2026年10月26日
【キスでうつる?】歯周病は家族やパートナーに移るのか、本当のところと予防法【歯医者が解説】

こんにちは、篠塚歯科医院です。
「パートナーが歯周病と言われた。キスで自分にもうつるの?」
「私の歯周病が、子どもに移ったらどうしよう」
そんな心配から、このページを開いた方もいるかもしれません。
この記事では、歯周病は家族やパートナーに移るのか、研究で分かっている本当のところをお話しします。家族でできる予防のコツもご紹介します。
この記事のポイント
- 歯周病菌は、だ液を通じて夫婦や親子のあいだで移ることがあります。ただ、菌が移ることと、歯周病になることは別の話です。
- 歯周病になるかを分けるのは、歯垢の量・たばこ・糖尿病・体質です。キスや食器を避けるより、お口をきれいに保つほうが大切です。
- 家族を守る近道は、ご自身の歯周病を治してメンテナンスを続けることと、家族そろっての定期検診です。
歯周病は「うつる」の?菌は移っても、病気がそのまま移るわけではありません
「キスしたら、歯周病がうつるのかな」と心配になりますよね。
答えは「歯周病菌は移ることがある。でも、移ったから歯周病になるとは限らない」です。
歯周病は、菌がいるだけでは起こりません
歯周病は、歯と歯ぐきのすき間にたまった歯垢(しこう。細菌のかたまり)が原因で、歯ぐきに炎症が続く病気です。
日本歯周病学会も、母親から子どもに細菌が移ることはあると認めています。そのうえで「歯磨きが行き届いていればお子様にうつることはありません」と説明しています[1]。
雑草の種と、手入れされた庭
歯周病菌は、風に乗って飛んでくる雑草の種のようなものです。
種が飛んできても、こまめに手入れされた庭では、なかなか根づきません。歯垢がたまって歯ぐきの腫れが続くと、菌がすみつき、増えやすくなります。
国の調査では、15歳以上のおよそ半数に、歯周病のサインが見つかっています[2]。サインとは、深さ4mm以上の歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間)です。
家族のだれかが歯周病でも、めずらしいことではありません。だからこそ、移るかどうかより「菌をすみつかせない」お口づくりが大切です。
夫婦・パートナーのあいだで移る?キスや食器は?
「長くいっしょに暮らすと、お口の菌も似てくるの?」と思う方もいるでしょう。
夫婦のあいだで、同じ型の歯周病菌が見つかることは、研究で確かめられています。
夫婦で「同じ菌」が見つかった
オランダで、重い歯周病の患者さんと、その配偶者を調べた研究があります。
菌の遺伝子の型まで調べた8組のうち、6組では夫婦の菌の型が同じでした[3]。いっぽう、他人どうしの菌の型は、一人ひとり違っていました[3]。
毎日の暮らしの中で、夫婦のあいだを菌が行き来したと考えられています。
いつも移るわけではありません
別の研究では、菌を持つ人の配偶者に菌が移ったと考えられたのは、夫婦の2〜4割ほどでした[4]。
アメリカで、親・子・孫など何世代かの家族を調べた研究もあります。家族に菌を持つ人がいると、ほかの家族も持っていることが多いと分かりました[5]。
どうやって移る?分かっていること・いないこと
歯周病菌は、歯ぐきのすき間だけでなく、だ液や舌、頬の内側、のどの奥からも見つかります[3]。だ液がふれあう暮らしの中で、少しずつ行き来すると考えられています。
ただ、キス・食器の共有・会話のしぶきのどれで、どのくらい移るのかは、まだはっきり分かっていません。
家族は、食事や生活のリズムも似ています。菌が似るのは、移ったからだけでなく、暮らし方が似ているせいもあるかもしれません。
キスや食器を避ける必要はありません
キスをやめたり、食器を分けたりする必要はありません。だ液は、会話やふれあいでも行き来するので、避けきれないからです。
それよりも、お互いのお口の中をきれいに保つほうが、ずっと役に立ちます。気になるなら、ふたりそろって歯科検診を受けてみましょう。
親から子どもへは?歯周病菌がすみつき始める時期
「私の歯周病菌が、子どもにうつったらどうしよう」と心配な保護者の方も多いと思います。
お口の菌は、親から子へ自然に伝わります。歯周病菌が増えてくるのは、小学生のころからです。
食器を分ける前から、菌は伝わっている
日本口腔衛生学会は、生後4か月の赤ちゃんで、すでにお母さんのお口の細菌が伝わっていたことを紹介しています[6]。
離乳食で食器を使い始めるより前のことです。抱っこや語りかけなど、ふだんのふれあいで伝わっていると考えられています[6]。
そのため同学会は、食器の共有を避けることを気にしすぎる必要はない、としています[6]。
歯周病菌が増えてくるのは6歳ごろから
日本の幼児から小学生くらいの子どもと、その母親を調べた研究があります。
P.g.菌(歯周病の代表的な菌)などが見つかる割合は、6歳を過ぎてから増えていました[7]。子どものお口の菌の顔ぶれは、母親とよく似ていました[7]。
当院のホームページでも、歯周病菌は「小学生の頃には」ご家族から伝わって「定着し始めます」とお伝えしています。
歯周病の患者さんの家族を調べた研究もあります。親子14組のうち11組で、同じか、よく似た型のP.g.菌が見つかりました[8]。
ただし、親から子へP.g.菌が移ったことを確かめられなかった研究もあり、結果には幅があります[4]。
子どもの歯垢が少ないと、菌はすみつきにくい
日本の子どもと親を調べた別の研究もあります。歯垢が多い子どもほど、歯周病に関わる菌が見つかりやすい傾向がありました[9]。
親が持っている菌は、子どもからも見つかりやすいことも分かっています[9]。
だからこそ、子どもを守る近道は、保護者ご自身のお口の環境を整えることです。ご自身の治療と歯磨き、定期検診を大切にしましょう。
これから赤ちゃんを迎える方は、妊娠中の歯医者さんについての記事も参考にしてください。
菌が移っても歯周病になるとは限らない 分かれ道は4つ
「家族からもらった菌なら、もうどうしようもない?」そんなことはありません。
歯周病になるかどうかは、菌そのものより、お口と体の状態で大きく変わります。

歯垢の量(いちばん大きな分かれ道)
日本歯周病学会は、歯周病の一番の原因は、歯につく歯垢(プラーク)だとしています[1]。
歯周病は必ずかかる病気ではなく、多くは日ごろの歯磨きと定期検診で予防できる、とも説明しています[1]。
歯周病の原因については、歯周病の原因と対策の記事でもくわしく紹介しています。
たばこ
たばこを吸う人は、吸わない人より歯周病にかかりやすく、悪化しやすいことが分かっています[10]。
たばこは歯ぐきの血の巡りを悪くします。そのため出血や腫れが出にくく、気づくのが遅れがちです[10]。
禁煙すると歯ぐきの状態が良くなり、治療の効果も上がります[10]。
糖尿病
糖尿病があると、体を守る力(免疫)が落ちて、歯ぐきの炎症が進みやすくなります[11]。
歯周病と糖尿病は、お互いに影響をおよぼし合う関係だといわれています[11]。くわしくは糖尿病と歯周病の関係の記事をご覧ください。
体質
歯周病という病気そのものが、親から子へ遺伝するわけではありません[1]。
ただ、なりやすさには生まれもった体質も関わります。双子を調べた研究では、大人の歯周病のなりやすさの差の、およそ半分が体質によると見積もられました[12]。
まれに、10代後半から症状が出る、早く進むタイプの歯周病もあります[1]。若いうちに歯周病で歯を失ったご家族がいる方は、早めに歯科医院で相談しましょう。
パートナーが治療しないと、自分の治療はむだになる?
「せっかく治療しても、パートナーからまた菌をもらったら意味がないのでは」と思う方もいます。
再発を左右するのは、パートナーの菌より、ご自身のお口の状態とメンテナンスだと考えられています。
配偶者の菌と、治療後の菌は関係していなかった
重い歯周病の患者さん10人とその配偶者を、治療後6か月まで追いかけた研究があります[13]。
治療後に患者さんの歯ぐきで菌がまた見つかるかは、配偶者のだ液の菌とは関係していませんでした[13]。
ただ、とても小さな研究なので、これだけで言い切ることはできません。
カギはメンテナンス
治療後のメンテナンスについて、5年間追いかけた研究があります。決まった間隔で通った人は、通院がとぎれがちな人より再発が少なかったと報告されています[14]。
たくさんの研究をまとめた報告でも、定期的なメンテナンスは、歯を失うのを減らすのに大切だとされています[15]。
治療のあとのメンテナンスを続けることが、再発を防ぐ近道です。パートナーの方にも、ご自身の歯ぐきのために検診をすすめてみてください。
家族でできる歯周病の予防 大切な3つのこと
「家族のために、今日から何をすればいい?」と思った方へ。
いちばんは、ご自身の歯周病を治すこと。そして、家族そろって定期検診を受けることです。

①ご自身の歯周病を治し、メンテナンスを続ける
当院では、歯周ポケットの深さをはかる検査から始めます。染め出しで磨き残しを確かめ、歯磨きの練習もします。
そのうえで歯石を取り、歯ぐきの奥の歯石は、ルートプレーニングという処置で少しずつ取りのぞきます。治療が終わったら、メンテナンスで良い状態を保ちます。
②歯と歯の間まで、ていねいに磨く
歯ブラシだけでは、歯と歯の間に汚れが残りがちです。歯間ブラシやフロスも使い、自分に合った道具は歯科医院で教わるのがおすすめです[1]。
歯磨きで血が出るときは、歯ぐきの炎症のサインかもしれません。歯磨きで血が出る原因と対処法もあわせてご覧ください。
③家族そろって定期検診を受ける
国の調査では、5〜14歳の子どもの9割以上が、この1年に歯科検診を受けていました[2]。いっぽう、20代前半では半分に届いていません[2]。
子どもは学校の健診がありますが、大人は自分で予約しないと機会がありません。お子さんの検診に合わせて、保護者の方もいっしょに受けると続けやすくなります。
検診の間隔の目安は、歯科検診を受ける頻度についての記事で紹介しています。
たばこや血糖も、家族で気にかける
禁煙や、糖尿病の予防・治療も、家族で取り組むと続けやすくなります。歯ぐきを守ることにもつながります。
こんなサインがあれば、早めに受診を
- 歯磨きで血が出る…歯ぐきの炎症のサインかもしれません
- 歯ぐきが赤く腫れている…健康な歯ぐきは、うすいピンク色で引きしまっています
- 口臭が気になる…歯周病が原因のこともあります(歯周病と口臭の記事)
- 歯が長く見える・グラグラする…歯ぐきや骨がやせてきたサインかもしれません
歯周病は、痛みが出ないまま進むことが多い病気です。気になることがあれば、早めにご相談ください。
よくある質問

Q. パートナーが歯周病です。キスはやめたほうがいいですか?
A. やめる必要はありません。菌が移っても、歯垢が少なく歯ぐきが健康なら、歯周病になるとは限りません。気になるなら、ふたりで検診を受けましょう。
Q. 家族で食器やお箸を分けたほうがいいですか?
A. 分ける必要はありません。だ液は、会話やふれあいでも行き来するからです。それより、大人がご自身のお口の環境を整えるほうが大切です。
Q. 歯周病の治療中です。家族のためにできることは?
A. まずはご自身の治療を最後まで続け、メンテナンスに通うことです。歯ぐきの炎症がおさまると、菌がすみつきやすい深いすき間も浅くなることが多いです。ご家族にも検診をすすめてみてください。
Q. 親が歯周病だと、子どもも歯周病になりやすいですか?
A. 菌が伝わりやすいことや、生活習慣・体質が似ていることから、なりやすい面はあります。ただ、歯周病の多くは毎日の歯磨きと定期検診で予防できます。お子さんといっしょに検診を受けましょう。
まとめ
歯周病は家族やパートナーに移るのか、ポイントをまとめます。
- 歯周病菌は、だ液を通じて夫婦や親子のあいだで移ることがあります。
- でも、菌が移ることと、歯周病になることは別の話です。分かれ道は、歯垢の量・たばこ・糖尿病・体質です。
- キスをやめたり、食器を分けたりする必要はありません。
- 家族を守る近道は、ご自身の歯周病の治療とメンテナンス、そして家族そろっての定期検診です。
「うつるかも」と不安になったときこそ、家族みんなでお口を見直すよいきっかけです。まずは一度、検診で今の状態を確かめてみませんか。
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墨田区の篠塚歯科医院では、予防歯科に注力し、患者さんのお口の健康を守るため予約は一人一時間を確保して、丁寧な診療を心掛けています。お口の中の気になる点やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。
篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭
参考文献
- 日本歯周病学会「歯周病Q&A 歯周病の原因」 ページを開く
- 厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査結果の概要」 資料を開く
- van Steenbergen TJ ほか. Transmission of Porphyromonas gingivalis between spouses. J Clin Periodontol. 1993;20(5):340-345. PubMed
- Asikainen S ほか. Likelihood of transmitting Actinobacillus actinomycetemcomitans and Porphyromonas gingivalis in families with periodontitis. Oral Microbiol Immunol. 1996;11(6):387-394. PubMed
- Tuite-McDonnell M ほか. Concordance of Porphyromonas gingivalis colonization in families. J Clin Microbiol. 1997;35(2):455-461. PubMed
- 日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」(令和5年8月31日) 資料を開く
- Kobayashi N ほか. Colonization pattern of periodontal bacteria in Japanese children and their mothers. J Periodontal Res. 2008;43(2):156-161. PubMed
- Park OJ ほか. Use of insertion sequence element IS1126 in a genotyping and transmission study of Porphyromonas gingivalis. J Clin Microbiol. 2004;42(2):535-541. PubMed
- Umeda M ほか. The distribution of periodontopathic bacteria among Japanese children and their parents. J Periodontal Res. 2004;39(6):398-404. PubMed
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙と歯周病の関係」 ページを開く
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」 ページを開く
- Michalowicz BS ほか. Evidence of a substantial genetic basis for risk of adult periodontitis. J Periodontol. 2000;71(11):1699-1707. PubMed
- von Troil-Lindén B ほか. Periodontitis patient and the spouse: periodontal bacteria before and after treatment. J Clin Periodontol. 1997;24(12):893-899. PubMed
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- Leow NM ほか. Recurrence and progression of periodontitis and methods of management in long-term care: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2022;49 Suppl 24:291-313. PubMed


