2026年09月15日
【歯茎が腫れた】原因は歯周病だけじゃない?考えられる病気と対処法【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。「歯茎がぷっくり腫れている」「歯みがきのときに血が出る」「押すとブヨブヨして痛い」——こうした歯茎の腫れは、多くの方が一度は経験するお口のトラブルです。数日でおさまることもあれば、痛みが強くなって食事もつらくなることもあります。
歯茎の腫れというと「歯周病かな」と思いがちですが、実は原因はそれだけではありません。歯の根の先にできた膿、親知らず、女性ホルモンの変化、飲んでいるお薬の影響など、さまざまな理由で歯茎は腫れます。原因によって対処法もまったく違うため、自己判断で放置すると悪化させてしまうこともあります。この記事では、歯茎が腫れる主な原因と、ご自宅でできる応急ケア、受診の目安をわかりやすく解説します。
目次
その歯茎の腫れ、放っておいて大丈夫?
歯茎の腫れや出血は、決して珍しいものではありません。厚生労働省が全国規模で行っている「令和6年歯科疾患実態調査」では、歯肉出血がある人の割合は全体で42.9%にのぼり、年齢が上がるほど増えて80〜84歳では50.3%に達していました。また、歯周病が進んでいるサインである「4mm以上の歯周ポケット」を持つ人は全体で47.8%、80〜84歳では61.6%と、実に多くの方の歯茎で炎症が起きていることがわかります。
ここで注意したいのは、腫れや出血といった「自覚症状」があって気づく人は、実際に歯周ポケットが深くなっている人よりずっと少ないという点です。つまり、はっきりと腫れを感じたときには、歯茎の中では炎症がかなり進んでいることが珍しくありません。「腫れたけど、そのうち引いたから大丈夫」と繰り返しているうちに、じわじわと歯を支える骨が溶けてしまうこともあります。一度の腫れを軽く見ず、原因を確かめておくことが大切です。
歯茎が腫れる主な原因6つ
歯茎の腫れにはいくつものパターンがあります。代表的な原因を、頻度の高いものから順に見ていきましょう。
1. 歯肉炎・歯周病(もっとも多い原因)
歯と歯茎の境目に歯垢(プラーク)や歯石がたまると、その中の細菌によって歯茎に炎症が起こります。初期の「歯肉炎」では、当院のホームページでも説明しているとおり「歯茎が赤く腫れる」「歯茎が痛む」「歯みがきなどで血が出る」といった症状があらわれます。この段階では歯を支える骨はまだ溶けておらず、正しいケアで元に戻すことが可能です。
ここで放置すると「歯周炎」へと進み、歯茎が下がってしみるようになったり、口臭が出たり、重度になると歯茎から膿が出て、歯がグラグラしてきます。歯周病は歯茎全体にじわじわ広がる、もっともありふれた歯茎の腫れの原因です。
2. 歯の根の先にたまった膿(根尖性歯周炎)
虫歯が神経まで進んだり、以前神経を取った歯が再び感染したりすると、歯の根の先端に膿の袋ができることがあります。これが「根尖性歯周炎」で、歯茎の一部だけが局所的にぷくっと腫れるのが特徴です。ニキビのようなできもの(フィステル)ができ、そこから膿が出て一時的に痛みが引くこともありますが、根本原因である根の中の感染が消えたわけではありません。歯茎の一か所だけが腫れて痛む場合は、歯周病ではなくこのタイプを疑います。治療には根の中を清掃する根管治療が必要になります。
3. 親知らずのまわりの炎症(智歯周囲炎)
斜めや横向きに生えた親知らずは、歯茎が半分かぶさった状態になりやすく、そのすき間に汚れがたまって炎症を起こします。これが「智歯周囲炎」で、いちばん奥の歯茎が腫れて痛み、ひどくなると口が開けにくくなったり、頬まで腫れたりします。疲れて免疫が落ちたときに繰り返しやすいのも特徴です。当院のホームページでも、下あごの親知らずは「平均的に3日は腫れる可能性がある」とお伝えしていますが、炎症を繰り返す親知らずは抜歯を検討します。親知らずの抜歯は保険適用でおおよそ2,000〜5,000円が目安です(生え方によって変わります)。
4. 女性ホルモンの変化(妊娠性歯肉炎など)
妊娠中や思春期など、女性ホルモンが大きく変動する時期は歯茎が腫れやすくなります。当院のマタニティ歯科のページでも解説しているように、妊娠中はエストロゲンなどの女性ホルモンの分泌が増え、特定の歯周病菌が活発になるため「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。同じ歯みがき習慣でも、この時期は歯茎が敏感に反応して腫れることがあります。つわりで歯みがきがつらい時期とも重なりやすいため、体調に合わせた無理のないケアが大切です。
5. 飲んでいるお薬の影響(薬物性歯肉増殖症)
一部のお薬には、副作用として歯茎が盛り上がるように増殖する「薬物性歯肉増殖症」を起こすものがあります。代表的なのは、てんかんのお薬(フェニトイン)、高血圧のお薬の一部(カルシウム拮抗薬)、臓器移植などで使う免疫抑制薬です。歯垢が残っていると症状が出やすくなるため、これらのお薬を服用中の方は、とくに丁寧な歯みがきと定期的なクリーニングが重要になります。お薬を自己判断で中止するのは危険ですので、気になる場合はまず歯科と主治医にご相談ください。
6. 疲れ・ストレス・免疫の低下
睡眠不足や過労、強いストレスが続くと免疫の力が下がり、ふだんは抑えられている歯茎の細菌の勢いが増して急に腫れることがあります。「疲れると決まって歯茎が腫れる」という方は、もともと軽い歯肉炎や親知らずの炎症を抱えていて、体調が崩れたときに表面化しているケースが多く見られます。腫れが体調のバロメーターになっているとも言えます。
こんな腫れは早めに受診を
歯茎の腫れの多くは歯科での対応が必要ですが、なかでも次のような症状があるときは早めの受診をおすすめします。
- 腫れが数日たっても引かない、どんどん強くなる
- 膿が出る、押すと膿のような味がする
- 頬やあごの下まで腫れてきた、口が開けにくい
- ズキズキする強い痛みや、熱がある
- 歯がグラグラしてきた、噛むと痛い
とくに頬やのどの方まで腫れが広がる、発熱をともなう、飲み込みや息がしづらいといった場合は、炎症が深いところに広がっているおそれがあり、緊急性が高い状態です。夜間・休日でも、我慢せず歯科の救急対応や病院への相談を検討してください。
歯茎が腫れたときの応急ケアと避けたい行動
受診までの間、ご自宅でできる応急的なケアもあります。ただし、これらはあくまで一時しのぎで、原因そのものを治すものではない点にご注意ください。
- やさしく清潔にする:腫れている部分もやわらかい歯ブラシでそっと汚れを落とし、ぬるま湯や刺激の少ないうがい薬で口の中を清潔に保ちます。
- 冷やしすぎない程度に冷やす:ズキズキするときは、頬の外から冷たいタオルなどで軽く冷やすと楽になることがあります。氷を直接あてて冷やしすぎるのは避けましょう。
- 体を休める:睡眠をしっかりとり、アルコールや激しい運動、長風呂など血行が良くなりすぎる行動は控えます。
逆に避けたいのが、腫れた部分を指や爪楊枝で強く押して膿を出そうとすることです。かえって細菌を押し広げたり、傷つけて悪化させたりします。また、痛みがある部分を強く磨きすぎる、患部に鎮痛薬を直接すり込む、といった行為も歯茎を傷めます。市販の痛み止めは用法どおりに飲むぶんには問題ありませんが、それで痛みが治まっても原因は残っているため、必ず歯科を受診してください。
歯科医院での治療の流れ
歯科では、まず腫れの原因がどこにあるのかを確かめます。歯茎の状態を調べる歯周ポケット検査や、根の先の膿・親知らずの向きを確認するためのレントゲン撮影を行い、原因に応じた治療を進めます。
- 歯周病が原因の場合:歯垢・歯石を取り除くスケーリングや、歯根の表面をなめらかにするルートプレーニング、歯みがき指導を行います。進行している場合は歯茎の手術なども検討します。
- 根の先の膿が原因の場合:歯の内部を清掃・消毒する根管治療を行います。
- 親知らずが原因の場合:まず炎症を抑える処置を行い、落ち着いてから必要に応じて抜歯します。
強い腫れや膿がある場合は、症状を抑えるために抗菌薬や洗浄などの処置を先に行うこともあります。いずれの場合も、腫れをその場でしのぐだけでなく、原因を根本から取り除くことが再発を防ぐ近道です。
歯茎の腫れを繰り返さないために
歯茎の腫れの多くは、毎日のケアと定期的なメンテナンスで予防できます。基本は、歯と歯茎の境目の歯垢をためないこと。歯ブラシに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスで歯と歯の間の汚れも落としましょう。強く磨くのではなく、毛先を境目にあてて小刻みに動かすのがコツです。
そして、自分では取りきれない歯石や歯周ポケット内の汚れは、歯科での専門的なクリーニングで定期的に取り除くことが欠かせません。当院のホームページでも紹介しているとおり、ある研究では定期的に通院していた人は、通院が不定期だった人に比べて歯を失うリスクが0.56倍にとどまっていました。目安として3〜4か月に一度の定期検診をおすすめしています。腫れてから対処するのではなく、腫れる前に整えておくことが、歯茎の健康を守るいちばんの近道です。
よくある質問

Q. 歯茎の腫れは、放っておけば自然に治りますか?
A. 疲れなどで一時的に腫れた場合、体調が戻ると腫れが引くことはあります。しかし多くは歯垢・歯石や根の感染、親知らずといった「原因」が残ったままなので、繰り返したり、静かに悪化したりします。引いたからと安心せず、一度は原因を調べることをおすすめします。
Q. 歯茎から膿が出て、痛みが引きました。もう受診しなくて大丈夫ですか?
A. いいえ、受診をおすすめします。膿が出て痛みが和らぐのは、たまった圧が抜けただけで、根の中や歯周ポケットの感染が治ったわけではありません。放置すると再びたまり、周囲の骨を溶かしていくことがあります。
Q. 妊娠中に歯茎が腫れました。治療は受けられますか?
A. 受けられます。ただし妊娠初期は応急処置にとどめ、本格的な治療は安定期に行うのが一般的です。妊娠中は歯茎が腫れやすい時期なので、体調に合わせたケアと、時期を見た歯科受診が大切です。まずはご相談ください。
Q. 市販の歯みがき粉で歯茎の腫れは治せますか?
A. 炎症を抑える成分の入った歯みがき粉は、予防や症状をやわらげる助けにはなりますが、歯みがき粉だけで歯周病を治すことはできません。歯石の除去や深いポケットの清掃には歯科での治療が必要です。
まとめ
歯茎の腫れは、歯周病だけでなく、根の先の膿、親知らず、ホルモンの変化、お薬の影響、体調の低下など、さまざまな原因で起こります。原因によって治療がまったく違うため、自己判断で放置したり、無理に膿を出そうとしたりせず、早めに歯科で原因を確かめることが大切です。とくに腫れが引かない、膿が出る、頬まで腫れる、発熱があるといった場合は、早めに受診してください。
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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。歯茎の腫れや出血、お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭


