【銀歯の下は大丈夫?】詰め物の中で進む虫歯「二次う蝕」サインと予防法【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「昔、治療して銀歯を入れた歯が、また痛くなってきた」「詰め物の縁が黒っぽく見える気がする」——そんな経験はありませんか。一度治療した歯はもう虫歯にならない、と思っている方は少なくありません。しかし実際には、詰め物や被せ物と歯の境目からじわじわと虫歯が再発することがあり、これを歯科では「二次う蝕(にじうしょく)」と呼びます。やっかいなのは、金属や樹脂の下に隠れているため鏡で見ても気づきにくく、痛みが出たときにはかなり進んでいることがある点です。今回は、浅草・本所吾妻橋エリアで「なるべく削らない予防歯科」に力を入れている当院が、二次う蝕が起こる理由・見逃さないためのサイン・防ぐための具体策を、研究データを交えながらやさしく解説します。

二次う蝕(にじうしょく)とは?銀歯の「下」で進む虫歯

二次う蝕とは、詰め物や被せ物を入れた歯に、その修復物と歯の境目から新しくできる虫歯のことです。「二次カリエス」「再発虫歯」と呼ばれることもあります。虫歯を削って詰め物をした時点で治療は完了しますが、その詰め物と歯が接している境目(縁の部分)は、どんなに精密に作られていても顕微鏡レベルではわずかな段差やすき間が残ります。ここに歯垢(プラーク)がたまり、細菌が酸を出すことで、修復物の内側で虫歯が静かに広がっていくのです。

特に銀歯(金属の詰め物・被せ物)は、歯とくっついているのではなく、セメントという接着材で固定されています。このセメントが唾液や噛む力で少しずつ溶けたり劣化したりすると、境目にすき間が生まれ、そこから細菌が入り込みます。金属自体は虫歯になりませんが、その下にある本来の歯は溶けていきます。つまり「銀歯だから安心」ではなく、「銀歯の下こそ、見えないぶん要注意」というのが実際のところです。

なぜ治療した歯が、また虫歯になるのか

二次う蝕が起こる理由はひとつではありません。主に次の4つが重なって起こります。

  • 境目のすき間・段差……修復物と歯の継ぎ目はわずかに凹凸ができやすく、歯ブラシが届きにくい「汚れの隠れ家」になります。
  • 接着材(セメント)の劣化……時間の経過とともにセメントがすり減ったり溶け出したりして、細菌の通り道ができます。
  • 修復物の変形・すり減り……噛む力や歯ぎしりで金属や樹脂がわずかに動いたり欠けたりすると、境目のすき間が広がります。
  • 虫歯のなりやすさそのものが変わっていない……甘いものを摂る回数、唾液の量、歯みがきの精度といった「虫歯になった原因」が治療後もそのままなら、また同じことが起こります。

4つ目は特に大切な視点です。取れてしまった詰め物・被せ物を対象にした国内の調査では、調査した歯の61.6%に二次う蝕が生じていたと報告されており、その要因として「その人の虫歯のなりやすさ」と「使われていた接着材」が大きく関わっていたと結論づけられています[1]。修復物の精度だけでなく、患者さんご自身の口の中の環境がその後を大きく左右する、ということです。

データで見る「詰め物・被せ物はどのくらいもつのか」

「治療した歯はどのくらい持つの?」というご質問をよくいただきます。国内の調査を見てみましょう。岡山市と名古屋市の10の歯科医院で、やり直しまたは抜歯が必要と診断された3,120本の歯を調べた研究では、修復物の平均使用年数はレジン(白い樹脂)5.2年、インレー(詰め物)5.4年、鋳造冠(被せ物)7.1年、アマルガム7.4年でした。そしてレジン・アマルガム・インレーでは、やり直しの原因として二次う蝕が多く見られたと報告されています[2]。

もう少し新しい調査もあります。奥歯の修復物649本を分析した研究では、10年後まで使えていた割合はメタルインレーで67.5%、コンポジットレジン(白い樹脂)で60.4%、メタルクラウンで55.8%でした。そしてやり直しの理由として二次う蝕が占めた割合は、コンポジットレジンで78.2%、メタルインレーで72.4%にのぼりました[3]。やり直しの原因の多くが「新しい虫歯」だという事実は、裏を返せば、虫歯予防を続けられれば修復物はもっと長持ちさせられる、ということでもあります。

これらは1990年代から2000年代の調査で、接着技術や材料は年々進歩していますから、数字はあくまで目安としてお考えください。ただし「治療した歯にも寿命がある」「その主な敵は再発の虫歯である」という傾向は、今も変わっていません。

怖いのは「やり直しの連鎖」。削るたびに歯は小さくなる

二次う蝕でいちばん問題なのは、痛みそのものよりも「治療のくり返し」です。虫歯が再発すれば、古い詰め物を外し、その下の虫歯を取り除いてから、また新しい詰め物を入れます。このとき、修復物は前より大きくなることが多いです。海外で奥歯の修復物のやり直しを判断した1,337件を調べた研究では、70%で修復する面の数が増えていたと報告されました[4]。この論文は、必要以上に早いやり直しはこの連鎖を早めるため避けるべきだ、とも指摘しています。

小さな詰め物が大きな詰め物になり、やがて被せ物になり、神経を取る治療が必要になり、最終的には抜歯に至る——これが歯を失うまでの典型的な道のりです。削れば削るほど、残っている歯は薄く、割れやすく、もろくなります。だからこそ当院では、まず「削らずに済む方法はないか」を考えることを治療方針の柱にしています。

なお、日本歯科保存学会がまとめた「う蝕治療ガイドライン 第2版」にも、白い樹脂の詰め物(コンポジットレジン)の縁に着色や不具合が出た場合や、二次う蝕が見つかった場合について、まるごと作り替えるのではなく「悪いところだけを部分的に直す(補修修復)」という選択肢を検討する項目が設けられています[5]。すべての場合に当てはまるわけではありませんが、「見つけたら全部やり直し」ではなく、状態に応じてできるだけ歯を守る方法を選ぶという考え方が広まってきています。

見逃さないために。二次う蝕のサイン・セルフチェック

二次う蝕は自覚症状が出にくいのが特徴ですが、次のような変化はサインの可能性があります。ひとつでも当てはまる場合は、早めのチェックをおすすめします。

  • 詰め物・被せ物の縁が黒ずんで見える、または白く濁って見える
  • そこだけデンタルフロスが引っかかる、毛羽立つ、切れる
  • 冷たいもの・甘いものがその歯だけしみる
  • 噛んだときに違和感や鈍い痛みがある
  • 詰め物のまわりから嫌なにおいがする、食べ物がよく詰まるようになった
  • 詰め物・被せ物が浮いている感じ、外れかけている感じがする

ただし、これらのサインがまったく出ないまま進行することも珍しくありません。当院のホームページでもお伝えしているとおり、症状が出た時点で、虫歯はかなり進行している可能性が高いのが実際です。特に歯と歯の間で起きた二次う蝕は、外から見ても金属に隠れて確認できません。ご自身でチェックできるのは、あくまで「入口」までと考えておくのが安全です。

歯科医院ではどうやって見つける?

見えない場所の虫歯を確認する最も基本的な方法が、レントゲン検査です。歯と歯の間や修復物の下の虫歯は、レントゲン写真では影として写るため、目で見てもわからない段階で見つけられることがあります。当院では歯科用CTも備えており、必要に応じて立体的に状態を確認します。

また、詰め物の縁のわずかな段差やひび、着色を見極めるには拡大鏡やマイクロスコープが有効です。肉眼では見落としてしまう細かな変化も、拡大して確認することで早い段階で気づくことができます。定期的に同じ歯を記録して比べることで、「去年と比べてここが変わってきた」という判断もしやすくなります。

大切なのは、見つかったからといって、すぐ削るとは限らないということです。ごく初期であれば、フッ素の活用と歯みがきの改善で進行を止められる場合もあります。当院では、歯の表層(エナメル質)にとどまる初期の虫歯は削らず予防処置で対応し、その内側(象牙質)に進んだ段階でも、進行度や部位によっては削らない選択をすることがあります。

二次う蝕が見つかったときの治療

進行している場合は、古い修復物を外して虫歯を取り除き、新しい詰め物・被せ物を入れ直します。神経の近くまで進んでいれば根管治療(神経の治療)が必要になり、治療回数も費用も増えます。早く見つかるほど、削る量も、通院回数も、費用も少なく済むのが虫歯治療の原則です。

入れ直す材料は、保険診療と自由診療から選べます。当院の料金の目安は、保険のプラスチックが詰め物で約2,000〜5,000円・被せ物で約5,000〜7,000円、保険の銀歯が詰め物で約3,000〜5,000円・被せ物で約5,000〜7,000円です。自由診療ではセラミックの詰め物が66,000円・被せ物が110,000〜132,000円、金歯が詰め物77,000円・被せ物132,000円などとなっています(金額は目安で、変更となる場合があります。詳しくは料金ページをご覧ください)。

どの材料を選ぶかも大切ですが、それ以上に結果を左右するのが「治療の精度」と「その後の予防」です。当院では、唾液が入り込まないようゴムのシートで歯を隔離する方法(ラバーダム防湿)や拡大鏡・マイクロスコープを用い、できるだけ長持ちする治療を心がけています。痛みへの配慮としては、表面麻酔と電動麻酔器の併用、笑気麻酔に対応しているほか、症例によってはエルビウム・ヤグレーザーを用いることで、あの「キュイーン」という音や振動のない治療も可能です。

二次う蝕を防ぐ5つのポイント

  1. 境目を意識して磨く……詰め物の縁は歯ブラシの毛先が滑りやすい場所です。歯と修復物の境目に毛先を当て、小刻みに動かしましょう。
  2. フロス・歯間ブラシを毎日使う……二次う蝕が多い歯と歯の間は、歯ブラシだけでは届きません。引っかかりや毛羽立ちは異常のサインでもあり、早期発見にも役立ちます。
  3. フッ素を毎日届ける……フッ素は歯の表面を修復し、酸に溶けにくくします。フッ素入りの歯みがき剤に加え、洗口液や歯科医院での高濃度フッ素塗布を組み合わせると効果的です。
  4. 砂糖は「量」より「回数」で考える……甘いものをだらだら口にする習慣は、口の中が酸性の状態を長引かせます。間食の回数を決めるだけでもリスクは下がります。
  5. 歯ぎしり・食いしばりの対策をする……強い力は修復物を変形させ、境目のすき間を広げます。心当たりのある方はご相談ください。

そして最も確実なのが、定期的なメインテナンスです。当院では「4回からの予防歯科プログラム」として、12枚の口腔内写真撮影、位相差顕微鏡検査、唾液検査、歯周ポケット検査でお口のリスクを調べたうえで、歯石とステインの除去、染め出しを使ったブラッシング指導(磨き残し20%以下が目標)、ポリッシング、高濃度フッ素塗布を行っています。「虫歯になった原因」を突き止めて手を打つことが、修復物を長持ちさせる一番の近道です。

よくある質問

よくある質問

Q. 痛くないのに、詰め物をやり直す必要はありますか?
A. 痛みは判断材料のひとつにすぎません。二次う蝕は神経の近くまで進むまで痛みが出ないことが多く、レントゲンや拡大鏡で確認して初めてわかるケースもあります。一方で、ごく初期であれば削らずに経過を見る選択もあります。まずは検査で「今どの段階か」を確かめることをおすすめします。

Q. 銀歯をセラミックに替えれば、もう虫歯にならないですか?
A. 「なりにくくなる」ことはあっても、「絶対にならない」わけではありません。材料が変わっても歯と修復物の境目は残りますし、歯みがきや食習慣、唾液の状態といった虫歯のなりやすさそのものは変わらないためです。材料選びと予防は、どちらか一方ではなく両輪とお考えください。

Q. 詰め物の縁が黒いのは、すべて虫歯ですか?
A. いいえ。金属の成分による着色や、コーヒー・お茶などによる境目の着色のこともあります。ただし見た目だけで区別するのは難しく、虫歯であれば放置すると内部で広がります。気づいたら自己判断せず、一度ご確認ください。

Q. 治療した歯は、何年ごとに点検すればよいですか?
A. 年単位ではなく、数か月ごとのメインテナンスのたびに毎回チェックするのが理想です。適切な間隔はお口のリスクによって異なるため、検査結果をもとに一人ひとりに合わせてご提案しています。

Q. 昔入れた銀歯が多いのですが、まとめて調べられますか?
A. はい。レントゲンや口腔内写真でお口全体の状態を記録し、優先順位をつけてご説明します。すべてを一度に治す必要はありません。リスクの高いところから順に、できるだけ削らない方法を検討していきます。

まとめ

二次う蝕は、詰め物や被せ物と歯の境目から始まり、修復物の下で静かに広がる「再発の虫歯」です。国内の調査でも、詰め物・被せ物をやり直す理由の多くを二次う蝕が占めており、決してめずらしいトラブルではありません。銀歯そのものは虫歯になりませんが、その下にある大切な歯は溶けていきます。

そして治療をくり返すたびに修復物は大きくなり、歯は少しずつ失われていきます。この連鎖を止める鍵は、痛くなってから通うのではなく「痛くないうちに確認する」習慣です。縁の黒ずみ、フロスの引っかかり、しみる感じといった小さなサインを見逃さず、レントゲンや拡大鏡で早い段階に見つけられれば、削る量を最小限に抑えられます。

そのうえで、フッ素・フロス・間食の回数の見直し・定期的なメインテナンスという当たり前の積み重ねが、修復物の寿命をいちばん確実に延ばしてくれます。当院は「なるべく削らない」を治療方針の柱に、一人ひとりの虫歯のなりやすさを検査で見極めたうえで、予防と治療をご提案しています。

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「昔治した銀歯が気になる」「何年も歯科医院に行っていない」という方こそ、一度お口全体の状態を確認してみませんか。今ある歯を一本でも多く残すために、できることはたくさんあります。どうぞお気軽にお問い合わせください。

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. 豊島義博 ほか. 一般歯科臨床における脱落、2次齲蝕の調査:第2報 2次齲蝕を併発する要因について. 接着歯学. 1995;13(3):134-142. J-STAGE
  2. 森田学 ほか. 歯科修復物の使用年数に関する疫学調査. 口腔衛生学会雑誌. 1995;45(5):788-793. J-STAGE
  3. 青山貴則 ほか. 臼歯部修復物の生存期間に関連する要因. 口腔衛生学会雑誌. 2008;58(1):16-24. J-STAGE
  4. Brantley CF ほか. Does the cycle of rerestoration lead to larger restorations? J Am Dent Assoc. 1995;126(10):1407-1413. PubMed
  5. 日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン 第2版 詳細版」(2015年、CQ18・CQ19 補修修復) 資料を開く

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