8020運動と健康寿命の関係ご存じですか?予防歯科について歯医者が解説

こんにちは、篠塚歯科医院です。
皆さんは「8020(はちまるにいまる)運動」をご存じですか。日本は世界的にみて平均寿命が長い長寿大国です。いつまでも元気に過ごすには健康に気をつける必要がありますが、健康と聞くと食生活や運動をイメージされる方が多いのではないでしょうか。バランスの取れた食事を摂るには、何でも噛める健康な歯が欠かせません。
8020運動は、歯と全身の健康を守るために厚生労働省と日本歯科医師会が推進する運動です。今回は、8020運動とはどのようなものか、歯と全身の健康の関わり、そして達成のポイントを解説します。
目次
8020運動とは?

8020運動は、80歳になっても20本以上自分の歯を保つことを目標に掲げた運動です。なぜ20本かというと、20本以上の歯があれば食事を選ばずに、好きなものを満足に食べられるからです。
歯が20本未満になると、残っている歯への負担が増します。普通に食事をしているだけで歯にダメージが加わるため、残った歯の寿命も短くなり、さらに歯を失う可能性が高くなる——という悪循環に入ってしまいます。
この運動が始まった当初、達成率はわずか7%(残っている歯の平均本数は4〜5本)でした。それが厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査では、8020達成者の割合は51.6%と、およそ半数まで到達しています。日本人の口の健康は、着実に改善してきているのです。
歯の本数は、全身の健康と寿命に関わる

「歯が多いと健康にいい」と言われても、ピンとこないかもしれません。そこで、日本人を対象にした大規模な追跡研究の結果をご紹介します。
高齢者を10年間追跡した日本老年学的評価研究(JAGES)では、歯が20本以上ある人に比べて、歯の少ない人は認知症になるリスクが高いことが示されました。さらに注目すべきは「認知症にならずに過ごせる期間」です。65歳時点で歯が20本以上ある人は、認知症のない期間が男性で16.43年・女性で18.88年だったのに対し、歯が0本の人は男性14.40年・女性17.12年と短くなっていました(Kiuchiほか「Number of Teeth and Dementia-free Life Expectancy」Journal of the American Medical Directors Association 第25巻11号 105258, 2024年)。
同じ研究では、総寿命も歯が20本以上ある人のほうが長いという結果でした。歯を守ることは、単に「食べられる」だけでなく、元気に過ごせる年数そのものに関わっているのです。
また、口の中の衛生状態としっかり噛めることは、誤嚥性肺炎の予防や日常生活の動作にも関わります。さらに、歯を失う最大の原因である歯周病は、糖尿病や脳梗塞・心筋梗塞との関連も指摘されています。
8020を達成するための3つのポイント

①自宅でのセルフケア
歯を失う大きな原因は歯周病と虫歯です。どちらも、細菌のかたまりであるプラークをしっかり取り除いて口の中を清潔に保つことが予防の基本になります。
ただし、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れは落としきれません。デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具を積極的に使い、隅々まで磨きましょう。加えて、睡眠不足・偏った食生活・ストレスは抵抗力を下げ、細菌が優位になりやすい環境をつくります。不規則な生活に心当たりのある方は、生活習慣の見直しもあわせて行いましょう。
②歯科医院でのプロフェッショナルケア
3か月〜半年に1回の頻度で、定期的に歯科医院に通うことも有効です。定期受診では、自己チェックでは見落としがちな虫歯や歯ぐきの炎症、磨き残しを指摘してもらえます。早期に発見できれば、歯を失うリスクも下がります。また、歯ブラシで落とせない歯石や着色汚れを専用の器械で除去し、虫歯・歯周病になりにくい環境に整えていきます。
その効果を示す有名な研究があります。予防プログラムを30年間続けた成人を追跡した報告では、う蝕や歯周病の発生、歯を失う数がいずれも非常に少なかったと示されています(AxelssonほかJournal of Clinical Periodontology 第31巻9号 749-757, 2004年)。30年間で新しくできた虫歯は平均1.2〜2.1本という結果でした。継続的な予防管理には、それだけの力があります。
③歯並びを整える
歯並びが悪くセルフケアが十分にできないと、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。虫歯・歯周病は、食べかすや磨き残しがある部分に起こりやすいためです。歯並びが乱れていると歯ブラシや補助用具が届きにくく、慢性的に汚れがたまった状態になりがちです。
セルフケアが難しい場合は、矯正で歯並びを整えるのも有効な手段です。整った歯並びはブラッシングがしやすく、磨き残しのリスクを減らせます。見た目のためだけでなく、「一生自分の歯で噛むため」の選択肢として考えてみてください。
年代別に意識したいこと
8020は「80歳になってから頑張るもの」ではありません。年代ごとに、守るべきポイントが変わります。
- 20〜30代……虫歯の再発(詰め物の下の虫歯)と、親知らずの管理。ここで削る回数を減らせるかが、後の本数を左右します。
- 40〜50代……歯周病が静かに進む年代です。自覚症状がないうちに、歯ぐきの検査を受けておきましょう。
- 60代〜……歯ぐきが下がって露出した根の部分の虫歯(根面う蝕)と、噛み合わせの変化に注意します。唾液が減る方も増えるため、フッ素の活用が効いてきます。
いずれの年代でも共通するのは、「失ってから対処する」のではなく「失う前に見つける」ことです。一度失った歯は戻りません。
よくある質問

Q. すでに何本か歯を失っています。もう8020は無理でしょうか?
A. あきらめる必要はありません。大切なのは「これ以上失わないこと」です。今ある歯を守れば、残る本数は変わってきます。失った部分を適切に補い、噛む力のバランスを整えることも、残った歯を守ることにつながります。
Q. 何歳から気をつければよいですか?
A. 早いほどよいのは確かですが、「気づいたとき」がいちばん良いタイミングです。何歳からでも、予防を始めた分だけ結果は変わります。
Q. 親知らずも20本に数えますか?
A. 8020運動でいう歯の本数には、通常、親知らずは含めません。親知らずを除いた28本のうち、20本以上を保つことが目標になります。
Q. 入れ歯やインプラントは本数に入りますか?
A. 8020が目指すのは「自分の歯」を保つことです。ただし、失った部分を補って噛む機能を保つことも、健康を守るうえで同じくらい大切です。
Q. 痛くないのに定期的に通う意味はありますか?
A. 大いにあります。虫歯も歯周病も、初期には症状が出ません。痛くない時期に見つけて手を打つことが、歯を残す最短ルートです。
まとめ

8020運動は、80歳で20本以上の歯を保つことを目指す運動です。現在の達成率は約51.6%。歯を多く保つことは、食事の楽しみだけでなく、認知症のない期間や寿命そのものにも関わることが、国内の研究で示されています。
達成のポイントは、歯を失う二大原因である歯周病と虫歯を予防すること。どちらの原因もプラークですから、自宅でのセルフケアに加え、歯科医院での定期メンテナンスを積極的に受けましょう。定期メンテナンスでは、虫歯・歯周病のチェック、磨けていない部分の指導、歯石や着色の除去を行います。
予防歯科を実践して、歯を多く残すだけでなく、全身の健康と健康寿命を延ばしていきましょう。
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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭




