2026年10月31日
【下の前歯が見えない?】ディープバイト(過蓋咬合)の原因・セルフチェックと治し方【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「鏡で見たら、下の前歯がほとんど見えない」「上の前歯の裏の歯ぐきに、下の歯が当たる気がする」。そんなかみ合わせが気になって、調べている方もいるのではないでしょうか。
かみ合わせが深く、下の前歯が上の前歯に大きく隠れる状態を、ディープバイト(過蓋咬合〔かがいこうごう〕)といいます。
この記事では、見分け方と原因、放っておくと起こりうることをご説明します。子どもと大人の治療、治したあとの後戻り、健康保険が使える場合もお伝えします。
この記事のポイント
- ディープバイト(過蓋咬合)は、奥歯でかんだときに、下の前歯の半分以上が上の前歯に隠れるかみ合わせです。
- 症状がなければ、急いで治さなくてよいことも多いです。歯ぐきに当たる・前歯がすり減るときは、早めにご相談ください。
- 子どもはあごの成長を生かした治療、大人はワイヤーやマウスピースの矯正が中心です。治したあとは、保定装置で後戻りを防ぎます。
ディープバイト(過蓋咬合)とは?見分け方とセルフチェック
「かみ合わせが深い、と言われたけれど、どういうこと?」と思う方も多いでしょう。
ひとことで言うと、上の前歯が下の前歯に、深くかぶさりすぎている状態です。

下の前歯が「半分以上」隠れていませんか
ふつうのかみ合わせでも、上の前歯は下の前歯に少しかぶさっています。下の前歯の先のほうが少し隠れるくらいが、平均的な深さです[1]。
隠れる部分が下の前歯の半分を超えると、ディープバイトと考えます[2]。下の前歯がまったく見えないほど深い方もいます。
「歯」のタイプと「あごの骨格」のタイプ
ディープバイトは、原因によって大きく2つのタイプに分かれます[1]。
- 歯が原因のタイプ…前歯が伸びすぎている、奥歯の高さが足りないなど、歯の生え方によるもの
- あごの骨格が原因のタイプ…顔の下半分が短めの骨格など、骨の形によるもの
2つが重なっていることもあります。タイプによって治し方が変わるので、検査で見きわめることが大切です。
鏡でできるセルフチェック
「自分もそうかも」と思ったら、まず鏡で見てみましょう。
奥歯までしっかりかんで、唇を指で軽く広げます。下の前歯がどのくらい見えるかを確かめてください。

次のようなときは、ディープバイトかもしれません。
- 下の前歯が隠れる…奥歯でかむと、下の前歯が半分以上見えない
- 歯ぐきに当たる…上の前歯の裏の歯ぐきに、下の前歯の先が当たって痛む・跡がつく
- 前歯がすり減る…前歯の先が平らになった、欠けた
- 上の前歯が内側に倒れている…上の前歯が、まっすぐより奥へ傾いて見える
鏡だけでは、正確な深さまでは分かりません。当てはまるものがあれば、歯科医院で確かめてもらうと安心です。
めずらしいかみ合わせではありません
「こんなかみ合わせ、自分だけ?」と心配になるかもしれません。でも、ディープバイトはよく見られるかみ合わせです。
世界の調査をまとめた報告では、かみ合わせが深い人は、およそ2割でした[3]。
日本の国の調査でも、12〜20歳のおよそ3割で、上下の前歯の重なりが4mm以上ありました[4]。ほとんどは軽いもので、とても深い人はごくわずかでした[4]。
深めだから、すぐに治療が必要というわけではありません。困りごとがあるかどうかが、大切な目安になります。
ディープバイトの原因
「どうして、こんなかみ合わせになったの?」と気になりますよね。
原因は1つではありません。生まれ持った骨格に、毎日の癖や歯の変化が重なって起こると考えられています[1]。
あごの骨格と遺伝
顔の下半分が短めの骨格の方は、かみ合わせが深くなりやすいといわれます[1]。
下あごが上あごより後ろに下がっている方も、かみ合わせが深くなりやすい傾向があります[1]。上の前歯が内側に倒れたタイプにも、深いかみ合わせが多くみられます[1]。
あごの形は親から子へ受け継がれやすく、遺伝の関わりを調べる研究も進められています[1]。ご家族に同じようなかみ合わせの方がいれば、お子さんも早めに見てもらうと安心です。
指しゃぶり・舌や唇の癖
指しゃぶりや長く続くおしゃぶり、舌を前に押し出す癖も、原因の1つになります[1]。
舌を横の歯の間にはさむ癖があると、奥歯が十分な高さまで生えないことがあります[1]。奥歯が低いぶん、前歯のかみ合わせが深くなります。
癖のやめ方は、指しゃぶりと歯並びやおしゃぶりと歯並びの記事でもご紹介しています。
大人になってから深くなることも
奥歯をむし歯や歯周病で失うと、かみ合わせを支える柱がなくなります。すると、あごが閉じすぎて、前歯が深くかみこむことがあります[2]。
歯ぎしりや、酸っぱい飲み物などで歯がすり減ることも、かみ合わせが深くなる原因になります[1]。
奥歯を失ったままにしないことが、前歯を守ることにもつながります。
放っておくとどうなる?起こりうる問題
「痛くないなら、このままでもいい?」と思う方も多いでしょう。
実は、ディープバイトの多くは症状がありません。見た目も気にならなければ、治療を急がない方も多いです[2]。ただ、次のような問題が出ているときは、早めの相談がおすすめです。
下の前歯が、上あごの歯ぐきに当たる
かみ合わせがとても深いと、下の前歯の先が、上の前歯の裏の歯ぐきに当たります[2]。
当たる場所が赤く腫れたり、へこんだり、口内炎のような傷になったりします[2]。歯ぐきが下がって、歯の根もとが見えてくることもあります。
痛いと歯みがきがしにくくなり、汚れが残って、歯ぐきの炎症が起きやすくなります[2]。
前歯のすり減りや欠け
上下の前歯が強くこすれ合うため、前歯の先がすり減りやすくなります[2]。すり減って薄くなった歯の先は、欠けることもあります。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、とくに注意しましょう。寝るときのマウスピースで歯を守る方法もあります。くわしくは歯ぎしり・食いしばりのページをご覧ください。
中高生を調べた研究では、かみ合わせが深い子は、口の不快感や、かむ・話すときの不便を感じやすい傾向でした[5]。
顎関節症との関係は、まだはっきりしていません
「かみ合わせが深いと、顎関節症になる」と聞いたことがあるかもしれません。
かみ合わせの深い大人30人を調べた研究では、そうでない人より、あごの症状や頭痛が多くみられました[6]。
一方、地域の住民を広く調べた研究をまとめた報告では、はっきりした関係は見つかりませんでした。かみ合わせが深い人のほうが、症状が少ないという結果さえありました[7]。
最近の報告でも、関係はみられるものの、原因とまでは言えないとされています[8]。
今のところ、かみ合わせが深いだけで顎関節症になる、とは言い切れません。あごの痛みや口の開けにくさがあるときは、かみ合わせとは別に、あごの診察を受けましょう。
歯周病との関係
子どもや10代で、歯並びと歯ぐきの炎症の関係を調べた研究をまとめた報告があります。関係がありそうな歯並びもある一方で、まだ確かなことは言えないとされています[9]。
ただ、歯ぐきに当たって傷ができると、その周りは汚れがたまりやすくなります。毎日の歯みがきと定期検診で、歯ぐきを守りましょう。
子どもの治療と始めどき
「健診で『かみ合わせが深い』と言われた。すぐに治したほうがいい?」と迷う保護者の方は多いです。
3歳児健診で言われたら
日本小児歯科学会は、3歳児健診で、上下の前歯の重なりが4mm以上のものを「過蓋咬合」の目安にしています。下の前歯が隠れて、見えない状態です[10]。
当てはまると「経過観察」となり、かかりつけの歯科医院で相談するよう勧められています[10]。
3歳で言われても、すぐに装置を使うとは限りません。指しゃぶりなどの癖や、歯の生え方を一緒に見守っていきましょう。
治療の始めどき
子どもの治療は、あごの成長や、奥歯が生えてくる力を生かせるのが強みです。
深いかみ合わせの子どもの治療を、まとめた報告があります。大人の歯への生えかわりの後半から、生えそろうころに治療した子のほうが、結果が安定しやすい傾向でした[11]。
小学校の高学年から、中学生のはじめごろにあたります。ただ、まとめられた研究はまだ少なく、さらに確かめる必要があるとされています[11]。
上の前歯が内側に倒れたタイプでは、治療法どうしを比べた質の高い研究が、まだありません。どの方法がいちばん良いかは、決まっていないのが現状です[12]。
だからこそ、お子さんごとに、歯の生え方や癖、あごの成長を見ながら時期を決めることが大切です。
当院の小児矯正
当院では、6歳〜15歳ごろを小児矯正の時期と考えています。歯の生え方や、装置を使うお子さんの協力の度合いで、始める時期は変わります。
装置は、マウスピース型の装置(プレオルソ)や、あごの幅を広げる拡大床などから、検査の結果に合わせて選びます。
骨格によっては、小児矯正のあとに大人の矯正が必要になることも多くあります。費用と始める年齢は、小児矯正の費用の記事でもご紹介しています。
大人の治療:ワイヤー矯正・マウスピース矯正・外科的矯正治療
「大人になってからでも治せるの?」と心配される方もいます。歯を動かす矯正は、大人になってからでもできます。
前歯を沈め、奥歯の高さを整える
大人はあごの成長を使えないので、歯を動かして、かみ合わせを浅くします。
主な方法は、伸びすぎた前歯を沈める動きと、低い奥歯を少し伸ばす動きです[1]。顔の形やタイプによって、どちらを中心にするかを決めます。
歯並び全体を動かすため、前歯だけを整える部分矯正では、ディープバイトは治せません。全体の矯正(全顎矯正)が必要です。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正
かみ合わせがとても深い大人で、ワイヤーとマウスピースを比べた研究では、どちらも同じくらい良くなりました[13]。
ただ、マウスピース矯正では、計画したほど浅くならないことがあります。ある研究では、実際に浅くなったのは、計画した分の平均4割ほどでした[14]。
もとが深いほど、計画どおりに進みにくい傾向もありました[14]。そのため、途中でマウスピースを作り直して調整することもあります。
当院では、ワイヤー矯正とマウスピース矯正(インビザライン)のどちらも行っています。マウスピース矯正は、1日20時間以上つけることが大切です。
どちらが向いているかは、精密検査の結果をもとにご説明します。
あごの骨のずれが大きいとき
あごの骨格のずれが大きいと、矯正だけでは治しきれないことがあります。
そのときは、あごの骨の手術と矯正を組み合わせる「外科的矯正治療」を考えます。手術の前後に矯正で歯並びを整え、手術であごの位置を整えます。
健康保険が使えるのは、限られた場合です
矯正の治療は、ふつうは健康保険がききません。保険が使えるのは、次のような場合に限られます[15]。
- 国が定めた病気…唇顎口蓋裂など、生まれつきの病気が原因のかみ合わせ
- 歯が生えてこない…前歯や小臼歯の大人の歯が3本以上、骨の中に埋まって出てこない
- 顎変形症…あごの骨を切る手術が必要な、骨格の大きなずれ(手術の前後の矯正)
2026年4月からは、対象がいくつか加わりました[16]。
ディープバイトで保険が使えるのは、主に、手術が必要な顎変形症と診断された場合です。
また、保険で治療できるのは、国に届け出た医療機関だけです[15]。手術が必要かもしれないときは、対応できる医療機関をご案内します。
治したあとの後戻りと保定
「せっかく治しても、また深くなるの?」と心配になりますよね。
ディープバイトは、治したあとに少し戻りやすいかみ合わせです。でも、良くなった状態の多くは、長く保たれることが分かっています。
たくさんの研究をまとめた報告では、治療前に平均約5mmあった深さが、治療で半分ほどになりました[17]。
長い年月のあとには少し深く戻っていましたが、改善の多くは保たれていました[17]。もとが深いほど、戻りやすい傾向もみられました。
ただ、まとめられた研究の多くは、治療した人の記録を集めたものです。研究の質は、まだ高くないとされています[17]。
保定装置(リテーナー)を決められたとおりに
矯正のあとは、歯が元の位置に戻らないように、保定装置(リテーナー)を使います。
当院では、矯正にかかった期間と同じ〜2年ほどを、保定の期間にしています。はじめは長い時間つけ、その後は寝るときだけにしていきます。
保定の期間が終わっても、歯は少しずつ動きます。そのあとも、ときどきつけると歯並びを保ちやすくなります。
舌や唇の癖が残っていると、後戻りしやすくなります。癖の改善も一緒に続けましょう。保定装置については、リテーナーの記事もご覧ください。
よくある質問

Q. ディープバイトは、自分で治せますか?
A. 歯の位置やあごの骨格は、トレーニングや癖を直すだけでは変えられません。ただ、舌や唇の癖を直すことは、後戻りを防ぐうえでも大切です。気になるときは、歯科医院でご相談ください。
Q. 大人の矯正の費用は、どのくらいですか?
A. 当院の全体の矯正(全顎矯正)は、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも880,000円(税込)です。ディープバイトは部分矯正では治せないため、全体の矯正になります。くわしくは料金表のページをご覧ください。
Q. かみ合わせが深いと、顎関節症になりますか?
A. 関係を調べた研究はありますが、かみ合わせが深いだけで顎関節症になるとは、まだ言い切れません。あごの痛みや口の開けにくさがあるときは、早めに受診しましょう。
Q. 子どもが3歳児健診で「過蓋咬合」と言われました。すぐに治療が必要ですか?
A. すぐに装置を使うとは限りません。癖や歯の生え方を見守りながら、かかりつけの歯科医院で治療の時期を相談しましょう。当院では、6歳〜15歳ごろを小児矯正の時期と考えています。
まとめ
- ディープバイト(過蓋咬合)は、下の前歯の半分以上が上の前歯に隠れる、深いかみ合わせです
- あごの骨格や遺伝、指しゃぶりや舌の癖、奥歯の喪失やすり減りなどが重なって起こります
- 多くは症状がありませんが、歯ぐきに当たる・前歯がすり減るときは、早めに相談しましょう
- 子どもは成長を生かした治療、大人はワイヤーやマウスピースによる全体の矯正が中心です。骨格のずれが大きいときは、手術を組み合わせます
- 治したあとは、保定装置で後戻りを防ぎます
「かみ合わせが深いかも」と思ったときが、相談のタイミングです。お子さんでも大人の方でも、お気軽にご相談ください。
小児矯正についての詳細はこちらをクリック!
大人の矯正についての詳細はこちらをクリック!

墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- Watted N ほか. Comprehensive Deciphering the Complexity of the Deep Bite: Insight from Animal Model to Human Subjects. J Pers Med. 2023;13(10):1472. PubMed
- Beddis HP ほか. The restorative management of the deep overbite. Br Dent J. 2014;217(9):509-515. PubMed
- Alhammadi MS ほか. Global distribution of malocclusion traits: A systematic review. Dental Press J Orthod. 2018;23(6):40.e1-40.e10. PubMed
- 厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」(表26 咬合の状況〔オーバーバイト〕) 資料を開く
- Araki M ほか. Associations between Malocclusion and Oral Health-Related Quality of Life among Mongolian Adolescents. Int J Environ Res Public Health. 2017;14(8):902. PubMed
- Sonnesen L ほか. Temporomandibular disorders and psychological status in adult patients with a deep bite. Eur J Orthod. 2008;30(6):621-629. PubMed
- Gesch D ほか. Association of malocclusion and functional occlusion with temporomandibular disorders (TMD) in adults: a systematic review of population-based studies. Quintessence Int. 2004;35(3):211-221. PubMed
- Pascu L ほか. Occlusion and Temporomandibular Disorders: A Scoping Review. Medicina (Kaunas). 2025;61(5):791. PubMed
- Szyszka-Sommerfeld L ほか. The Relationship Between Malocclusion and Periodontal Health in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med. 2026;15(3):1155. PubMed
- 日本小児歯科学会「3歳児歯科健康診断における不正咬合の判定基準」 ページを開く
- El Guennouni B ほか. Orthodontic treatment of deep bite in mixed dentition and/or early permanent dentition: What about stability? – A systematic review. Int Orthod. 2025;23(2):100956. PubMed
- Millett DT ほか. Orthodontic treatment for deep bite and retroclined upper front teeth in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD005972. PubMed
- Fujiyama K ほか. Comparison of clinical outcomes between Invisalign and conventional fixed appliance therapies in adult patients with severe deep overbite treated with nonextraction. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2022;161(4):542-547. PubMed
- Blundell HL ほか. Predictability of overbite control with the Invisalign appliance. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2021;160(5):725-731. PubMed
- 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」 ページを開く
- 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」(歯科矯正に係る患者の対象等の見直し) 資料を開く
- Huang GJ ほか. Stability of deep-bite correction: A systematic review. J World Fed Orthod. 2012;1(3):e89. PubMed


