【歯が長くなった?】歯茎が下がる「歯肉退縮」の原因と今日からできる対策【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。「以前より歯が長く見えるようになった」「歯の根元が見えてきて、冷たいものがしみる」——そんな変化に気づいて不安になっていませんか。それは歯茎が下がる「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」かもしれません。見た目の問題だけでなく、知覚過敏や根元の虫歯にもつながる、放っておけないサインです。この記事では、歯茎が下がる原因と、今日からできる進行を止めるためのケア、そして下がってしまった歯茎への治療法まで、歯科医師の立場でわかりやすく解説します。

歯茎が下がる「歯肉退縮」とは?

歯肉退縮とは、歯を包んでいる歯茎(歯肉)の位置が下がり、本来は歯茎に隠れているはずの歯の根元(歯根)が露出してしまう状態のことです。歯そのものが伸びるわけではなく、歯茎が下がることで「歯が長くなったように見える」のが特徴です。

歯肉退縮は決して珍しいものではありません。米国成人(30歳以上)を対象にした大規模調査(NHANES III、Albandarら、Journal of Periodontology 1999年)では、3mm以上の歯茎の下がりが1か所以上ある人が22.5%にのぼり、年齢とともにその割合・程度・重症度が増えることが報告されています。さらに、歯肉退縮の疫学をまとめたレビュー(Kassabら、Journal of the American Dental Association 2003年)では、65歳以上の88%、18〜64歳の50%に1か所以上の歯肉退縮がみられ、口腔清掃状態の良い人にも悪い人にも起こると述べられています。つまり、加齢とともに誰にでも起こりうる、ごくありふれた変化なのです。

歯茎が下がると起こる3つの困りごと

「少し歯が長く見えるだけ」と軽く考えてしまいがちですが、露出した歯の根元には次のようなリスクが伴います。

  • 見た目の変化…歯が長く見えたり、歯と歯のあいだにすき間(ブラックトライアングル)ができたりして、笑ったときの印象が変わります。
  • 知覚過敏…歯の根元は、かたいエナメル質に覆われていません。露出すると刺激が神経に伝わりやすくなり、冷たいものや歯ブラシで「キーン」としみる知覚過敏が起こりやすくなります。
  • 根元の虫歯(根面う蝕)…露出した歯根はエナメル質より酸に弱く、虫歯(根面う蝕)になりやすい部分です。特にご高齢の方で問題になりやすいトラブルです。

歯茎が下がる主な原因

歯肉退縮は、ひとつの原因で起こるのではなく、複数の要因が重なって進むと考えられています。代表的なものを挙げます。

1. 歯周病

最も代表的な原因が歯周病です。歯茎の炎症が続くと、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けて下がり、それに伴って歯茎も下がっていきます。歯周病は自覚症状が出にくいまま進むことが多く、気づいたときには歯茎がかなり下がっているケースも少なくありません。

2. 強すぎる・間違った歯磨き

「しっかり磨こう」と力を入れすぎたり、かたい歯ブラシでゴシゴシと横磨きをしたりすると、歯茎を傷つけて下がる一因になると考えられています。ただし、歯磨きと歯肉退縮の関係を検証した系統的レビュー(Heasmanら、Journal of Clinical Periodontology 2015年)では、「歯磨きが歯肉退縮の原因だと断定するにも否定するにも、現時点の証拠は決定的ではない」と結論づけられています。一方で、この研究は磨く回数の多さ・横方向のゴシゴシ磨き・毛のかたさ・磨く時間の長さなどが歯肉退縮と関連する要因として繰り返し報告されているとも指摘しています。「原因と断定はできないが、避けたほうがよい磨き方がある」というのが正確な理解です。

3. 加齢

前述の調査のとおり、歯肉退縮は年齢とともに増えていきます。長年の歯磨きや噛む力の積み重ね、歯茎の変化などが影響すると考えられています。

4. 歯ぎしり・食いしばり

就寝中の歯ぎしりや日中の食いしばりで歯に強い力がかかり続けると、歯茎や骨に負担がかかり、歯肉退縮を進める一因になりうると考えられています。心当たりのある方はナイトガード(マウスピース)などの対策も選択肢になります。

5. 歯並び・矯正治療

もともと歯が外側に傾いている、歯を覆う骨や歯茎が薄いといった場合、その部分の歯茎は下がりやすくなります。矯正治療で歯を動かす過程で歯肉退縮が起こることもあり、歯茎が薄い方では事前の評価が大切です。

6. 喫煙

喫煙は歯茎の血流を悪くし、歯周病を進めやすくします。歯肉退縮と関連する要因のひとつとして知られています。

一度下がった歯茎は、自然には元に戻りません

ここが最も大切なポイントです。一度下がってしまった歯茎は、セルフケアで自然に元の高さまで戻ることは基本的にありません。だからこそ、「下がってから治す」よりも「これ以上下げない・下げる前に予防する」ことが何より重要になります。「歯茎が下がってきたかも」と感じた段階で早めに歯科を受診し、原因を見きわめて進行を止めることが、将来の歯を守ることにつながります。

今日からできる、歯肉退縮の予防と進行を止める方法

  • やわらかめの歯ブラシを、軽い力で…毛のかたさと歯茎への影響を調べた系統的レビュー(Ranzanら、International Dental Journal 2019年)では、かための歯ブラシはやわらかめ・普通のものより歯茎の傷が多く、やわらかめ〜超やわらかめのほうが安全な傾向があると報告されています。ペンを持つように軽く握り、鉛筆を紙にすべらせる程度の力で十分です。
  • 横方向のゴシゴシ磨きをやめる…歯と歯茎の境目に毛先を45度で当て、小さく動かすのが基本です。力任せの横磨きは歯茎にも歯の根元にも負担になります。
  • 歯周病をコントロールする…原因が歯周病なら、その治療が第一です。歯石除去やブラッシング指導で炎症を抑えることが、退縮を止める土台になります。
  • 歯ぎしり・食いしばりへの対策…強い力が原因のひとつなら、マウスピースなどで歯や歯茎への負担を減らします。
  • 歯科での定期メンテナンス…歯茎の変化は自分では気づきにくいもの。定期的にチェックを受けることで、下がり始めを早期にとらえられます。

下がってしまった歯茎を治す治療法

すでに歯茎が大きく下がっている場合でも、外科的な治療で改善できることがあります。歯肉退縮の治療の選択肢としては、上あごの内側などから採取した歯茎の組織を移植する結合組織移植術(CTG)などの歯周外科があり、露出した歯根を覆って見た目や知覚過敏の改善が期待できます

当院でも歯周外科としてこうした歯茎の移植術に対応していますが、下がり方の程度・原因・歯茎や骨の状態によって適応や方法は変わります。まずは診察で状態を確認し、必要な治療をご提案します。費用や治療の範囲は状態によって異なるため、診察時に詳しくご案内します。

よくある質問

Q. 歯茎が下がってきました。マッサージや塗り薬で戻せますか?
A. 残念ながら、一度下がった歯茎がセルフケアで自然に元の高さまで戻ることは基本的にありません。まずはこれ以上進ませないことが目標になります。改善を希望される場合は、歯周外科(歯茎の移植術など)が選択肢になりますので、ご相談ください。

Q. 歯茎が下がったのは、私の歯磨きが強すぎたせいですか?
A. 強い横磨きやかたい歯ブラシは避けたほうがよい要因ですが、研究では「歯磨きだけが原因」と断定できるほど証拠は決定的ではありません。歯周病・加齢・歯ぎしり・歯並びなど複数の要因が重なって起こることが多いので、自分を責めすぎず、原因を一緒に確認していきましょう。

Q. 歯茎が下がると、放っておいたら歯が抜けますか?
A. 歯肉退縮そのものがすぐ抜歯につながるわけではありません。ただし原因が歯周病の場合は、支える骨が溶け続けると歯のぐらつきや喪失につながります。原因を見きわめて進行を止めることが大切です。

まとめ

歯茎が下がる歯肉退縮は、加齢とともに誰にでも起こりうる、ありふれた変化です。見た目だけでなく、知覚過敏や根元の虫歯の入り口にもなります。歯周病・強すぎる歯磨き・加齢・歯ぎしり・歯並びなど原因はさまざまで、一度下がった歯茎は自然には戻りません。だからこそ、やさしい歯磨きと定期的なチェックで「これ以上下げない」ことが何より大切です。「歯が長くなった気がする」「根元がしみる」と感じたら、早めにご相談ください。

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墨田区の篠塚歯科医院では、予約は一人一時間を確保し、歯茎の状態を丁寧に確認しながら、一人ひとりに合った予防と治療を心がけています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。

【参考文献】
・Albandar JM, Kingman A. Gingival recession, gingival bleeding, and dental calculus in adults 30 years of age and older in the United States, 1988-1994. Journal of Periodontology 1999;70(1):30-43. PubMed
・Kassab MM, Cohen RE. The etiology and prevalence of gingival recession. Journal of the American Dental Association 2003;134(2):220-225. PubMed
・Heasman PA, ほか. Evidence for the occurrence of gingival recession and non-carious cervical lesions as a consequence of traumatic toothbrushing. Journal of Clinical Periodontology 2015;42(Suppl 16):S237-255. PubMed
・Ranzan N, ほか. Are bristle stiffness and bristle end-shape related to adverse effects on soft tissues during toothbrushing? A systematic review. International Dental Journal 2019;69(3):171-182. PubMed

篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

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