【永久歯が足りないと言われたら】先天性欠如歯の原因と割合、乳歯を長く使うコツと治療の選択肢

あわてなくて大丈夫 永久歯が足りない。歯の図を見つめる母親のイラスト

こんにちは、篠塚歯科医院です。

「お子さんの永久歯が、生まれつき1本足りないようです」。歯医者でそう言われて、頭が真っ白になった方もいるかもしれません。

「一生、歯がないままなの?」「わたしのせい?」と、不安になりますよね。

でも、永久歯が生まれつき足りないこと(先天性欠如歯)は、日本の子どものおよそ10人に1人にあります。決してめずらしいことではありません。

この記事では、先天性欠如歯の割合と原因、永久歯がない場所の乳歯を長く使うコツ、乳歯が抜けたあとの治療の選択肢と時期の目安を、やさしく解説します。

この記事のポイント

  • 先天性欠如歯は、日本の子どものおよそ10人に1人にあります。足りないのは1〜2本だけ、という方がほとんどです。
  • 永久歯がない場所の乳歯は、むし歯から守り、定期的にエックス線で根の様子を確かめれば、大人になるまで使えることが多いです。
  • 乳歯が抜けたあとは、矯正ですき間を閉じる、成長が終わってからインプラントやブリッジで補う、などの道があります。本数が多いときは、保険の矯正が使えることもあります。

先天性欠如歯とは?10人に1人にある、めずらしくないこと

「うちの子だけ?」と感じるかもしれません。でも、ご安心ください。思っているよりずっと多くの子にあることです。

先天性欠如歯(せんてんせいけつじょし)とは、歯のもと(歯胚〔しはい〕)が生まれつき作られず、その永久歯が生えてこないことをいいます。

日本小児歯科学会が、全国の子ども1万5千人余りを調べた報告があります。親知らずを除くと、およそ10人に1人(10.09%)に永久歯の欠如がありました[1]。

足りない本数は、1本か2本の方が8割以上です[1]。女の子のほうが、男の子より少し多いことも分かっています[1][2]。

足りなくなりやすいのは、この歯

どの歯でも起こりますが、欠けやすい歯は決まっています。多い順に並べると、次のとおりです[1]。

  1. 下の第二小臼歯…犬歯(糸切り歯)から数えて2本目の、小さな奥歯
  2. 下の側切歯…下の前歯の、真ん中から2本目
  3. 上の第二小臼歯…上の小さな奥歯
  4. 上の側切歯…上の前歯の、真ん中から2本目

世界の報告をまとめた研究でも、いちばん多いのは下の第二小臼歯でした[2]。欧米では2番目が上の側切歯ですが、日本の調査では下の前歯が2番目でした。

なぜ足りなくなるの?原因は「遺伝が中心、でもまだはっきりしない」

「妊娠中の食事が悪かった?」と、ご自分を責める方がいます。でも、親御さんのせいではありません。

歯のもとは、お母さんのおなかの中にいるときから作られ始めます。その設計図にあたる遺伝子の違いが、欠如に関係することが分かっています[3]。

家族に同じように歯が足りない人がいることも、よくあります。ただ、家族に誰もいなくても起こります。なぜその歯だけ作られないのかは、まだはっきり分かっていません。

一方で、小さいころにがんの治療(抗がん剤や放射線)を受けた子では、欠如が健康な子の3倍ほど多いことも知られています[4]。

歯の形のちがいと、セットで見つかることも

欠如は、ほかの歯の「ちょっとしたちがい」といっしょに見つかることがあります。

代表的なのが、上の前歯の2本目(側切歯)が、円すいのように細く小さい形です。片側がこの形の人では、反対側の同じ歯が欠けている割合が半分以上でした[5]。

また、次の永久歯がない乳歯は、根が吸収されにくいため、いつまでも抜けずに残ります。「乳歯が抜けない」が、欠如に気づくきっかけになることも多いです。

いつ、どうやって分かる?パノラマのエックス線で確かめる時期

「小さいころのレントゲンでは、何も言われなかったのに」。そんな声も聞きます。

永久歯のもとは、少しずつ石のように固まって(石灰化して)いきます。固まる前は、エックス線に写りません。だから、小さいころの写真で見えなくても、欠如とは言い切れないのです。

欠如かどうかをきちんと判断できるのは、小学校に上がるころ(7歳前後)からです。全国の調査も、7歳以上の子どもを対象にしています[1]。

確かめるときは、お口全体を1枚に写すパノラマのエックス線写真を使います。乳歯の下に、永久歯のもとが並んでいるかを見ます。

次のようなときは、一度ご相談ください。

  • 生え変わりが遅い…まわりの子と比べて、特に下の前歯や小さな奥歯が遅い
  • 片方だけ乳歯が抜けない…反対側はとっくに永久歯になっている
  • 上の前歯の2本目が小さくとがっている…欠如とセットで起こりやすい形
  • 家族に歯が足りない人がいる…親やきょうだいに同じ経験がある

生え変わりの順番や時期は、乳歯が抜けない・生えないときの記事でくわしく解説しています。

永久歯がない場所の乳歯を、できるだけ長く使うために

「乳歯は、いつか抜けるんでしょう?」と思いますよね。でも、次の永久歯がない乳歯は、根が吸収されにくく、意外と長持ちします。

結論から言うと、永久歯がない場所の乳歯は、大人になるまで大切に使うのが基本です。

下の奥の乳歯を残した人を、5〜13年追いかけた研究をまとめた報告があります。そのあいだ、8〜9割の乳歯が良い状態で残っていました[6]。

別の調査では、25歳ごろまで使えていた例も確認されています[7]。ただし、研究の数はまだ少なく、油断は禁物です。

乳歯を長く使う3つのコツ。むし歯から守る(フッ素とシーラント)、甘いものは回数を決めて、定期的にエックス線で確かめる

① むし歯から守る

乳歯は永久歯より、表面のエナメル質が薄く、むし歯が進みやすい歯です。代わりのきかない1本なので、むし歯予防がいちばんの守りになります。

  • フッ素…年齢に合った濃さの歯みがき剤を毎日。フッ素洗口や、歯科医院でのフッ素塗布も続けましょう
  • シーラント…奥歯のみぞをあらかじめ埋めて、汚れがたまらないようにする処置です。くわしくはシーラントの記事へ
  • シュガーコントロール…甘いものは、だらだら食べずに回数を決めます。年齢ごとの目安は乳歯のむし歯の記事に書いています

② 根の吸収と「沈み込み」を見張る

次の永久歯がない乳歯でも、年齢とともに根が少しずつ短くなることがあります[7]。

もう1つ気をつけたいのが「低位咬合(ていいこうごう)」です。まわりの永久歯やあごは成長するのに、乳歯だけが取り残されて、沈んだように低く見える状態です。

乳歯の根があごの骨とくっついてしまう(アンキローシス)と起こります。軽いものは様子を見られますが、強く沈むと、となりの歯が倒れこんだり、すき間がなくなったりします[8]。

おうちでは、次のサインに気をつけてください。

  • 乳歯がまわりより低く見える…かみ合わせの面が1段下がっている
  • グラグラしてきた…根が短くなっているサインかもしれません
  • 食べ物がはさまりやすくなった…となりの歯が傾いてきた可能性があります

気づいたら、次の定期検診を待たずにご相談ください。

③ 定期的にエックス線で確かめる

根の長さや、骨とのくっつき具合は、見た目だけでは分かりません。定期検診のときに、必要に応じてエックス線を撮り、前回と見比べることが大切です。

撮る間隔は、年齢や乳歯の状態に合わせてご相談します。特に、乳歯が失われやすい時期が2回あります。小学校高学年から中学生のころと、大学を出るころです[7]。

この時期は、検診の間隔を空けすぎないようにしましょう。変化が見つかれば、次の一手を早めに相談できます。

乳歯が抜けたあとはどうする?選択肢と時期の目安

「抜けたら、すぐインプラント?」と思う方が多いのですが、順番があります。

基本は、あごの成長が終わるまでは「矯正」か「つなぎの装置」、成長が終わってから「インプラントやブリッジ」です。

乳歯が抜けたあとの4つの選択肢。矯正ですき間を閉じる、インプラント、ブリッジ、入れ歯

主な選択肢を、表にまとめました。

方法始める時期の目安特徴
矯正ですき間を閉じる成長期から(当院の小児矯正は6〜15歳ごろ、成人矯正は16歳以降)自分の歯だけで完成し、人工の歯の入れ替えが一生いらない。期間は長め
インプラントあごの成長が終わってからとなりの歯を削らない。外科手術が必要で、自費
ブリッジ成長が終わってから固定式で違和感が少ない。両どなりの健康な歯を削る
入れ歯(取り外し式)成長期から成長に合わせて作り直しやすく、つなぎにも使える。違和感やバネの見た目が気になる

矯正ですき間を閉じる

となりの歯を動かして、すき間をなくす方法です。永久歯が生えそろうころから始められます。

上の前歯の2本目(側切歯)が足りない場合は、となりの犬歯を前に寄せて、形を整える方法があります。

この方法と、人工の歯で補う方法を比べた研究をまとめた報告があります。矯正で閉じた人のほうが、歯ぐきの状態が良く、見た目の評価も高いという結果でした[9]。

ただし、かみ合わせや顔立ちによって向き不向きがあります。模型とエックス線の検査をしたうえで、閉じるか、補うスペースを整えるかを決めます。

小児矯正の流れはこちらの記事、当院の矯正歯科についてはこちらのページをご覧ください。

インプラント・ブリッジは「成長が終わってから」

インプラントは、あごの骨に人工の根を入れる方法です。となりの歯を削らずにすむのが大きな利点です。

ただ、あごが成長している途中で入れると、インプラントだけが取り残されて沈んで見えることがあります。

成長期の子どもにインプラントを入れた報告をまとめた研究でも、この沈み込みが主な問題でした。成長期のインプラントは、特別な事情がある場合に限るべきとされています[10]。

成長の終わりは人によって違います。当院の成人矯正も、あごの成長が落ち着く16歳以降を目安にしています。インプラントは、それよりさらに成長が止まったことを確かめてから計画します。

ブリッジは、両どなりの歯を削って橋をかける方法です。健康な歯を削ることになるので、若い方ほど慎重に考えます。

インプラントの診療についてはこちらのページ、骨が足りないときの骨造成はこちらの記事をご覧ください。

成長期の「つなぎ」はどうする?

乳歯が早く抜けてしまい、成長が終わるまで間がある。そんなときは、取り外し式の入れ歯や、すき間を保つ装置でつなぎます。

見た目や違和感は気になりますが、成長に合わせて作り直しやすいのが利点です。歯科医院によっては、となりの歯の裏側に接着するタイプのブリッジを、つなぎに使うこともあります。

足りない本数が多いときは、保険で矯正できることも

「矯正は全部自費でしょう?」と思われがちですが、例外があります。

生まれつき永久歯が親知らずを除いて6本以上足りない場合は、国が定めた疾患(先天性部分無歯症)として、矯正治療に健康保険が使えます[11]。

さらに2026年度の改定からは、18歳未満で、隣り合った3本以上が続けて足りない場合も対象に加わりました[12]。

ただし、どの歯科医院でも受けられるわけではありません。国の基準を満たして届け出た医療機関に限られます[11]。

当院で欠如が見つかり、保険の対象になりそうな場合は、対応できる医療機関をご案内します。費用のことは、診察のときにご相談ください。

大人になってから「永久歯が足りない」と気づいたら

「子どものころは何も言われなかったのに、大人になって初めて知った」。そんな方も少なくありません。

乳歯がまだ残っているなら、あわてて抜く必要はありません。むし歯や歯周病から守りながら、できるだけ長く使いましょう。根が短くなっていないかは、定期的にエックス線で確かめます。

すでに抜けてすき間がある、またはグラグラして限界なら、インプラント・ブリッジ・入れ歯・矯正の中から、お口の状態に合う方法を選びます。

大人はあごの成長が終わっているので、インプラントも選択肢に入ります。当院ではCTで骨の幅や厚みを立体的に確かめてから計画します。

矯正は大人からでも始められます。マウスピース型の矯正(インビザライン)で、すき間を閉じたり、人工の歯を入れるスペースを整えたりすることもできます。

よくある質問

よくある質問

Q. 先天性欠如歯は、親からの遺伝ですか?
A. 遺伝子の違いが関係すると分かっていますが、家族に誰もいなくても起こります。妊娠中の生活が原因ではないので、ご自分を責めないでください。

Q. 乳歯が残っている場所があっても、矯正はできますか?
A. できます。乳歯を残したまま、ほかの歯並びを整える計画も立てられます。乳歯を抜いてすき間を閉じるか、残すかは、年齢と歯並びで決めます。

Q. 乳歯が抜けたら、すぐインプラントにできますか?
A. あごの成長が終わるまでは待ちます。それまでは入れ歯などでつなぎ、成長が止まったことを確かめてから、改めてご相談します。

Q. 欠如が1本だけなら、何もしなくていいですか?
A. 乳歯が良い状態なら、すぐに治療は要りません。ただし、むし歯予防と、定期的なエックス線での確認は続けましょう。

Q. 保険の矯正は、どこで受けられますか?
A. 国の基準を満たして届け出た医療機関に限られます。当院で欠如が見つかった場合は、対応できる医療機関をご案内します。

まとめ

  • 先天性欠如歯は、日本の子どものおよそ10人に1人。足りないのは1〜2本だけの方がほとんどです
  • 小学校に上がるころ、パノラマのエックス線で確かめられます
  • 永久歯がない場所の乳歯は、むし歯から守り、定期的にエックス線で根を確かめながら、長く使います
  • 乳歯が抜けたら、成長期は矯正やつなぎの装置、成長が終わってからインプラントやブリッジが基本です
  • 6本以上、または18歳未満で続けて3本以上足りないときは、保険の矯正の対象になります

「足りない」と聞くと不安になりますが、早く分かれば、選べる道が広がります。ご心配なことがあれば、お気軽にご相談ください。

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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭

参考文献

  1. 山﨑要一 ほか. 日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査. 小児歯科学雑誌. 2010;48(1):29-39. J-STAGE
  2. Polder BJ ほか. A meta-analysis of the prevalence of dental agenesis of permanent teeth. Community Dent Oral Epidemiol. 2004;32(3):217-226. PubMed
  3. Vieira AR ほか. MSX1, PAX9, and TGFA contribute to tooth agenesis in humans. J Dent Res. 2004;83(9):723-727. PubMed
  4. Proc P ほか. Prevalence of tooth agenesis in young cancer patients: A systematic review and meta-analysis. Dent Med Probl. 2025;62(4):739-750. PubMed
  5. Hua F ほか. Prevalence of peg-shaped maxillary permanent lateral incisors: A meta-analysis. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2013;144(1):97-109. PubMed
  6. Dos Santos CCO ほか. What is the survival rate of deciduous molars in cases with agenesis of premolar successors? A systematic review. Angle Orthod. 2022;92(1):110-117. PubMed
  7. Calheiros-Lobo MJ ほか. Infraocclusion level and root resorption of the primary molar in second premolar agenesis: A retrospective cross-sectional study in the Portuguese population. Dent Med Probl. 2022;59(2):195-207. PubMed
  8. Dipalma G ほか. The Diagnosis and Management of Infraoccluded Deciduous Molars: A Systematic Review. Children (Basel). 2024;11(11):1375. PubMed
  9. Silveira GS ほか. Prosthetic replacement vs space closure for maxillary lateral incisor agenesis: A systematic review. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2016;150(2):228-237. PubMed
  10. Bohner L ほか. Dental implants in growing patients: a systematic review. Br J Oral Maxillofac Surg. 2019;57(5):397-406. PubMed
  11. 公益社団法人日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」 ページを開く
  12. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」(歯科矯正に係る患者の対象等の見直し) 資料を開く

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