【親知らず抜歯後の激痛】ドライソケットの原因・症状・予防法【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。親知らずを抜いた数日後になって、抜いた場所がズキズキと激しく痛み出した——そんな経験や不安をお持ちの方はいませんか。それは「ドライソケット」という抜歯後のトラブルかもしれません。ドライソケットは正しく予防すれば多くの場合防げますし、なってしまっても適切に対応すれば必ず治ります。今回は、抜歯後の激しい痛みの正体であるドライソケットについて、原因・症状の見分け方・予防法・治療法を歯科医師の立場からくわしく解説します。

ドライソケットとは?抜歯後の「かさぶた」が失われる状態

歯を抜いたあと、抜いた穴(抜歯窩)には血液がたまり、やがて固まって血餅(けっぺい)と呼ばれるゼリー状のかたまりになります。これは傷口の「かさぶた」の役割を果たし、むき出しになった骨や神経を保護しながら、その下で歯ぐきや骨が回復していく土台になります。

ところが、この血餅が何らかの理由ではがれ落ちたり、うまく作られなかったりすると、抜歯窩の底にある骨がむき出しになってしまいます。この状態をドライソケット(歯槽骨炎/alveolar osteitis)と呼びます。「ドライ(乾いた)ソケット(抜歯した穴)」という名前のとおり、本来血餅で満たされているはずの穴が、から(空)になって乾いたように見えるのが特徴です。抜歯後の合併症のなかでも、歯科医師がもっとも頻繁に遭遇するもののひとつです。

なぜあんなに痛い?ドライソケットの症状と見分け方

抜歯後は誰でも多少の痛みが出ますが、通常は当日から翌日をピークに、日を追うごとに少しずつ和らいでいきます。ドライソケットの痛みはこれとは逆で、抜歯の1〜5日後になって、いったん落ち着いた痛みがぶり返し、強くなっていくのが典型的なパターンです(Kuśnierekらのシステマティックレビュー、2022年)。骨の表面が直接、空気や食べ物・飲み物、細菌にさらされるため、鋭くズキズキとした強い痛みが生じます。

次のような症状があれば、ドライソケットが疑われます。

  • 抜歯後2〜3日たってから、痛みがかえって強くなってきた
  • 痛み止めが効きにくい、耳やこめかみのあたりまで痛みが広がる
  • 抜いた穴をのぞくと、赤黒い血のかたまりが見えず、白っぽい骨や食べかすが見える
  • 口臭や、口の中の嫌な味が続く

ドライソケットは、上の歯よりも下の親知らず(下顎の第三大臼歯)を抜いたあとに起こりやすいことが知られています。当院の親知らずのページでもご案内しているとおり、「抜歯した穴にかさぶた(血餅)ができないことによって骨が露出し生じる痛み」であり、術後の頻回なうがいで発生リスクが高まります。強い痛みが続くときは我慢せず、抜歯を受けた歯科医院に連絡してください。

ドライソケットになりやすい人・原因

ドライソケットは「血餅が失われる・作られない」ことで起こります。そのリスクを高める要因として、次のようなものが報告されています。

1. 喫煙(最大のリスク因子のひとつ)

タバコはドライソケットのリスクをはっきりと高めます。11の研究をまとめたシステマティックレビュー(Kuśnierekら、2022年)では、喫煙者はドライソケットになる確率が非喫煙者の3倍以上と報告されています。ドライソケットが起きた割合も、喫煙者で約13.2%、非喫煙者で約3.8%と大きな差がありました。ニコチンによる血流の低下や、吸い込む動作による陰圧(血餅を吸い出す力)、煙の刺激が関係すると考えられています。さらに、抜歯した当日に喫煙した人ほど発生率が高かったという報告もあります(Al-Belasy、2004年)。

2. 抜歯の難易度が高い(下の親知らず・埋まっている歯)

横向きや斜めに埋まっている親知らずのように、外科的な処置が必要な難しい抜歯ほどリスクが上がります。埋まった下顎の親知らずを対象にした研究では、抜歯にかかった外科的な難しさや術者の経験が、ドライソケットの発生に関係すると報告されています(Larsen、1992年)。骨を削ったり歯を分割したりする処置では、傷口への負担が大きくなるためです。

3. 頻繁なうがい・傷口をさわる

「早くきれいにしたい」と、口をブクブクと強くゆすいだり、抜いた穴を舌や指、歯ブラシでさわったりすると、せっかくできた血餅がはがれてしまいます。これはドライソケットのもっとも身近な原因のひとつで、自分で防げる部分でもあります。

4. 経口避妊薬(ピル)の使用

女性ホルモンが血液の固まりやすさに影響するため、経口避妊薬(ピル)を使用している女性はリスクがやや高いとされています。15の研究をまとめたメタアナリシス(Tangら、2022年)では、ピルを使用している女性は、使用していない女性に比べておよそ2倍(相対リスク1.98)ドライソケットになりやすいと報告されました。なお同じ研究では、ピルを使用していない女性のリスクは男性とほぼ同じでした。つまり「女性だから起こりやすい」のではなく、ピルの影響が大きいと考えられます。服用中の方は、抜歯の前に歯科医師へお伝えください。

ドライソケットを防ぐ5つのポイント

ドライソケットの予防で最も大切なのは、できあがった血餅を守り、傷口の血流を安定させることです。抜歯後は次の点を心がけてください。

  1. 強いうがいをしない……抜歯後しばらくは、口をゆすぐときも水を含んでそっと吐き出す程度に。ブクブクと勢いよくゆすがないことが、血餅を守る一番のコツです。
  2. 傷口をさわらない・吸わない……舌や指、歯ブラシで抜いた穴を触ったり、ストローで強く吸ったりしないようにしましょう。
  3. 抜歯当日〜数日は禁煙する……喫煙はリスクを3倍以上に高めます。少なくとも抜歯当日、できれば数日は控えることが理想です。
  4. 血流が上がる行為を控える……当院でもご案内しているとおり、抜歯当日の飲酒・入浴(湯船)・激しい運動は再出血や炎症のもとになるため控えてください。
  5. 処方薬を指示どおりに飲む……痛みがなくても、抗菌薬などの薬は指示どおりに最後まで服用してください。歯科医院によっては、殺菌成分であるクロルヘキシジンの洗口液の使用をすすめることがあります。抜歯当日と術後数日間のクロルヘキシジン洗口が発生率を下げると報告されています(Casoら、2005年)。ただし市販品を自己判断で使うのではなく、歯科医師の指示に従ってください。

もしドライソケットになってしまったら?治療法

ドライソケットになっても、多くは適切なケアで1〜2週間ほどで自然に治癒していきます。ただし、その間の激しい痛みを和らげるために歯科での処置が有効です。システマティックレビュー(Garolaら、2021年)によれば、治療の基本は抜歯窩をきれいに洗浄することで、そのうえで痛みを抑える薬剤ガーゼ(軟膏)を詰めたり、必要に応じてレーザーなどの処置を組み合わせたりします。標準的な唯一の方法が決まっているわけではなく、状態に応じて選択されます。

大切なのは、自己判断で放置したり市販薬だけでしのごうとせず、抜歯を受けた歯科医院を受診することです。処置によって痛みは大きく楽になります。強い痛みに加えて、発熱や大きな腫れ、膿が出るといった症状がある場合は、感染など別のトラブルの可能性もあるため、早めにご相談ください。

よくある質問

よくある質問

Q. ドライソケットの痛みはいつまで続きますか?
A. 個人差はありますが、多くは1〜2週間ほどで骨の表面が新しい組織におおわれ、徐々に和らいでいきます。歯科で洗浄や薬剤の処置を受けると、痛みは大きく軽減します。長引く場合は必ず受診してください。

Q. 普通の抜歯後の痛みと、ドライソケットの見分け方は?
A. 通常の痛みは抜歯当日〜翌日がピークで、その後は和らいでいきます。逆に、いったん落ち着いた痛みが2〜3日後にぶり返して強くなる場合はドライソケットが疑われます。

Q. 抜歯後の食事はどうすればいいですか?
A. 当院では、麻酔が切れるまでは食事を控え、その後も刺激の強いもの(辛いもの・酸っぱいもの)は避けるようご案内しています。傷口の反対側でやわらかいものを噛むと安心です。

Q. ドライソケットは自然に治りますか?放っておいても大丈夫ですか?
A. 時間がたてば治っていくことが多いですが、その間の痛みが非常に強いため、放置はおすすめしません。洗浄や薬の処置で楽になりますので、我慢せず歯科医院にご連絡ください。

まとめ

ドライソケットは、抜歯後にできる血餅が失われ、骨がむき出しになることで強い痛みが出るトラブルです。特に下の親知らずを抜いたあとに起こりやすく、喫煙・強いうがい・傷口への刺激が大きなリスクになります。逆にいえば、血餅をそっと守り、当日の喫煙や飲酒を控え、処方薬を指示どおりに使うことで、多くは予防できます。もしなってしまっても、歯科での処置で痛みは和らぎ、必ず治っていきますので、強い痛みを我慢しないでください。

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【参考文献】
・Kuśnierek W, ほか. Smoking as a Risk Factor for Dry Socket: A Systematic Review. Dentistry Journal(Dent J). 2022;10(7):121. PubMed
・Tang M, ほか. Oral Contraceptive Use and Alveolar Osteitis Following Third Molar Extraction: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Dentistry. 2022;2022:7357845. PubMed
・Caso A, ほか. Prevention of alveolar osteitis with chlorhexidine: a meta-analytic review. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2005;99(2):155-159. PubMed
・Larsen PE. Alveolar osteitis after surgical removal of impacted mandibular third molars. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1992;73(4):393-397. PubMed
・Al-Belasy FA. The relationship of “shisha” (water pipe) smoking to postextraction dry socket. J Oral Maxillofac Surg. 2004;62(1):10-14. PubMed
・Garola F, ほか. Clinical management of alveolar osteitis. A systematic review. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2021;26(6):e691-e702. PubMed

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

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