょう。まずは、今の子どものむし歯の様子から見てみます。
3歳児でむし歯のある子の割合は、この20年ほどで大きく下がりました[1]。今は10人に1人ほどです。
「子どものむし歯は当たり前」という時代では、なくなってきました。ただ裏を返すと、予防している家庭とそうでない家庭で、差がつきやすいということです。
まだ油断はできません。次は、乳歯のむし歯ならではの特徴を見ていきましょう。
乳歯のむし歯は、進むのが早いのが特徴です
「この前の健診では、何もなかったのに」。乳歯のむし歯では、こうしたことがよく起こります。
乳歯は、永久歯にくらべてむし歯になりやすく、進むのも早いからです。理由は、歯のつくりにあります。
- 歯がうすい…表面のエナメル質も、その内側の象牙質も、永久歯の半分ほどの厚さしかありません。
- 酸に溶けやすい…歯の硬さが永久歯より弱く、むし歯菌の出す酸に溶けやすいのです。
- 神経が近い…歯の大きさにくらべて神経(歯髄)が大きく、むし歯が届きやすくなっています。
そのため、見た目は小さな穴でも、中で大きく広がっていることがあります。数か月で神経まで届くことも、珍しくありません。
しかも乳歯のむし歯は、痛みが出にくいまま進みがちです。痛がったときには、かなり進んでいることもあります。
仕上げ磨きのときに、ここを見てください
- 茶色や黒っぽい色…歯の溝や、歯と歯の間が変色していないか
- 白いにごり…歯の表面が、チョークのように白くにごっていないか
- 穴や欠け…奥歯のかむ面に、穴があいていないか
気になる色に気づいたら、早めにご相談ください。早く見つかるほど、治療もお子さんの負担も小さく済むことが多いです。
「生え変わるから大丈夫」とは言えない理由

「どうせ抜ける歯だから」と、治療をためらう方もいらっしゃいます。でも、乳歯のむし歯を放っておくと、次のような心配があります。
- 永久歯の質に響く…むし歯が根の先まで進んで膿がたまると、その下で育つ永久歯の芽に影響し、歯の表面がうまく作られないことがあります。
- 歯並びが乱れる…乳歯を早く失うと、となりの歯がすき間に倒れこみ、永久歯の生える場所が足りなくなることがあります。
- かむ・話すに響く…痛みで片側だけでかむようになると、あごの育ちや食事、発音に影響が出ることがあります。
- むし歯が増えやすい…むし歯が多いと口の中の菌も増え、生えたばかりの永久歯もむし歯になりやすくなります。
乳歯は、永久歯がきれいに並ぶための「道しるべ」でもあります。生え変わるその日まで、大切に守ってあげましょう。
乳歯のむし歯は、どう治すの?
治し方は、むし歯の深さや年齢、お子さんがどのくらい治療に慣れているかで変わります。主な方法は次のとおりです。
- 進行を止める薬を塗る…ごく初期で、まだ削るほどではない小さなお子さんには、進行をおさえる薬を塗って様子を見ることがあります。塗ったところは黒くなります。
- 詰める…穴があいたむし歯は、悪いところを取り除き、歯科用のプラスチックなどで詰めます。
- かぶせる…大きくくずれた奥歯には、乳歯用のかぶせ物を使うことがあります。
- 神経の処置…神経まで進んだときは、神経を守ったり、取り除いたりする処置をします。
歯医者さんに慣れていないお子さんには、いきなり削らず、練習から少しずつ進めることも大切です。
どの治療が合うか、費用がどのくらいかは、お口の状態で変わります。診察のときにご案内します。
おうちでできる予防は「3本柱」

「何から始めればいいの?」と迷ったら、まずはこの3つです。甘いもののとり方、保護者ご自身のお口を整えること、年齢に合ったフッ素です。
①甘いもののとり方(シュガーコントロール)
むし歯は、甘いものを口にしている時間が長いほど、できやすくなります。だらだら食べが、いちばんの大敵です。
当院では、3歳までは1日2回、3歳からは1日1回のおやつを目安にお伝えしています。食べる時間も決めておくと、だらだら食べになりにくくなります。
おやつは、小さな体に必要な食事の一部でもあります。おにぎりやふかしいも、チーズなど、砂糖の少ないものを選ぶのもおすすめです。
ジュースやスポーツドリンク、乳酸菌飲料を、水がわりにしないことも大切です。ふだんの飲み物は、お茶か水にしましょう。
②保護者のお口を整える
「子どものむし歯に、親の歯が関係あるの?」と思われるかもしれません。じつは、関係があります。
むし歯の菌は、生まれたときからお口にいるわけではありません。ふだんのふれあいの中で、身近な大人から伝わることが分かっています[2]。
とくに1歳7か月から2歳7か月ごろは、菌がお子さんのお口に住みつきやすい時期といわれ、「感染の窓」と呼ばれています[3]。
お口の菌が多いお母さんたちに、菌を減らすケアを続けてもらった研究があります。お子さんに菌が住みつく時期が、遅くなりました[4]。
7歳の時点で、むし歯のない子は23%。ケアをしなかったグループ(9%)の、2倍以上でした[4]。
保護者ご自身のむし歯を治し、毎日の歯みがきと定期検診で、お口の菌を減らしておきましょう。
お子さんのためだけでなく、ご自身の歯を守ることにもつながります。ご家族みんなで、お口を整えていきましょう。
③年齢に合ったフッ素を使う(歯みがき剤・フッ素洗口)
「フッ素って、子どもに使っても大丈夫?」と気になる方もいるでしょう。年齢に合った量を守れば、安心して使えるむし歯予防の味方です。
フッ素(フッ化物)は、歯の表面を強くし、溶けかけたところが元にもどるのを助けます。75年以上の歴史の中で、安全性と効果がくり返し確かめられてきました[5]。
歯みがき剤は、年齢に合った量と濃さのものを使いましょう。歯科の4つの学会が、次の目安をまとめています[5]。
| 年齢 | 1回の量 | フッ素の濃さ |
|---|---|---|
| 歯が生えてから2歳 | 米粒程度(1〜2mm) | 900〜1,000ppmF |
| 3〜5歳 | グリーンピース程度(5mm) | 900〜1,000ppmF |
| 6歳〜大人 | 歯ブラシ全体(1.5〜2cm) | 1,400〜1,500ppmF |
どの年齢も、寝る前を含めて1日2回が目安です。みがいたあとは軽くはき出し、うがいは少なめの水で1回だけにしましょう[5]。
歯が生えはじめたばかりの生後5〜6か月ごろは、使える量がごくわずかです。この時期は、ガーゼや歯ブラシでお口のケアに慣れることから始めましょう[5]。
フッ素洗口は、フッ素の入った液で、ぶくぶくうがいをする方法です。歯みがき剤に加えて、フッ素洗口や歯科医院でのフッ素塗布を組み合わせることも大切とされています[5]。
うがいが上手にできる4歳ごろから始められ、14歳ごろまで続けると、とくに効果が大きいとされています[6]。毎日するものと週1回のものがあるので、始めるときは歯科医院でご相談ください。
歯みがき剤や洗口液は、お子さんが大量に飲みこまないよう、手の届かない場所にしまっておきましょう[5]。
仕上げ磨きは「慣れる時間」に
「毎日きちんと仕上げ磨きをしないと、むし歯になってしまう?」と、気負ってしまう方もいます。
仕上げ磨きは、むし歯予防そのものというより、お口をさわられることや歯みがきに慣れていく、親子のふれあいの時間です。
完璧を目指さなくて大丈夫です。短い時間でも、笑顔で続けることを大切にしましょう。
毎日お口をのぞいていると、先ほどお話しした歯の色の変化にも、気づきやすくなります。
「食器の共有でむし歯がうつる」は本当?
「同じスプーンを使うと、むし歯菌がうつる」。そう聞いて、食器を分けている方も多いと思います。
じつは日本口腔衛生学会は2023年に、食器を分けることでむし歯を防げるという根拠は、強くないとの見解を出しました[2]。
生後4か月ごろには、すでにお母さんの口の菌が、赤ちゃんに伝わっていることが分かってきたためです[2]。離乳食が始まる前から、ふだんのふれあいで菌は行き来しています。
3歳児を調べた日本の研究でも、親との食器の共有と、むし歯との関係は見られませんでした[2]。
食器を神経質に分けるより、甘いもののとり方・保護者のお口・フッ素の3本柱を大切にしましょう。ふだんのスキンシップは、安心して楽しんでください。
歯科医院でできること
おうちでのケアに加えて、歯科医院では次のようなお手伝いができます。
- 定期検診とクリーニング…初期のむし歯を早く見つけ、磨き残しをチェックします。
- フッ素塗布…ご家庭の歯みがき剤より濃いフッ素を歯に塗り、歯を強くします。
- 歯みがきの練習…3〜4歳ごろからは、染め出しで磨き残しを確かめながら練習します。
- 食事とおやつの相談…管理栄養士が、離乳食や食育、おやつのお悩みにお答えします。
- 保護者の方の検診…ご家族のお口の検診やクリーニングも、どうぞご相談ください。
当院の小児歯科
篠塚歯科医院では、予防を中心にした小児歯科に取り組んでいます。むし歯予防は、ご家族単位で進めるのが理想と考えています。
9〜10歳ごろまでに、自分でしっかり磨けるよう、少しずつお手伝いします。
1階と2階には、キッズスペースがあります。お子さんが歯医者さんをこわがらずに通えるよう、心がけています。
よくある質問

Q. 乳歯のむし歯は、自然に治りますか?
A. いったん穴があいたむし歯は、自然には治りません。ただ、白くにごっただけのごく初期なら、フッ素を使い、おやつのとり方を見直すことで、進行が止まることもあります。気になる色に気づいたら、早めにご相談ください。
Q. 何歳から歯医者に通えばいいですか?
A. 最初の歯が生えてきたら、一度来ていただくのがおすすめです。むし歯がなくても、おやつや仕上げ磨きの相談、歯医者さんに慣れる練習になります。
Q. 仕上げ磨きをいやがって、暴れてしまいます。
A. 無理に押さえつけると、よけいにいやがってしまいます。ひざの上に頭をのせる姿勢で、短い時間から始めましょう。上くちびるの裏のスジに歯ブラシが当たると痛いので、指でそっと守ってあげると、いやがりにくくなります。
Q. ジュースや乳酸菌飲料は、飲ませないほうがいいですか?
A. 飲んではいけない、ということはありません。ただ、水がわりに少しずつ飲むと、歯が甘いものにふれる時間が長くなります。飲むなら時間を決めて、ふだんの水分はお茶か水にしましょう。
Q. 乳歯のむし歯は、永久歯に影響しますか?
A. 根の先に膿がたまるほど進むと、その下で育つ永久歯の質に影響することがあります。乳歯を早く失うと、歯並びが乱れる原因にもなります。放っておかずに治療しましょう。
まとめ
- 子どものむし歯は減ってきましたが、3歳児の10人に1人ほどには、まだむし歯があります。
- 乳歯のむし歯は進むのが早く、放っておくと永久歯の質や歯並びに響くことがあります。
- 甘いもののとり方、保護者ご自身のお口、年齢に合ったフッ素。この3本柱を、ご家族で続けましょう。
- 仕上げ磨きは、歯みがきに慣れるための親子の時間です。完璧より、笑顔で続けることを大切に。
- 食器の共有は、神経質に避けなくても大丈夫です。気になる色や痛がる様子があれば、早めにご相談ください。
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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お子さんの歯のことで気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- 厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告(全国乳幼児歯科健診結果)」(国立保健医療科学院によるまとめ) 資料を開く
- 日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」2023年8月31日 資料を開く
- Caufield PW ほか. Initial acquisition of mutans streptococci by infants: evidence for a discrete window of infectivity. J Dent Res. 1993;72(1):37-45. PubMed
- Köhler B ほか. Influence of caries-preventive measures in mothers on cariogenic bacteria and caries experience in their children. Arch Oral Biol. 1994;39(10):907-911. PubMed
- 日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会「う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法【普及版】」2023年 資料を開く
- 厚生労働省「フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方」(令和4年12月28日 医政発1228第7号・健発1228第1号) 資料を開く


