「しっかり磨くと歯茎が下がる!?」歯ブラシ圧に要注意

こんにちは、篠塚歯科医院です。
歯みがきを真面目にやっている方ほど、注意しないといけないことがあります。それは歯ブラシを当てる「圧(力)」です。「歯が長くなってきた気がする」「冷たいものがしみるようになった」——そんな変化の背景に、毎日のブラッシングの力が関わっていることは少なくありません。今回は、浅草・本所吾妻橋エリアで「なるべく削らない予防歯科」に力を入れている当院が、歯ぐきが下がる原因と適切な歯ブラシ圧を、研究データを交えて解説します。
目次
なぜ「がんばって磨く」と歯ぐきが下がるのか
歯みがきの難しい点は、「歯」という硬い組織と「歯ぐき」という軟らかい組織を、同時に磨かなければならないところにあります。
「歯みがき」という名前のとおり、多くの方は硬い組織である歯にフォーカスして力を込めています。しかし、その力は軟らかい歯ぐきにとっては過剰な負担になります。強い力が毎日くり返し加わると、歯ぐきは少しずつ退いていき(歯肉退縮)、歯の根元がむき出しになっていきます。
やっかいなのは、一度下がってしまった歯ぐきは、自然には元に戻らないという点です。真面目に磨いているのに見た目が悪くなり、知覚過敏になり、さらには歯の根元が虫歯になりやすくなる——という損をしてしまいます。

データで見る「歯ぐきが下がる磨き方」
ブラッシングと歯ぐきの関係は、国際的にも詳しく検証されています。歯周病学の専門誌に掲載された研究のまとめによると、歯ぐきが下がることと関連の深いブラッシングの要素として、みがく回数、横方向にゴシゴシ動かす磨き方、毛の硬さ、みがく時間の長さ、そして力の強さが挙げられています(Heasmanほか「Evidence for the occurrence of gingival recession and non-carious cervical lesions as a consequence of traumatic toothbrushing」Journal of Clinical Periodontology 第42巻 Suppl.16 S237-S255, 2015年)。
同じ研究の中では、159名分のデータをまとめた分析で手用歯ブラシを使っていた人のほうが、電動歯ブラシの人より12か月後の歯ぐきの下がりが大きかったとも報告されています。電動歯ブラシが優れているというより、手で磨くと力が入りすぎやすいと考えるのが自然でしょう。
また、歯みがき剤の「研磨性」も無関係ではありません。歯ブラシの力と歯みがき剤の研磨剤の組み合わせが歯の削れ(摩耗)に大きく関わること、研磨性の低い歯みがき剤のほうが歯にやさしいことが、近年の総説でも指摘されています(Kumarほか「The Impact of Toothbrushing on Oral Health, Gingival Recession, and Tooth Wear—A Narrative Review」Healthcare 第13巻10号 1138, 2025年)。強い力に「白くなる」とうたう研磨剤入りの歯みがき剤が加わると、ダメージは足し算ではなく掛け算になります。
適切な歯ブラシ圧は、どれくらい?
では、適切な力はどれくらいなのでしょうか。よく言われる目安は100〜200g程度です。とはいえ、これを聞いてピンとくる方は少ないですよね。
いちばん分かりやすいのは、指で爪を押したときに、爪の色が少し白くなるくらいという感覚です。実際に試していただくと、「思ったよりずっと軽くていいんだ!」と驚かれる方がほとんどです。前述の総説でも、力を2〜3N(およそ200〜300g)程度に抑えることが歯や歯ぐきにやさしいとされており、ゴシゴシ磨く必要はまったくないことが分かります。
もうひとつ、力を抜くのに効果的なのが歯ブラシの持ち方です。手のひら全体で握りしめる「パームグリップ」ではなく、鉛筆を持つように軽くつまむ「ペングリップ」に変えるだけで、自然と力が入りにくくなります。毛先が広がるほど押し当てているなら、確実に力の入れすぎです。
力加減を体で覚える方法
それでも実感がわかない方には、力の入れすぎを教えてくれる道具を使う方法があります。たとえばLIONのクリニカNEXT STAGE ハブラシは、力の入れすぎを防ぐ「お知らせアラーム」と「しなるハンドル」という2つの構造で、適切な圧を体に覚えさせてくれるアイデア商品です。

院長も使ったことがありますが、最初は気を抜くとすぐカチカチ鳴っていました(笑)。極薄ヘッドや超コンパクトタイプも揃っているので、使いやすさも十分です。同じように、圧センサーが付いた電動歯ブラシも、力加減を覚える練習になります。
次のポイントもあわせて意識してみてください。
- 毛先の硬さは「ふつう」か「やわらかめ」……「かため」は汚れが落ちる感覚がありますが、歯ぐきには負担です。
- 横に大きくゴシゴシ動かさない……1〜2本ずつ、小刻みに動かすのが基本です。
- 毛先が広がったら交換する……開いたブラシは汚れが落ちず、力だけが強くなります。
- 長時間みがき続けない……時間をかけるほど良いわけではありません。
下がった歯ぐきは、放っておくとどうなる?
歯ぐきが下がると、本来は歯ぐきに隠れているはずの「歯の根」が露出します。根の表面はエナメル質に覆われておらず、歯の頭の部分よりもずっと酸に弱いため、虫歯になりやすく、しみやすいという弱点があります。
知覚過敏でお悩みの方の中には、過剰なブラシ圧が原因になっているケースが少なくありません。この場合、知覚過敏用の歯みがき剤を使っても、原因である「力の入れすぎ」が変わらなければ根本的な解決にはなりません。まずは磨き方を見直すことが先決です。
下がってしまった歯ぐきを自然に戻すことはできませんが、それ以上の進行を止めることは十分に可能です。露出した根の部分には高濃度のフッ素が有効ですし、磨き方の修正と定期的なチェックを組み合わせれば、10年後の状態は大きく変わります。
よくある質問

Q. 軽い力で本当に汚れは落ちますか?
A. 落ちます。歯垢はぬめりのような柔らかい汚れなので、毛先が届いてさえいれば軽い力で十分に落とせます。強い力は、汚れを落とす力ではなく、毛先を寝かせて届かなくする方向に働いてしまいます。
Q. 電動歯ブラシに替えれば安心ですか?
A. 力が入りすぎにくいという点では有利です。ただし押し当てて使えば同じことなので、圧センサー付きのものを選び、「歯に添えるだけ」で使ってください。
Q. 歯ぐきが下がるのは加齢のせいではないのですか?
A. 年齢も要因のひとつですが、それだけではありません。ブラッシングの力や方法、歯周病、歯ぎしり、歯並びなど複数の原因が重なって起こります。原因によって対策が違うため、一度確認することをおすすめします。
Q. 力を弱くしたら、みがき残しが増えませんか?
A. 大切なのは力ではなく「毛先が当たっているか」です。当院では染め出し液を使い、実際にどこが磨けていないかを目で見て確認しながら、その方に合った当て方をお伝えしています。
Q. すでにしみています。まず何をすればよいですか?
A. 自己判断で強く磨かないことです。しみる原因が知覚過敏なのか虫歯なのかで対応が変わりますので、一度ご相談ください。原因に応じて、フッ素の塗布やしみ止めの処置、磨き方の調整をご提案します。
まとめ
歯みがきは「力」ではなく「毛先の当て方」で決まります。強い力で磨き続けると、歯ぐきは少しずつ下がり、知覚過敏や根元の虫歯を招きます。研究でも、横磨き・硬い毛・長時間・強い力といった要素が歯ぐきの下がりと関連することが示されています。
目安は100〜200g、爪を押して少し白くなる程度。持ち方を鉛筆持ちに変える、毛先が広がったら交換する、研磨剤の強い歯みがき剤を避ける——今日からできることばかりです。ここで紹介したのはあくまで一般的な目安ですので、ご自身に合った力加減と磨き方は、かかりつけの歯科医院で確認するのが確実です。
「最近しみるようになった」「歯が長くなった気がする」という方は、定期検診のときにぜひご相談ください。当院では染め出しを使ったブラッシング指導で、磨き残し20%以下を目標に、一人ひとりに合った磨き方を身につけていただいています。
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篠塚歯科医院 歯学博士 篠塚嘉昭




