【乳歯が抜けない・生えない】永久歯の生え変わりの順番と相談すべきサイン【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「同じクラスの子はもう何本も抜けているのに、うちの子はまだ1本も…」「乳歯が抜ける前に、後ろから永久歯が生えてきてしまった」「歯がなかなか生えてこないけれど、様子を見ていて大丈夫?」
生え変わりの時期は、保護者の方からご相談をいただくことがとても多いテーマです。今回は、浅草・本所吾妻橋エリアで小児歯科に取り組んでいる当院が、日本小児歯科学会の全国調査データをもとに、生え変わりの標準的な流れと、受診を考えたほうがよいサインを解説します。
生え変わりはいつ始まる? 目安は6歳前後
乳歯から永久歯への生え変わりは、おおむね6歳前後に始まり、12〜14歳ごろにかけて完了していきます[1]。日本小児歯科学会が4歳0か月から18歳11か月までの小児30,825人を対象に行った全国調査があります。最初に生えてくる永久歯は、下顎では中切歯(前歯の真ん中)、上顎では第一大臼歯(いわゆる六歳臼歯)と中切歯がほぼ同時、という結果でした[1]。
その後の順番は、上顎が「第一大臼歯・中切歯 → 側切歯 → 第一小臼歯 → 犬歯 → 第二小臼歯 → 第二大臼歯」、下顎が「中切歯 → 第一大臼歯 → 側切歯 → 犬歯 → 第一小臼歯 → 第二小臼歯 → 第二大臼歯」と報告されています[1]。
ここで知っておいていただきたいのが、この順番自体に個人差があるということです。同じ調査では、六歳臼歯と前歯のどちらが先に出るかについて、上顎では六歳臼歯が先のお子さんが男子77.2%・女子73.4%と多数派なのに対し、下顎では逆に前歯が先のお子さんが男子70.8%・女子63.3%と多数派でした[1]。つまり顎によって傾向が違い、しかもどちらのパターンも一定数いるということです。「隣の子と順番が違う」こと自体は、心配の理由になりません。
今の子どもは、昔より生え変わりが遅くなっています
「自分のときはもっと早かった気がする」——そう感じる保護者の方は少なくありません。実はその感覚は、データにも表れています。
先ほどの調査は、約30年前に行われた同様の全国調査と比較する目的も持って実施されました。その結果、男子では上下顎の第一小臼歯・第二小臼歯・第一大臼歯が、女子では犬歯および上下顎の第一小臼歯・第二小臼歯・第一大臼歯・第二大臼歯の萌出時期が、遅くなっていたと報告されています[1]。
つまり、ご自身の子ども時代を基準にすると「遅い」と感じるのは、ある意味当然なのです。ひと昔前の目安をそのまま当てはめて不安になる必要はありません。とはいえ「どこまでが個人差の範囲か」の線引きは難しいところですので、次にお伝えする2つのケースを目安にしてください。
乳歯が抜けないのに永久歯が生えてきた
下の前歯によく起こるのが、乳歯がまだしっかり残っているのに、その内側(舌側)から永久歯が顔を出してくるという状態です。歯が二列に並んで見えるため、驚いて来院される方が多いケースです。
本来、永久歯は真下から乳歯の根を溶かしながら上がってきて、根が短くなった乳歯が自然に抜け落ちます。ところが永久歯の生えてくる向きがずれていると、乳歯の根が十分に溶けず、乳歯が居座ってしまうのです。
対応の考え方はこうです。
- 乳歯がグラグラしている… 自然に抜けるのを待てることが多いです。永久歯が正しい位置に動いていく力も働きます。
- 乳歯があまり動かない… 永久歯が内側に押しやられたまま並んでしまうことがあるため、抜歯を検討します。
判断はレントゲンで根の状態を確認してから行います。ご家庭で無理に揺らしたり引っぱったりすると、痛みや出血、感染の原因になりますのでそのままの状態でご相談ください。
いつまでも永久歯が生えてこない
乳歯が抜けてから何か月も新しい歯が出てこない、この場合、定期的なレントゲンで中の永久歯に動きがあれば経過観察で大丈夫です。動きが認められない場合は、開窓や牽引をして少し矯正力をかけたり萌出を促すのを検討します。
また原因のひとつとして考えられるのが永久歯の先天性欠如——生まれつき永久歯の数が足りない状態です。
日本小児歯科学会が7歳以上の小児15,544人のレントゲンを調べた全国疫学調査があります。親知らずを除く永久歯の先天性欠如が10.09%——およそ10人に1人にみられたと報告されています(男子9.13%、女子10.98%)。部位別では上顎4.37%、下顎7.58%で、もっとも多いのは下顎の第二小臼歯、次いで下顎側切歯、上顎第二小臼歯、上顎側切歯の順でした[2]。
大切なのは、先天性欠如そのものは治せませんが、早くわかれば打てる手が増えるという点です。永久歯がないとわかれば、その乳歯をできるだけ長く使えるように守っていく、あるいは将来の矯正治療で歯を並べる計画に織り込む、といった選択ができます。逆に、気づかないまま乳歯を失ってしまうと、選択肢は狭まります。
これはレントゲン1枚で確認できます。生え変わりが極端に遅い、左右で差が大きいと感じたら、一度撮影してみることをおすすめします。
生え変わり期は、虫歯になりやすい時期
順番や時期と同じくらい——いえ、それ以上に大切なのが、この時期の虫歯対策です。生え変わり期のお口は、次の3つの理由で虫歯になりやすい条件がそろっています。
- 生えたての永久歯はまだ弱い… 萌出直後のエナメル質は硬さが不十分で、数年かけて成熟していきます。この間がもっとも無防備です。
- 六歳臼歯は磨き残しの王様… 乳歯の奥から生えてくるため気づかれにくく、生えきるまで背が低く、溝も深い。歯ブラシが当たりません。
- 背の高さがバラバラになる… 抜けた場所、生えかけの歯、乳歯が混在し、歯ブラシが平らに当たらなくなります。
当院のホームページでもお伝えしているとおり、フッ素には「酸によって溶けてしまった歯を再生させる再石灰化作用と、歯の質を強くする効果」が期待できます。生えたての永久歯にこそ、フッ素は力を発揮します。あわせて、六歳臼歯の深い溝をあらかじめ埋めておくシーラントも有効な選択肢です。
ご家庭でできる3つのこと
① 仕上げ磨きをやめない。「もう自分で磨けるから」と手を離してしまいがちな年齢ですが、生え変わり期こそ大人の目が必要です。特に生えかけの奥歯は、歯ブラシを横から入れて毛先を斜めに当てないと届きません。
② 左右差を見る習慣を。「右は生えたのに左は3か月経っても出てこない」といった左右差は、ご家庭でいちばん気づきやすいサインです。抜けた日をカレンダーに記録しておくと、受診時の判断材料になります。
③ 定期的にチェックを受ける。生え変わりは数年がかりで進みます。半年に一度でも継続して見ていれば、順番の異常や埋まったままの歯、先天性欠如に早く気づけます。当院は一人一時間の予約時間を確保していますので、お子さんのペースに合わせてゆっくり進められます。
よくある質問

Q. グラグラしている乳歯は、家で抜いてしまってよいですか?
A. ほとんど取れかかっていて、お子さん自身が痛がらずに動かせる程度であれば、自然に抜けるのを待って構いません。ただし血が出る、痛がる、しっかり根が残っている場合は無理をしないでください。途中で折れると、残った根が炎症の原因になります。
Q. 生えてきた永久歯が黄色っぽいのですが、大丈夫でしょうか?
A. 乳歯は青みがかった白、永久歯はやや黄色みを帯びた白で、色が違うのは自然なことです。並んで生えている時期は差が目立ちますが、乳歯がすべて生え変われば気にならなくなります。ただし1本だけ明らかに白濁している、茶色い斑点があるといった場合は一度ご相談ください。
Q. 永久歯がガタガタに並んで生えてきました。矯正を始めるべきですか?
A. 前歯が生えそろう時期は一時的に重なって見えることがあり、その後の顎の成長で改善する場合もあります。一方で、顎の大きさが足りないことが原因なら早めの対応が有効です。当院では6歳前後からの小児矯正(1期治療)についてご相談を受けていますので、判断に迷われたら、一度お口の状態を見せにいらしてください。
Q. 六歳臼歯は、いつごろ生えたことに気づけますか?
A. 乳歯が抜けずに、いちばん奥に静かに生えてくるため気づかれないまま虫歯になっていることが少なくありません。6歳前後になったら、いちばん奥の歯ぐきを月に一度は覗いてみてください。歯ぐきが盛り上がってきたら、生え始めのサインです。
まとめ
生え変わりは6歳前後から始まり、順番にも時期にも大きな個人差があります。しかも今の子どもは約30年前より遅くなっていることが全国調査で示されていますので、ご自身の子ども時代と比べて焦る必要はありません。
一方で、「乳歯が抜けないのに永久歯が生えてきた」「いつまでも生えてこない・左右差が大きい」の2つは、一度ご相談いただきたいサインです。永久歯の先天性欠如はおよそ10人に1人にみられ、レントゲン1枚で確認できます。早くわかるほど、選べる道は広がります。
そして忘れずにいていただきたいのが、この時期がもっとも虫歯になりやすいということ。仕上げ磨きを続け、フッ素とシーラントを味方につけて、生えたての永久歯を守ってあげてください。一生使う歯のスタートラインです。
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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭




