【前歯の間に余分な歯?】子どもの過剰歯の原因と、抜く時期の考え方【歯医者が解説】

子どもの歯のレントゲン写真で、上の前歯の間にある小さな過剰歯を歯科医師が指さしているイラスト

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「レントゲンで、前歯の奥に余分な歯があると言われた」。突然そう言われて、驚いて調べている保護者の方も多いと思います。

本来の数より多くできた歯を「過剰歯(かじょうし)」といいます。子どもの歯科では、ときどき出会う歯の異常のひとつです。

この記事では、過剰歯の原因や起こりうること、検査、抜く時期の考え方をまとめました。大人になってから見つかった場合のお話もします。

この記事のポイント

  • 過剰歯は、本来の数より多くできた歯です。上の前歯の間(正中過剰歯)に多く、男の子に多めです。
  • 原因はまだはっきり分かっていませんが、生まれつきのものです。歯みがきや食べ物、育て方のせいではありません。
  • 抜くかどうか・いつ抜くかは、永久歯への影響や位置、年齢で決めます。片方の前歯だけが半年以上生えないときは、相談しましょう。

過剰歯とは?いちばん多いのは上の前歯の間の「正中過剰歯」

「余分な歯って、どこにあるの?」と思いますよね。

過剰歯は、本来の歯の数より多くできた歯のことです。いちばん多いのは、上の前歯2本の間あたりにできる「正中過剰歯(せいちゅうかじょうし)」です。

多くは骨の中に埋まったまま

過剰歯の多くは、歯ぐきの外に出てこず、あごの骨の中に埋まっています。日本の大学病院の小児歯科の調査では、約7割が埋まったままでした[1]。

見た目では分からないので、レントゲンを撮って初めて見つかることがほとんどです。

形や向きはいろいろ

形は、先がとがった小さな円すい形がいちばん多いです[2]。ずんぐりした形や、ふつうの前歯にそっくりな形もあります。

向きもさまざまです。歯の先が鼻のほうを向いた「逆さま」の歯や、横向きに寝ている歯もあります[1]。

どのくらいの子にある?

正中過剰歯がある人の割合は、報告によって差があります。おおよそ0.15〜1.9%とされています[3]。

男の子に多いのも特徴です。日本の大学病院の調査では、男の子が女の子の約3倍でした[1]。

見つかったからといって、すぐに大変なことになるわけではありません。まずは落ち着いて、今の状態を確かめましょう。

過剰歯の原因は?分かっていること・まだはっきりしないこと

「私の育て方が悪かったの?」と、ご自分を責める保護者の方もいます。

でも、過剰歯は歯のもとができる段階で生じるものです。歯みがきや食べ物、育て方のせいではありません。

歯のもとが「多めに」できると考えられています

歯は、生まれる前から、あごの中で「歯胚(しはい)」という歯のもととして作られ始めます。

この歯のもとを作る組織がはたらきすぎて、余分な歯のもとができる。これが、いちばん有力な考え方です[3]。

遺伝の関わりも考えられています

家族に過剰歯のある人が多いことから、遺伝の関わりも考えられています。ただ、親から子へ単純に受け継がれるものではありません[3]。

生まれつきの「なりやすさ」に、ほかの要因が重なって起こる、という見方もあります[3]。

つまり、はっきりした原因は、まだ分かっていません。防ぐ方法もないので、早めに見つけて、必要なときに対応することが大切です。

まれに、生まれつきの病気の一部として

過剰歯の多くは、ほかに病気のない、健康なお子さんに見られます。

ただ、まれに、生まれつきの病気の一部として過剰歯ができることがあります。口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)や、鎖骨頭蓋異形成症(さこつとうがいいけいせいしょう)などです[3]。

過剰歯がたくさんある、ほかにも気になる症状がある。そんなときは、お医者さんとも相談しながら確かめていきます。

過剰歯で起こりうること(何も起こさないことも)

「埋まったままなら、放っておいても大丈夫?」という声もよく聞きます。

結論からいうと、困りごとを起こすこともあれば、何も起こさないこともあります。主なものを見ていきましょう。

永久歯が生えない・遅れる・向きがずれる

過剰歯が永久歯の通り道をふさぐと、前歯が生えてこなかったり、生えるのが遅れたりします。

押されて、前歯がななめやねじれた向きに生えてくることもあります。

前歯のすき間(正中離開)

上の前歯2本の間に過剰歯があると、前歯の間にすき間ができることがあります。これを「正中離開(せいちゅうりかい)」といいます。

ただし、前歯のすき間は、成長の途中で自然に見られることも多いものです[4]。すき間があるから過剰歯、とは限りません。

嚢胞(のうほう)や、となりの歯の根への影響

埋まった過剰歯のまわりに、液体のたまった袋ができることがあります。これを嚢胞といいます。

日本のある病院の調査では、約1割に嚢胞ができていました[5]。長く埋まったままでいると、嚢胞ができやすくなると考えられています[5]。

また、まれに、過剰歯に押されて、となりの永久歯の根が溶けてしまうこともあります[6]。

何も起こさないことも

一方で、ずっとおとなしくしている過剰歯もあります。歯科用CTで調べた研究では、約半数は、となりの歯に影響がありませんでした[6]。

大切なのは、「埋まっている=すぐ抜く」ではありません。お子さんの歯にどう影響しているかを、確かめることです。

見つかるきっかけと検査(パノラマのレントゲン・歯科用CT)

「前歯が片方しか生えてこない…」。そんな気づきが、過剰歯が見つかるきっかけになることがよくあります。

日本の大学病院の調査では、見つかった年齢の平均は7歳ごろでした[1]。ちょうど前歯が生え変わる時期です。

虫歯の治療や検診で撮ったレントゲンで、偶然見つかることもあります。

歯医者さんに相談したいサイン

英国の指針では、次のようなときに、前歯が生えるのが遅れていないか調べるよう勧めています[7]。

  • 片方だけ生えない…反対側の前歯が生えてから、半年以上たっても生えてこない
  • 上の前歯が2本とも生えない…下の前歯が生えてから、1年以上たっている
  • 順番がちがう…真ん中の前歯より先に、となりの前歯が生えてきた

このほか、前歯の間の大きなすき間や、前歯のねじれも相談のきっかけになります。前歯の近くに、見慣れない小さな歯が生えてくることもあります。

過剰歯に気づくきっかけ:片方の前歯が生えない、前歯の間のすき間、前歯のねじれ、見慣れない小さな歯

永久歯が生えてくる順番や時期は、永久歯の生え変わりの順番と相談すべきサインの記事でくわしく紹介しています。

まずはパノラマのレントゲンで全体を

まずは、お口全体を1枚に写すパノラマのレントゲンを撮ります。過剰歯があるか、どのあたりにあるかを確かめます[7]。

抜く前には歯科用CTで立体的に

抜くことを考えるときは、歯科用CTが役に立ちます。過剰歯の向きや深さ、永久歯とどれだけ近いかを、立体的に確かめられます[7]。

ただ、CTはふつうのレントゲンより被ばくが多めです[7]。必要なときに、必要な範囲で撮ることが大切です。

当院には歯科用CTがあり、必要に応じて撮影します。「気になるな」と思ったら、検診のときに気軽に声をかけてください。

過剰歯は抜く?待つ?抜く時期の考え方

「抜いたほうがいいの?まだ小さいのに…」。ここが、いちばん悩むところだと思います。

結論からいうと、抜くかどうか・いつ抜くかは、お子さんごとに決めます。どの時期がよいかは、専門家の間でも意見が分かれています[6]。

過剰歯を早めに抜くのは永久歯のじゃまをしているとき、様子を見るのはじゃまをしていない・深い位置のとき

永久歯のじゃまをしているなら、取り除くのが基本

過剰歯が永久歯の生えるじゃまをしているなら、取り除くのが基本です[7]。

前歯のすき間やずれの原因になっているとき、嚢胞ができているときも、抜くことを考えます。

早めに抜く利点と注意点

早めに抜くと、永久歯が自分の力で生えてきやすくなります。

乳歯の時期や、生え変わりの初めに抜いた子ほど、前歯の生え方の異常が少なかった。そんな日本の報告があります[8]。

たくさんの研究をまとめた報告でも、乳歯の時期に取り除いたほうが、前歯が生えやすい傾向でした[9]。

一方で、小さなお子さんほど、処置への不安や負担は大きくなります。永久歯の根がまだ育っている途中なので、傷つけないための慎重さも必要です[6]。

待つ・様子を見るという選択

永久歯の根ができあがるのを待ってから抜く、という考え方もあります。お子さんが処置に協力しやすく、歯を傷つける心配も減るためです[6]。

永久歯のじゃまをしておらず、抜くととなりの歯の根を傷つけるおそれが高い。そんな過剰歯は、すぐに抜かずに経過を見ることがあります[10]。

英国の指針でも、生えるじゃまになっておらず、深い位置にある過剰歯は、そのままにすることも考えるとしています[7]。

様子を見るあいだは、定期的にレントゲンで、過剰歯の動きや嚢胞がないかを確かめます。

子どもの負担と麻酔

日本の大学病院の調査では、過剰歯を抜いた年齢の平均は7.6歳でした[1]。

そのうち4割あまりは、全身麻酔で抜いていました[1]。深い位置にあるときや小さなお子さんでは、眠った状態で行うこともあるのです。

当院では、レントゲンやCTで位置を確かめたうえで、抜くかどうか・いつ・どこで抜くかをご相談します。

深い位置にある場合などは、病院の口腔外科をご紹介することもあります。迷ったときは、遠慮なく何度でも聞いてください。

抜いたあとの経過と、大人になってから見つかった場合

「抜いたら、前歯はすぐ生えてくるの?」と気になりますよね。

前歯は自然に生えてくることが多い

過剰歯を抜いたあと、埋まっていた前歯は、自然に生えてくることが多いです。

たくさんの研究をまとめた報告では、抜くだけで6割ほどの前歯が生えてきました[9]。

矯正の装置で、生えるすき間を作った場合は8割ほどでした[9]。ただ、もとになった研究はまだ少なく、はっきりとは言い切れません。

生えてくるまでには、平均で1年4か月ほどかかります[7]。すぐに生えなくても、あわてずに待ちましょう。

生えてこないときは、矯正で手助け

しばらく待っても生えてこないときは、矯正で手助けをします。装置で、生えるすき間を広げる方法があります[7]。

歯ぐきを開いて前歯に小さな装置を付け、ゆっくり引っぱり出す方法もあります[7]。

お子さんの矯正については、小児矯正のページもご覧ください。

抜いたあとも、定期検診で見守りましょう

まれに、抜いたあと、同じ場所に新しい過剰歯ができたという報告もあります[11]。

前歯の向きやかみ合わせの変化も、成長に合わせて見ていく必要があります。抜いたあとも、定期検診で見守っていきましょう[1]。

大人になってから見つかったら

過剰歯は、大人になってから、レントゲンやCTで偶然見つかることもあります。大人の方が受診する例も報告されています[12]。

大人で困りごとがなければ、抜かずに、定期的なレントゲンで見守ることが多いです[6]。抜く処置にも、まわりの歯を傷つけるおそれがあるからです。

一方で、次のようなときは、大人でも抜くことを含めて相談します。

  • 嚢胞がある…過剰歯のまわりに袋ができている、大きくなってきた[5]
  • 症状がある…歯ぐきの腫れや痛みをくり返す
  • 矯正治療をしたい…歯を動かす通り道の近くに、過剰歯がある[7]

大人の方も、気になることがあれば、まずは画像で今の状態を確かめましょう。

よくある質問

よくある質問

Q. 乳歯にも過剰歯はできますか?
A. できますが、永久歯よりずっと少ないです。日本の3歳児を調べた研究では、0.07%でした[13]。

Q. 過剰歯は遺伝しますか?きょうだいも心配です。
A. 家族に多い傾向は知られていますが、単純に遺伝するものではありません[3]。気になるときは、きょうだいの検診のときにご相談ください。

Q. 口の中に生えてきた過剰歯も、抜いたほうがいいですか?
A. 生えてきた過剰歯は、ある程度出てきたところで抜くことが多いです[10]。歯並びへの影響もあわせて、診察で確かめます。

Q. 抜くとき、痛くないですか?
A. 麻酔をしてから抜くので、処置中の痛みはおさえられることが多いです。抜いたあと数日は、痛みや腫れが出ることがあります。

Q. 前歯のすき間があります。過剰歯のせいですか?
A. 成長の途中で自然に見られるすき間も多く、見た目だけでは分かりません[4]。気になるときは、レントゲンで確かめると安心です。

まとめ

最後に、この記事の大切なところをまとめます。

  • 過剰歯とは…本来の数より多くできた歯です。上の前歯の間に多く、多くは骨の中に埋まっています。
  • 原因…はっきり分かっていませんが、生まれつきのものです。保護者のせいではありません。
  • 起こりうること…永久歯が生えない、すき間、嚢胞など。何も起こさないこともあります。
  • 抜く時期…永久歯への影響、位置、年齢、お子さんの負担を見て、一緒に決めます。
  • 抜いたあと・大人の場合…どちらも、定期的に見守ることが大切です。

片方の前歯だけ、なかなか生えてこない。前歯の間のすき間が気になる。そんなときは、お気軽にご相談ください。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. 芦澤みなみ ほか. 大学附属病院小児歯科における7年間におよぶ過剰歯の実態調査. 小児歯科学雑誌. 2018;56(4):441-449. J-STAGE
  2. Mukhopadhyay S. Mesiodens: a clinical and radiographic study in children. J Indian Soc Pedod Prev Dent. 2011;29(1):34-38. PubMed
  3. Meighani G, Pakdaman A. Diagnosis and management of supernumerary (mesiodens): a review of the literature. J Dent (Tehran). 2010;7(1):41-49. PubMed
  4. Oesterle LJ, Shellhart WC. Maxillary midline diastemas: a look at the causes. J Am Dent Assoc. 1999;130(1):85-94. PubMed
  5. Asaumi JI ほか. Radiographic examination of mesiodens and their associated complications. Dentomaxillofac Radiol. 2004;33(2):125-127. PubMed
  6. Barham M ほか. Influence of mesiodens on adjacent teeth and the timing of its safe removal. Imaging Sci Dent. 2022;52(1):67-74. PubMed
  7. 英国王立外科医師会 歯科外科部門(Yaqoob O ほか)「Management of unerupted maxillary incisors」2010年 資料を開く
  8. 守安克也 ほか. 上顎前歯部における埋伏過剰歯摘出後の歯列の発育に関する臨床統計的観察. 小児歯科学雑誌. 2005;43(4):504-511. J-STAGE
  9. Seehra J ほか. Interventions to facilitate the successful eruption of impacted maxillary incisor teeth due to the presence of a supernumerary: A systematic review and meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2023;163(5):594-608. PubMed
  10. 氏家真由子 ほか. 歯科大学病院小児歯科における過剰歯に関する実態調査. 小児歯科学雑誌. 2003;41(1):87-93. J-STAGE
  11. 豊村純弘 ほか. 摘出後再び出現した埋伏過剰歯の1例. 小児歯科学雑誌. 2000;38(1):249-254. J-STAGE
  12. 加藤みなみ, 西口浩明. 当科における上顎正中埋伏過剰歯の臨床的検討. 日本農村医学会雑誌. 2022;71(2):108-114. J-STAGE
  13. Yonezu T ほか. Prevalence of congenital dental anomalies of the deciduous dentition in Japanese children. Bull Tokyo Dent Coll. 1997;38(1):27-32. PubMed

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