【歯のクリーニングで糖尿が改善】糖尿病と歯周病の関係とは?血糖値と歯ぐきの深い関わりを解説!

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「歯周病は歯ぐきだけの問題」と思っていませんか?実は歯周病は、糖尿病と互いに悪影響を及ぼし合う「双方向の関係」にあることが、近年の研究で次々と明らかになっています。当院の歯周病治療のページでもご案内している通り、歯周病の改善が全身の健康、特に血糖コントロールに良い影響を与えることが分かってきました。今回は、糖尿病と歯周病の関係について、最新の研究データをもとに詳しく解説します。

歯周病と糖尿病は「互いに悪化させ合う」関係

糖尿病と歯周病は、単に同時に起こりやすい病気というだけではありません。一方が悪化すると、もう一方も悪化しやすくなる「双方向性」の関係があることが分かっています。

アメリカのピマインディアンの方々を調べた研究では、2型糖尿病の方が新たに歯周病になる割合は、糖尿病でない方の約2.6倍と報告されています[1]。逆に、歯周病がある方は、のちに2型糖尿病になりやすい傾向があるという、たくさんの研究をまとめた報告もあります[2]。

このため歯周病は、糖尿病の三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)などに続く「第6の合併症」と呼ばれることもあります[3]。

なぜ血糖値が上がると歯周病が悪化するのか

血糖値が高い状態が続くと、次のようなメカニズムで歯周組織にダメージが蓄積していきます[1]。

  • 免疫力の低下:高血糖により白血球(好中球)の細菌をやっつける働きが弱まり、歯周病菌に対する抵抗力が落ちます
  • 組織の修復力の低下:血管や神経がダメージを受けることで、歯ぐきの傷が治りにくくなります
  • 唾液の減少:高血糖に伴う脱水傾向により唾液の分泌が減り、口の中の自浄作用が低下します

これらが重なることで、歯周病菌が繁殖しやすい環境ができあがり、歯周病がより進行しやすくなってしまうのです。

逆に、歯周病の炎症が血糖値を上げてしまう理由

実は歯周病による炎症も、全身の血糖コントロールを乱す原因になると考えられています[1]。

歯ぐきの慢性炎症からは、TNF-αやIL-6といった炎症性物質が持続的に血液中へ流れ出します。これらの物質は、筋肉や脂肪細胞がインスリンの働きを受け取りにくくする「インスリン抵抗性」を引き起こし、結果として血糖値が下がりにくくなると考えられています[1]。

歯周病を治療すると血糖値(HbA1c)は本当に下がるのか

この疑問に対する、信頼性の高い研究結果があります。2022年に発表された、たくさんの研究をまとめた報告では、糖尿病と歯周病のある方を対象にした30件の研究(合計2,443人)を合わせて調べました。その結果、歯周基本治療を行うと、治療後3〜4ヶ月の時点でHbA1c(過去1〜2か月の平均血糖値を反映する指標)が平均0.43%下がっていました[4]。ここでいう歯周基本治療は、スケーリング・ルートプレーニング(歯ぐきの中の歯石や汚れを取りのぞく処置)などです。

0.4%ほどの低下は、糖尿病治療薬を1剤追加したときに匹敵する効果ともいわれています[5]。これは非常に価値のある結果です。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」も、この研究成果を踏まえています。2型糖尿病の方の歯周治療は血糖コントロールの改善に有効として、最も高い推奨レベルの「推奨グレードA」に位置づけられています[1]。

糖尿病の治療だけでも歯周病は改善する?大阪大学の最新研究

2024年に発表された、国内の研究グループによる興味深い成果もご紹介します。この研究では、2型糖尿病の患者29人を対象に、2週間の入院による集中的な糖尿病治療を実施しました。この間、歯科的な治療は一切行っていません。

その結果、血糖コントロールの改善とともに、歯周組織の炎症の広さを示す指標(PISA)までもが改善していました[6]。歯科治療を行わなくても、内科的な血糖コントロールだけで歯ぐきの炎症が引いていく可能性があるというこの結果は、歯周病と糖尿病が本当に地続きの病気であることを裏付けるものといえるでしょう。

見逃さないで。歯周病のセルフチェックポイント

歯周病は、初めのうちは痛みなどの自覚症状がほとんどなく、気づいたときには進んでいることが多い病気です[7]。次のような症状に心当たりがある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 歯みがきのときに歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが赤く腫れている、または下がってきた
  • 口臭が気になるようになった
  • 歯が以前よりぐらつく気がする
  • 硬いものが噛みにくくなった

血糖値と歯周病、どちらのケアも「早期」が大切

ご紹介した研究では、血糖値を下げても歯ぐきの炎症が改善しにくい方もいました。治療前からインスリンを出す力が落ちていた方や、神経障害・血管の合併症が進んでいた方です[6]。逆にいえば、糖尿病と診断されたばかりの段階、あるいは健診で血糖値を指摘された段階から、歯科と内科の両方でケアを始めることが、歯を長く残すためにも、全身の健康を守るためにも重要だということです。

歯科と内科、両方に伝えてほしいこと

糖尿病と歯周病は「地続き」の病気であるにもかかわらず、診てもらう場所が分かれているために、情報が行き来しにくいという現実があります。だからこそ、患者さんご自身が橋渡し役になっていただけると、治療はぐっと進めやすくなります。

  • 歯科では……糖尿病であること、直近のHbA1cの値、服用中のお薬をお伝えください。
  • 内科では……歯ぐきの腫れや出血があること、歯周病治療を受けていることをお伝えください。

「糖尿病連携手帳」があれば、歯科の記録も書き込めます。お持ちでない方には、当院から情報提供書をお出しすることもできます。

よくある質問

よくある質問

Q. 糖尿病があると歯周病の治療は受けられませんか?
A. 血糖コントロールの状態を確認しながらであれば、通常の歯周病治療は問題なく受けていただけます。外科的な処置やインプラント治療を検討する場合は、事前に血糖値の状態を確認させていただくことがあります。

Q. 歯周病の治療を受ければ、糖尿病の薬をやめられますか?
A. 歯周病治療はあくまで血糖コントロールを助ける手段の一つであり、糖尿病治療薬の代わりになるものではありません。自己判断で服薬を中止せず、必ず主治医にご相談ください。

Q. 糖尿病の主治医と歯科医院の情報共有はできますか?
A. 「糖尿病連携手帳」をお持ちの場合は、歯科の状況を手帳に記入し、内科の主治医と情報を共有することが可能です。お持ちでない方も、当院から情報提供書をお出しすることができますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

糖尿病と歯周病は、互いの症状を悪化させ合う「双方向」の関係にあります。歯周病を治療することで血糖コントロールが改善する可能性がある一方、糖尿病の治療に専念するだけでも歯ぐきの炎症が和らぐ可能性があることが、最新の研究で示されています。どちらか一方のケアではなく、両方に目を向けることが、歯を守り、全身の健康を維持するための近道です。

血糖値が気になる方、歯ぐきの腫れや出血が気になる方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第16章 糖尿病と歯周病 資料を開く
  2. Wu CZ ほか. Epidemiologic relationship between periodontitis and type 2 diabetes mellitus. BMC Oral Health. 2020;20(1):204. PubMed
  3. Löe H. Periodontal disease. The sixth complication of diabetes mellitus. Diabetes Care. 1993;16(1):329-334. PubMed
  4. Simpson TC ほか. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022;4(4):CD004714. PubMed
  5. Chapple IL ほか. Diabetes and periodontal diseases: consensus report of the Joint EFP/AAP Workshop on Periodontitis and Systemic Diseases. J Clin Periodontol. 2013;40 Suppl 14:S106-S112. PubMed
  6. Inoue M ほか. Periodontal tissue susceptibility to glycaemic control in type 2 diabetes. Diabetes Obes Metab. 2024;26(10):4684-4693. PubMed
  7. 8020推進財団「8020読本 働き盛りのお口の健康(歯を失う原因の第1位は歯周病!)」 資料を開く

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