妊娠中に歯医者に行っても大丈夫?よくある質問4つを解説!

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「妊娠中に歯医者に行っても大丈夫なの?」——妊娠中の方なら気になるところだと思います。今回は、妊娠中によくいただく次の4つの質問にお答えします。

  • 歯科治療について
  • レントゲン撮影の影響
  • 薬の影響
  • 歯科健診は必要なのか

①妊娠中の歯科治療は大丈夫?

妊娠中の歯科治療

結論から言うと、妊娠中でも歯科治療は可能です。ただし、時期によって受けやすい治療と、避けたほうがよい治療があります。

  • 妊娠初期・後期……歯石取りや歯のクリーニングなど、体への負担が軽い処置なら無理なく受けられます。
  • 安定期(妊娠中期)……虫歯治療・抜歯など麻酔を伴う治療は、体調が落ち着いている安定期に行うのがおすすめです[1]。
  • 避けたほうがよい治療……ホワイトニングや矯正治療など、急がない審美的な処置は産後に。

日本歯科医師会も、つわりがおさまる妊娠4〜5か月ごろの歯科健診をすすめています[1]。必要な治療は、体調の安定した妊娠中期に済ませるのがよいとされています[1]。

妊娠13〜21週に虫歯などの治療を受けた妊婦さんで、流産や早産などは増えなかった、という研究があります[2]。ただ、もっと人数の多い研究で確かめる必要がある、ともされています。

局所麻酔で歯の治療を受けた妊婦さん210人の調査でも、赤ちゃんの生まれつきの異常の割合に、はっきりした差はありませんでした[3]。

あくまで目安ですので、ご自身の体調をみながら歯科医師と相談して進めていきましょう。受診の際は母子健康手帳をご持参いただき、妊娠週数と産科の主治医からの指示があればお伝えください[1]。また、チェアを倒すのがつらいときは、体勢を調整できますので遠慮なくお申し出ください。

②妊娠中のレントゲン撮影の影響は?

妊娠中のレントゲン

不安に感じる方が多い点ですが、歯科治療で行うレントゲン撮影は、胎児への影響はないとされています[1]。撮影を行っても問題ありません。

医療被曝と日常被曝の比較

出典:東京都歯科医師会[4]

この資料では、歯の小さなレントゲン写真は、1枚で約0.01ミリシーベルトとされています[4]。自然に受ける放射線の1年分とくらべて、ごくわずかな量です[4]。

理由は3つあります。①歯科用レントゲンのX線量は医療の中でも特に少なく、日常生活で受ける被ばくの範囲内であること。②撮影範囲が顎の周りに限られ、腹部から離れていること。③放射線を遮る防護エプロンを着用すること。これらにより、影響はないと考えられています[1]。

人の模型を使って、おなかの赤ちゃんに届く量を調べた研究もあります。歯科のレントゲンでは、多く見積もっても、一般の人の1年間の限度の1%未満でした[5]。

この研究は、妊娠を理由に、必要なレントゲンの検査を避けたり延ばしたりしなくてよい、とまとめています[5]。

むしろ、レントゲンを撮らずに原因が分からないまま様子を見るほうがリスクになることもあります。心配なことは遠慮なくお尋ねください。

③妊娠中の薬の服用は大丈夫?

妊娠中の薬

妊娠中は、できれば薬の服用は避けるべきといわれています。特に妊娠初期は胎児のさまざまな器官がつくられる時期なので注意が必要です[1]。しかし、やむを得ず必要な場合には、安全性の評価が確立している薬を選んで処方します。

薬の選択にあたっては、アメリカのFDA薬剤胎児危険度分類基準やオーストラリアの分類基準で、安全性が高く危険である証拠が認められていない区分の薬剤を選ぶのが望ましいとされています。

  • 鎮痛薬……カロナールが処方されるケースが多いです。主成分のアセトアミノフェンは、胎児や母体への影響がもっとも少ない鎮痛薬とされています[6]。
  • 抗生剤……ペニシリン系・マクロライド系であれば服用しても問題ないといわれています。

一方、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの痛み止めは、妊娠の後半に使うと、赤ちゃんに影響が出ることがあると知られています[6]。

自己判断で市販薬を飲む前に、必ず歯科医院か産科の主治医にご相談ください。痛みを我慢し続けることも、母体にとってはストレスになります。

④妊娠中の歯科健診、3つのメリット

妊娠中の歯科健診

メリット① 妊娠中は虫歯・歯周病になりやすい

妊娠中は、ホルモンバランスの変化などで口の中の環境が大きく変わります[1]。つわりで奥歯のブラッシングがえずきやすくなり、十分に磨けないうえ、食生活も偏りがちで間食の回数も増えるため、虫歯に注意が必要です。

また、妊娠中は女性ホルモンが増加し、このホルモンを栄養源にする歯周病菌が増えることで、歯周病のリスクも高まります。「妊娠性歯肉炎」といって、歯ぐきが腫れたり出血しやすくなったりするのはこのためです[1]。

メリット② 早産・低体重出生のリスクに備える

歯周病は、早産や低体重出生と関連することが報告されています。複数の研究をまとめた分析では、妊娠中に歯周炎がある方は、早産のリスクが約1.67倍、低出生体重のリスクが約2.53倍と報告されました[7]。

ただし、この報告書自身が「結論を確定するにはさらに研究が必要」と述べているとおり、「歯周病を治療すれば早産が確実に防げる」とまでは言えません。それでも、お口を清潔に保つこと自体に不利益はなく、母体にとっても赤ちゃんにとっても意味のある備えです。

妊娠中の歯周病の治療をくらべた研究をまとめた報告でも、早産の割合に、はっきりした差は見られませんでした[8]。害を調べた研究では、治療による害は起きていませんでした[8]。

一方で、2,500g未満で生まれる赤ちゃんは、治療をした人のほうが少ない傾向でした[8]。ただ、まだはっきりとは言い切れません。

メリット③ 赤ちゃんを虫歯から守る

赤ちゃんは、生まれたときは口の中に虫歯菌がいない状態です[1]。しかし、食器の共有やスキンシップなど日常生活の中で、ご家族の菌が少しずつ移っていきます[1]。ご両親の口の中の虫歯菌が多いほど、お子さんも虫歯になりやすい環境になってしまいます。

「うつさないように気をつける」ことも大切ですが、日常生活で完全に防ぐのは現実的ではありません。それよりもご家族自身の口の中を整えて、うつる菌の量を減らしておくほうが確実です。赤ちゃんと接することの多いお母さんは、特に意識してみてください。

妊娠中のセルフケアのコツ

体調の変化が大きい時期だからこそ、無理のない範囲で続けられる工夫が役に立ちます。

  • 歯ブラシは小さめのヘッドに……奥歯を磨くときのえずきを軽減できます。
  • 下を向いて磨く……唾液や泡がのどに流れにくくなります。
  • 味やにおいがつらいときは歯みがき剤を使わない……水だけでも、毛先が当たっていれば汚れは落ちます。
  • 体調のよい時間帯に磨く……「食後すぐ」にこだわらず、磨ける時間を優先しましょう[1]。
  • 間食は回数を決める……つわりで少量ずつ食べる時期は、その分だけ酸性の時間が長引きます。うがいだけでも挟むと違います。

完璧を目指さないことが、いちばんのコツです。できない日があっても、翌日にまた戻ればかまいません。

よくある質問

よくある質問

Q. つわりで歯みがきができません。
A. 無理をしないでください。ヘッドの小さい歯ブラシに替える、下を向いて磨く、歯みがき剤を使わない、体調のよい時間帯に磨くなどの工夫が有効です。うがいだけでもしないよりずっとよいので、できる範囲で続けましょう[1]。

Q. 治療は産後まで待ったほうがよいですか?
A. 産後は育児に追われて、通院の時間を取ることが難しくなる方がほとんどです。安定期に済ませておくほうが現実的です。痛みがある場合は時期を問わず、まずご相談ください。

Q. 麻酔は赤ちゃんに影響しませんか?
A. 歯科で使用する局所麻酔は使用量が少なく、通常の範囲であれば胎児への影響はないとされています[1]。痛みを我慢するストレスのほうが負担になることもありますので、ご相談ください。

Q. 授乳中も治療できますか?
A. できます。お薬を処方する場合も、授乳中に配慮した選択が可能です。授乳中であることをお伝えください。

Q. 子どもを連れて行っても大丈夫ですか?
A. 当院の診療室はすべて個室で、ベビーカーのまま入室できます。周囲を気にせず受診いただけますので、安心してお越しください。

まとめ

妊娠中の歯医者まとめ

妊娠中は、つわりやホルモンバランスの変化から虫歯・歯周病に注意が必要な時期です。妊娠中でも、適切な時期であれば歯科治療は可能です。産後は歯科医院に行く時間が取れないことが多いので、妊娠中に虫歯・歯周病の確認とクリーニングを行い、口の中を清潔に保っておきましょう。

妊婦歯科健診のおすすめ

妊婦歯科健康診査

篠塚歯科医院はマタニティ歯科にも注力し、東京都墨田区の「妊婦歯科健康診査」の実施医療機関です。妊娠中と出産後1年未満の間に、それぞれ1回ずつ無料で健診を受けていただけます。

妊娠後期はお腹が大きくなり、診療チェアに横たわるのが難しい場合もあります。出産後は子育てに追われ、健診のタイミングを逃してしまうお母さんも多くいらっしゃいます。安定期に入ったら、痛みなどの症状がなくても、まずはお口のチェックにご来院ください。受診をご希望の方は、ご来院の際に「墨田区妊婦歯科健康診査票」と母子健康手帳をご持参ください。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. 日本歯科医師会「テーマパーク8020:妊娠時の歯やお口のケア」 資料を開く
  2. Michalowicz BS ほか. Examining the safety of dental treatment in pregnant women. J Am Dent Assoc. 2008;139(6):685-695. PubMed
  3. Hagai A ほか. Pregnancy outcome after in utero exposure to local anesthetics as part of dental treatment: A prospective comparative cohort study. J Am Dent Assoc. 2015;146(8):572-580. PubMed
  4. 東京都歯科医師会「歯科治療のX線撮影は安全です!―放射線と歯科X線撮影のお話―」 資料を開く
  5. Kelaranta A ほか. Radiation exposure to foetus and breasts from dental X-ray examinations: effect of lead shields. Dentomaxillofac Radiol. 2016;45(1):20150095. PubMed
  6. 国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター「妊娠中のお薬Q&A」 資料を開く
  7. Moliner-Sánchez CA ほか. Effect of per Capita Income on the Relationship between Periodontal Disease during Pregnancy and the Risk of Preterm Birth and Low Birth Weight Newborn. Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(21):8015. PubMed
  8. Iheozor-Ejiofor Z ほか. Treating periodontal disease for preventing adverse birth outcomes in pregnant women. Cochrane Database Syst Rev. 2017;6(6):CD005297. PubMed

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