【歯が溶ける?】酸蝕症の原因と今日からできる4つの対策【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「毎日きちんと磨いているのに、前歯が薄く透けてきた気がする」「甘いものを控えているのに歯がしみる」「歯の先が欠けて丸くなってきた」——こうした変化に心当たりはありませんか。

それは虫歯ではなく、酸蝕症(さんしょくしょう)かもしれません。虫歯とはまったく別の仕組みで歯が失われていく状態で、歯みがきを頑張るほど悪化することさえあるのが厄介なところです。今回は、浅草・本所吾妻橋エリアで予防歯科に力を入れている当院が、酸蝕症の見分け方と、今日から実践できる防ぎ方を解説します。

酸蝕症とは? 虫歯とはまったく別のもの

酸蝕症とは、飲食物や胃酸に含まれる「酸」そのものによって、歯の表面のエナメル質が溶けてしまう状態のことです。虫歯との違いは、原因が細菌かどうかにあります。

  • 虫歯… 虫歯菌が糖を分解して酸をつくり、その酸が歯を溶かす。菌のいる特定の場所(歯と歯の間、溝、歯ぐきの際)から穴があく
  • 酸蝕症… 外から入ってきた酸が直接歯を溶かす。酸が触れた面全体が広く浅く溶けていく

エナメル質は、およそpH5.5より酸性の環境にさらされると溶け始めます。これは臨界pH(りんかいピーエイチ)と呼ばれる目安で、実は身のまわりの飲みものの多くがこの数値を下回っています。つまり酸蝕症は、虫歯菌がいなくても、甘いものを食べていなくても起こりうるのです。

そして酸蝕症のもうひとつの特徴が、穴があくのではなく、全体が均一に薄くなっていくという進み方です。痛みも出にくく、鏡で見ても「なんとなく変わった気がする」程度にしか感じられません。だからこそ、気づいたときには大きく進んでいることが少なくないのです。

日本人の4人に1人にみられます

「そんな症状、聞いたことがない」と思われるかもしれませんが、決して珍しいものではありません。日本の成人を対象に酸蝕の有無を調べた研究では、26.1%——およそ4人に1人に酸蝕による歯の摩耗の徴候がみられたと報告されています(Kitasakoほか「Age-specific prevalence of erosive tooth wear by acidic diet and gastroesophageal reflux in Japan」Journal of Dentistry 第43巻4号 418-423, 2015年)。

内訳を見ると、エナメル質にとどまる段階が19.1%、その下の象牙質まで露出している段階が6.5%でした。そしてこの研究では、酸性の果物や飲みものを頻繁にとることが、どの年代でも酸蝕と有意に関連していたことも示されています。特別な人だけの問題ではなく、日常の食習慣の延長線上にある——それが酸蝕症です。

原因① 飲食物からの酸(外因性)

水を飲む女性 ドライマウス(口腔乾燥症)のイメージ

酸蝕症の原因として、まず思い浮かべていただきたいのが日常の飲食物です。以下はいずれも、エナメル質が溶け始めるpH5.5を下回る酸性度をもつものの代表です。

  • 炭酸飲料(コーラ、サイダー、無糖の炭酸水も酸性です)
  • 柑橘類とその果汁(レモン、グレープフルーツ、オレンジジュース)
  • スポーツドリンク・エナジードリンク
  • お酢を使ったもの(酢のもの、ドレッシング、飲む酢の健康習慣)
  • ワイン、酎ハイ、梅酒などのお酒
  • ビタミンCのサプリメントやのど飴(口の中で長くとどまるため要注意)

ここで大切なのは、「何を飲むか」より「どう飲むか」のほうが影響が大きいということです。同じ1本の炭酸飲料でも、食事と一緒に短時間で飲み切るのと、デスクに置いて2時間かけてちびちび飲むのとでは、歯が酸にさらされている時間がまったく違います。酸蝕症は「量」ではなく「回数と時間」の病気だとお考えください。

特に見落とされがちなのが、健康のために続けている習慣です。毎朝のレモン水、食後の飲む酢、運動中のスポーツドリンク、寝る前のビタミンC。どれも体には良いものですが、飲み方によっては歯にとって負担になります。やめる必要はありません。飲み方を少し変えるだけで大きく変わります。

原因② 体の中からの酸(内因性)

もうひとつ、ご本人に自覚のないまま進むのが胃酸によるものです。胃酸のpHは1〜2程度と、飲食物とは比べものにならないほど強い酸性です。これが逆流してお口に達すると、歯は急速に溶かされます。

逆流性食道炎(胃食道逆流症)と酸蝕症の関係を調べた研究をまとめた解析では、28件の研究・4,379人のデータから、逆流性食道炎のある方の51.5%に酸蝕がみられ、そうでない方の21.4%と比べてオッズ比5.00と明確に高かったと報告されています(YanushevichほかDentistry Journal 第10巻7号 126, 2022年)。

胸やけ、喉の違和感、朝起きたときの口の中の酸っぱさ、げっぷが多い——こうした症状がある方は、内科での相談をおすすめします。歯の側だけを治しても、酸が上がってくる原因が続いていれば同じことが繰り返されるからです。歯科と内科の両輪で対応することが、遠回りのようで確実な道になります。

また、つわりが続いている時期や、嘔吐を伴う体調不良のときも同じ状態が起こります。そうしたときは無理に磨かず、まず水やうがい薬で口をゆすいでいただくほうが安全です。

酸蝕症のセルフチェック

次の項目に心当たりがあれば、一度お口の中を見せていただくことをおすすめします。

  • 前歯の先が透けて見える、うっすら灰色がかっている
  • 歯の先が欠けたり、丸みを帯びてきた
  • 奥歯の噛む面のくぼみが浅くなり、平らになってきた
  • 詰め物のふちだけが歯より高く浮き出て見える(周りの歯が溶けたサインです)
  • 甘いものではなく、冷たいものや風でしみる
  • 歯の表面のツヤがなくなり、黄ばんで見える(エナメル質が薄くなって内側の象牙質が透けています)

特に「詰め物のふちが浮いて見える」は、酸蝕症に特徴的なサインです。詰め物の材料は酸で溶けませんが、周りの自分の歯は溶けます。その差が段差として現れるのです。

今日からできる4つの対策

① 酸性のものを口に入れる「回数」を減らす

だらだら飲みをやめ、食事やおやつの時間にまとめる。これが最も効果の大きい対策です。仕事中の水分補給は、水かお茶に替えるだけで酸にさらされる時間が大きく減ります。炭酸飲料や柑橘系のジュースを飲むときは、ストローを使って前歯に触れる量を減らすのも有効です。

② 酸性のものの直後は「磨かず、すすぐ」

これが今回いちばんお伝えしたい点です。酸で軟らかくなった直後のエナメル質を歯ブラシでこすると、失われる量が増えます。清涼飲料水による酸蝕とブラッシングの影響を調べた研究でも、酸によるエナメル質の喪失は、その後のブラッシングによる摩耗によって悪化することが示されています(HemingwayほかBritish Dental Journal 第201巻7号 447-450, 2006年)。

ですから、酸性のものをとった直後にすべきことは「すぐ磨く」ではなく「水で口をゆすぐ」です。唾液には溶けかけた歯を元に戻す(再石灰化)力がありますので、しばらく時間をおいてから磨いてください。「食べたらすぐ磨く」が正解にならない場面がある、というのは意外に知られていません。

③ フッ素で歯の表面を強くする

フッ素はエナメル質を酸に溶けにくい性質に変えてくれます。ご家庭ではフッ素配合の歯磨き粉を使い、すすぎは少量の水で1回にとどめてフッ素をお口に残しましょう。当院の予防歯科では、家庭用の約10倍濃度の高濃度フッ素を塗布して歯を再石灰化させる処置を行っています。酸蝕のリスクが高い方には、通院時のフッ素塗布を組み合わせることをおすすめしています。

④ 唾液の量を保つ

唾液は、酸を薄めて洗い流し、失われたミネラルを補う天然の防御装置です。よく噛んで食べる、こまめに水分をとる、口呼吸を鼻呼吸に切り替える、といった工夫で唾液の働きは保てます。お薬の副作用で口が渇いている方は、その旨をお伝えください。対策の組み立て方が変わります。

進行してしまった場合の歯科の対応

一度溶けて失われたエナメル質は、自然には元に戻りません。ただし、進み方の段階によって対応は変わります。

  • ごく初期… 原因となる習慣の見直しとフッ素で、それ以上進ませないことを目指します。削りません。
  • しみる症状がある… 知覚過敏に対する処置を行いながら、原因への対応を並行します。
  • 形が変わり、噛み合わせに影響している… 詰めもの・被せもので歯の形を回復します。

大切なのは、どの段階であっても「原因を止めること」が治療の一部だということです。原因が続いたまま形だけ回復しても、周りの歯が溶け続ければ同じ問題が繰り返されます。当院ではまずお口の状態を記録し、生活習慣を一緒に振り返るところから始めています。

よくある質問

Q. 無糖の炭酸水なら歯に影響はありませんか?
A. 糖が入っていなければ虫歯のリスクは下がりますが、酸性であることに変わりはありません。炭酸水は二酸化炭素が溶けることで酸性になっています。水分補給のたびに炭酸水という習慣がある方は、回数を意識していただくと安心です。

Q. 酸蝕症は治りますか?
A. すでに失われた部分が自然に戻ることはありませんが、これ以上進ませないことは十分に可能です。ごく初期であれば、習慣の見直しとフッ素だけで経過を見られることも少なくありません。早く気づくほど、削らずに済む可能性が高くなります。

Q. しみるので、知覚過敏用の歯磨き粉を使えばよいですか?
A. 症状をやわらげる助けにはなりますが、それだけでは原因が止まりません。しみている理由が酸蝕症なのか、虫歯や歯のひびなのかで対応がまったく変わります。1〜2か月使っても変化がない場合は、自己判断を続けずご相談ください。

Q. 子どもでも酸蝕症になりますか?
A. なります。スポーツドリンクや乳酸菌飲料、100%ジュースを日常的に飲むお子さんは特に注意が必要です。のどが渇いたときの飲みものを水やお茶にするだけでも、リスクは大きく下がります。

まとめ

酸蝕症は、虫歯菌がいなくても、甘いものを控えていても起こります。日本の成人のおよそ4人に1人にその徴候がみられ、原因は日常の飲食物と、胃酸の逆流という体の中からの要因の2つです。

防ぐための考え方はシンプルです。酸に触れる「回数と時間」を減らし、直後は磨かずにすすぎ、フッ素で歯を強くし、唾液の力を保つ。この4つを、無理のない範囲で続けていただければ十分です。健康のための習慣をやめる必要はありません。少し変えるだけで、歯は守れます。

「前歯が透けてきた」「詰め物のふちが浮いて見える」——そうしたサインに気づかれた方は、削る治療が必要になる前の今こそ、確認しておくべきタイミングです。どうぞお気軽にご相談ください。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

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